ペットビジネスとは、ペット向けの商品やサービスを提供する事業のことです。市場規模が大きく、需要が高まっているサービスが増えていることから、高い収益を見込める事業も数多く存在しています。この記事では、ペットビジネスの具体的なアイデアやビジネスの始め方、儲けるためのコツを紹介します。
ペットビジネスアイデア9つ
1. ペットの仲介販売
ペットの仲介販売とは、自分では販売するペットを抱えず、ブリーダーと消費者の仲介をする事業形態です。少ない初期投資で開始できるだけでなく、運営コストも低く、稼働時間を自由に設定できるため、他の職業と兼業しやすい特徴があります。
ただし、ブリーダーから直接消費者へ販売することが多いので、専業で参入するのは難しいかもしれません。ペットの仲介販売をする場合は、ブリーダーとの協力を視野に入れましょう。たとえば、販売や顧客対応が苦手なブリーダーと手を組めば、互いの弱点を補い合いながら利益を生み出せるでしょう。
2. ペットシッターサービス
近年、共働き世帯の増加や核家族の普及により、ペットシッターサービスの需要が高まっています。ペットシッターは、飼い主の留守中にペットへの餌やりやトイレの世話、散歩などを行います。市場に参入している大手企業が少なく、小規模事業者でも参入しやすいでしょう。
ペットシッターサービスは、低コストで事業を開始できるので、始めやすい事業といえます。ただし、最初のうちは利用者にサービスを知ってもらうことに注力する必要があります。利便性を高めるためにオンラインで予約受付や支払いできるといった工夫を取り入れて、徐々にサービス利用者を増やしましょう。
3. 散歩代行サービス
散歩代行サービスは、飼い主に代わってペットの散歩を行うビジネスです。高齢の飼い主や仕事で忙しい飼い主の需要が高まっています。1回あたりのサービス提供時間は30~60分程度が目安であり、副業としてペットビジネスを始めたい人に向いています。
散歩代行サービスで重要なのは、顧客と信頼関係を築くことです。第一種動物取扱業(業種:保管)に登録するなど、必要な手続きをきちんと済ませ、顧客が安心してサービスを利用できるように準備しましょう。
4. ペットフード販売
ペットフード販売では、飼い主の需要を満たす製品を提供します。手作りフードやサブスクリプションサービスなど、さまざまな形態で事業を行えるのが特徴です。
たとえば、高齢のペットでも食べやすい食品の開発・販売が挙げられます。ペットフードを自作する場合は、製造業者の届出や帳簿の記載が必要になるので、あらかじめ農林水産省のホームページで提出書類や要件などを確認しましょう。
5. ペット用品の販売
ペット用品ビジネスは競争が激しいものの、特定のニーズに特化することで小規模事業者にも成功できる可能性は十分にあります。たとえば、個性的なデザインや他のペット用品にはない機能を加えたり、特定のペット種やライフスタイルに合わせたペット用品を開発したりなど、差別化を図る戦略は効果的です。同様の商品が数多く販売されている場合は、消費者が自分に合ったものを選びやすいように、どのような悩みを解消できるのかなどの詳しい説明を記載するとよいでしょう。
ペット用品の具体的なアイデアとして、ペットカートとペットカメラ、ペットウェアを紹介します。
ペットカート
ペットカートは、ペット専用の移動手段として考案されたペット用品です。自力では歩けない高齢のペットの移動のほか、人込みでのペットの移動にも便利です。最近では機能性に加えて、デザイン性も追求されており、おしゃれなアクセサリーとしても受け入れられています。
ペットカメラ
ペットカメラは、飼い主が外出先でペットの様子をリアルタイムで確認できるデバイスです。ペットが一人ぼっちで不安がっていないかなど、飼い主の不安を解消するために開発されました。おやつを与える機能や通話機能を搭載したペットカメラもあるので、家を長時間空けることが多い飼い主でも、安心してペットを飼うことができます。
ペットウェア
ペットウェアとは、ペット用の衣類のことです。ペットにおしゃれを楽しませたいと考える飼い主が増えていることから、市場の成長が見込まれています。特定の犬種をターゲットにしたり、アウトドア活動用のペットウェアに特化したりなど、差別化を図りやすいのが特徴です。
6. ペット向けの整体
ペット向けの整体は、ペットの筋肉や骨格の不調を専門的な手技でケアするサービスです。ペットも人間と同じように、日常生活を通じて体に負担がかかっているので、放っておくと脱臼などのけがを引き起こす可能性があります。ペット向けの整体は、このような問題に対処し、ペットが長く健康に過ごせる手助けを行います。ペットの体に負担を与えないように、薬や手術をしない治療法を求める飼い主のニーズに応えられる点もペット整体の特徴です。動物病院が満たせないニーズが何かを分析して、差別化を図れる事業を考えることが成功につながります。
7. ペットサロン
ペットサロンは、ペットが健康に過ごせるように、トリミングや爪切り、歯磨きなどの手入れを行うビジネスです。ペットを飼う人が増えていることに加えて、ペットが長生きする傾向にあることから、今後も安定した需要が見込まれます。
ペットショップや動物病院に併設されているペットサロンもあれば、個人事業主が経営する小規模なペットサロンもあります。美容技術と顧客サービスの質が成功のカギを握るため、熟練を要する職種ですが、小規模事業者でも成功を収めることが可能です。そのためには、他のペットサロンがあまり行っていないサービスの提供を検討しましょう。たとえば、高齢のペットをターゲットに、低負担な美容サービスや出張サービスなどを展開するのもよいでしょう。
8. デイケアサービス
デイケアサービスは、専用施設で複数のペットを預かるペットビジネスです。長時間の勤務に追われる中、ペットの世話が十分にできないと考える飼い主が増えています。「自分が面倒を見られない時間もペットには健康に過ごしてほしい」と考える飼い主のニーズに応えるため、デイケアサービスとあわせて、飼い主が旅行中にペットを預かるサービスを提供する施設も多いです。
9. ペット向けの不動産ビジネス
ペット禁止の物件が多い昨今、ペットを飼える物件に特化した不動産経営や不動産サイトを運営するビジネスの需要が高まっています。実際、賃貸でもペットを飼いたいと考える人が増えており、ペット可の物件にするだけで満室になるケースも珍しくありません。
さらに、物件によっては、犬の足洗い場や猫専用設備など、ペットに優しい工夫が施されている住宅もあります。住宅を貸し出す場合は、このような工夫を取り入れられるかを検討してみるとよいでしょう。留意すべきは、ペット特有の課題への対処が必要となることです。鳴き声や衛生面の管理、敷金の償却や定期借家契約などの対策が求められます。
ペット可の物件に特化した不動産サイトを運営する場合は、飼育可能数や特有の条件などの情報をわかりやすく表示し、利用者が希望の物件を見つけやすいサイトを構築する必要があります。
ペットビジネスの起業方法
ペットビジネスの起業方法には、自力で開業する方法と、フランチャイズに加盟する方法があります。自力で開業する場合は自由度が高い反面、集客などをすべて自分で行わなければならない難しさがあります。一方、フランチャイズに加盟する場合は、本部からさまざまな支援を受けられたり、開業当時から一定の集客を見込めたりしますが、完全に自由な経営ができない場合がほとんどです。
自力で開業する
自力で開業する場合、上記の手順で準備を進めていきます。
1. ビジネスモデルを決定する
ペットビジネスを起業する際、まずは自分のビジネスモデルを決定しましょう。事業所周辺の環境や自分の趣味や興味、能力などを考慮して、最も実現可能で収益性の高いビジネスを選ぶことが重要です。たとえば、事業所周辺にペットの飼い主が多い場合は、ペットのデイケアや散歩代行サービス、フード配送が適しているでしょう。事業所周辺にペットの飼い主が少ない場合は、ペット用品をメーカーや通販を通じて個人で仕入れ、オンラインで販売するのがよいでしょう。
2. 事業者登録や資格取得を行う
ビジネスモデルが決まったら、事業者登録やペットビジネスに必要な資格の取得の手続きを行いましょう。たとえば、ペットショップなど生体販売を実施する事業やペットシッターなどのペットを預かる事業では、第一種動物取扱業者の販売の登録が求められます。法的要件を遵守しない場合は、営業停止や罰金などの罰則を受ける可能性があります。事業を始める前に必要な法的手続きや資格を調べ、適切な対応を取りましょう。
3. 市場調査を実施する
ビジネスモデルが決まり、必要な手続きが完了したあとは、市場調査を行いましょう。競合他社が提供している商品を分析して、消費者が何を求めているのか、どのような商品が売れやすいのかを徹底的に分析します。分析を通じて市場のニーズを的確に捉え、それに応えられる商品を提供することが事業の成功につながります。
4. ブランドを構築する
ブランド構築は、ペットビジネスの成功には欠かせません。ブランドを構築する際は、以下の7つに力を入れて取り組みましょう。
これらはいずれも、消費者がブランドに対して抱くイメージに大きな影響を与えます。商品の機能性は他社との違いを際立たせやすい要素のため、特に力を入れましょう。たとえば、犬用の噛むおもちゃを開発する場合は、噛むだけで歯を磨ける素材を使用するなど、通常の製品より役立つ機能をつける戦略が効果的です。
5. 商品を準備する
ビジネスで取り扱う商品の準備を行いましょう。サービス業の場合、たとえば、デイケアサービスやペットサロンなら、適切な施設や必要な機材の整備が必要です。ペット商品を販売する場合は、製造または調達の方法を決定します。オンラインで販売するなら、商品の梱包や発送なども考える必要があります。物流業務が手間に感じる場合は、ドロップシッピングサービスの活用を検討するとよいでしょう。ドロップシッピングとは、第三者が物流業務を代行してくれるサービスのことです。物流業務に割いていた時間を別の業務に充てられるので、販売事業と散歩代行サービスを兼業するといった場合は特に役立つでしょう。
6. ネットショップや店舗を構える
商品の準備が整ったら、販売場所を決めましょう。実店舗が必要な事業もありますが、可能ならネットショップから事業を始めることをおすすめします。ネットショップの立ち上げと聞くと、なんとなく難しく思えるかもしれません。しかしShopifyを活用すれば、専門知識がなくても簡単に魅力的なデザインのネットショップを開設できます。
7.ペットマーケティングを行う
ペットビジネスの収益を伸ばすために重要なのは「ペットマーケティング」です。ペットマーケティングとは、飼い主に商品やサービスを知ってもらうための取り組みのことです。
散歩代行サービスやデイケアサービスなど、近所の人々をターゲットに定めた事業を行う場合は、地域のFacebookグループやオンラインコミュニティに参加してサービスの認知度を高めましょう。その際、専門的な知識があることや信頼できるサービスであることを証明することが重要です。
集客力を高めるには、SNSマーケティングも効果的です。Instagram(インスタグラム)などのSNSにトリミングや散歩の様子、可愛らしいペット画像などを投稿することで、より多くの人にサービスを認知してもらいやすくなります。
ペット関連のイベントに積極的に参加することも、有効なマーケティング手法です。ポップアップストアの開催やペットの展示会など、消費者と直接話せる機会を設けることで、良好な関係を築きやすくなります。
イベントを通じて消費者のメールアドレスを集め、メールマーケティングを実施するのも良いでしょう。メールマーケティングを通じて割引クーポンを提供したり、カゴ落ちメールを送信したり、購入を促せるメールを低コストで送れる利点があります。
フランチャイズに加盟する
フランチャイズとは、すでに一定の地位を確立しているブランドからサポートを受けながら事業を行う方法です。ペットシッターやペットサロンのような専門的な知識や器具が必要なサービスを提供する際、自力で準備する場合は時間も費用もかかります。しかし、フランチャイズに加盟すれば、専門知識を取得するためのペットビジネス向けのセミナーを受けられたり、本部から必要な器具を借りられたりするメリットがあります。さらに、集客やマーケティングなど、独力では取り組みづらい部分についてサポートを受けられる場合もあるので、自力で開業するよりスムーズに事業を開始できるでしょう。
ただし、フランチャイズに加盟する場合は、本部に対して加盟金や売り上げの一部を支払う必要があります。
ペットビジネスの現状と市場規模
ペットビジネス市場は、世界的に拡大傾向にあり、健康志向のペットフードやペット保険など、多様なサービスが提供されています。株式会社矢野経済研究所の調査では、2021年の日本国内の市場規模は約1.7兆円で、2024年には約1.8兆円になると予測されています。海外では、特にアメリカや欧州においてペットビジネス市場が大きく、Bloomberg(ブルームバーグ)の調査(英語)では、2030年までには世界全体で5000億ドルに達すると予想されています。
市場成長の一因は、新型コロナウイルスの流行中にペットを新たに迎えた家庭が増えたことです。ペットを家族同然に考える飼い主が増加しており、それに伴いペット向けの商品やサービスへの投資が促進されていることも影響していると考えられています。
儲かるペットビジネスを見つけるコツ
高い利益を見込める事業を探す
ペットビジネスで儲けるために、利益率が高い事業を見つけましょう。たとえば、富裕層をターゲットにしたサービスは、一般市場と比較して高価格で提供できるため、より大きな利益が期待できます。
オーダーメイドのペット用品や高級ペットエステ、マンツーマンのトレーニングなど、特別なニーズに応えるサービスを考えてみましょう。このようなサービスを利用する顧客は、ペットへの出費を惜しまない傾向にあります。よりよいサービスの提供を心がけて顧客の満足度を高めれば、継続的に利用してもらえるようになるでしょう。
継続利用の見込める事業を探す
継続的な利用が見込める事業も、儲かるペットビジネスです。一度購入すれば今後購入する必要がない商品の販売事業では、常に新しい顧客を見つけなければならず、継続的に利益を上げることが難しいリスクがあります。
しかし、サービスの利用が定期的に必要になる事業には、そのようなリスクがありません。たとえば、ペットフードを配送するサブスクリプションやトリミング、健康診断などのサービスは、リピート率が高いです。一度でも顧客を獲得できると長期にわたりサービスの利用が見込める事業は、安定した収益を確保できるので、儲かりやすいといえるでしょう。
まとめ
ペットビジネスは、ペットの健康と幸福を支援する商品やサービスを提供する事業です。ペットビジネスのアイデアとして、ペットシッターサービスや散歩代行などが挙げられます。アイデアを参考に、ペット向けの新ビジネスを考えてみましょう。
ペットビジネスを始める際は、ペットを飼っている人々のニーズを正確に理解し、それに応えられる製品を提供することが重要です。売り上げを伸ばすには、ブランド構築やマーケティングに力を入れることも欠かせません。
ペット商品の販売を検討しているなら、ネットショップを立ち上げると良いでしょう。Shopifyを利用すれば、専門知識がなくともネットショップを開設できます。ショップの実態に合わせてさまざまな機能をカスタマイズできるため、事業形態に変更があった場合にも柔軟に対応可能です。無料体験も実施していますので、お気軽にShopifyをご活用ください。
よくある質問
ペットビジネスを始めるのに資格は必要?
多くのペットビジネスでは、第一種動物取扱業等の登録が必須です。登録にあたり資格が必要となることもあり、その要件は自治体ごとに異なります。
ペットビジネスにはどんな種類がある?
ペットビジネスは大きく「生体・サービス」「ペットフード」「ペット用品」の3つに分けられます。生体・サービスでは、生体販売や保険、ペットシッター、介護施設などが含まれます。ペットフードは、犬や猫などのペット向け食料を提供する業界で、専門の食品製造と販売が主な業務です。ペット用品は、リードやシャンプー、トイレ用品など、ペットの日常生活に必要な商品の製造と販売を行っています。
ペット市場は将来性がある?
国内のペット市場は2021年度で約1.7兆円、2024年には1.8兆円への拡大が予測されていることから、将来性があるといえるでしょう。加えて、忙しい生活を送る飼い主が増えており、散歩代行サービスやペットシッターなどのニーズは今後さらに高まると考えられます。
ペットビジネスの問題点は?
- 人材不足
- 不十分な教育体制
- 低品質なサービスの増加
- 動物虐待
- 不安定な経営
ペットビジネススクールとは?
ペットビジネススクールとは、ペット関連ビジネスの起業や運営に必要な知識やスキルを学ぶための専門学校です。卒業生はペットショップやペットサロン、ペット商品の開発など、さまざまなペットビジネスを展開できます。
文:Yukihiro Kawata