海外の調査(英語)では、91%の企業が動画マーケティングを行っており、そのうちの87%が売り上げ向上につながったと回答しています。動画広告の市場規模が拡大してきていることからも、動画がブランドのマーケティング戦略に重要であることがうかがえます。
この記事では、動画マーケティングとはなにか、始め方や動画マーケティング戦略の立て方、動画マーケティングにおすすめのプラットフォームや成功事例などを解説します。
動画マーケティングとは?
動画マーケティングとは、動画を利用してブランドや商品を宣伝することです。動画をインターネット上に公開し、ブランドの認知度アップや自社サイトへの集客、商品の宣伝などを行います。スマートフォンの普及とSNS利用者の増加に伴い動画を視聴する人が増えていることから、さまざまなブランドがマーケティング戦略として採用しています。
動画マーケティングは、TikTokやInstagramリールのような素早く見られる縦型動画から、YouTubeのような横型でブランドストーリーを伝えやすい長めの動画まで、さまざまな形式が利用できます。また、動画マーケティングのコンテンツで人気があるのは、ハウツー(how-to)動画、説明動画、舞台裏動画、開封動画、カスタマーレビュー動画などです。
動画マーケティングのメリット
コンテンツマーケティングに動画を使うことで、静的なデジタルコンテンツよりも動きと音による没入感で視聴者をブランドに引き込むことができます。また、写真やテキストよりも1つの投稿で入れられる情報量も多く、より効率的にマーケティングを行うことができます。
動画マーケティングの始め方
動画マーケティングを始めるためのステップは以下の通りです。
- マーケティング戦略を立てる:動画作成をする前に、ターゲットとする視聴者像、達成目標、コンテンツのジャンル、動画のコンセプトの設定をします。
- 動画プラットフォームを選ぶ: 公開場所を限定するのか、または複数に公開するのかなど、戦略や予算に合わせて選択します。複数のプラットフォームを利用する場合は、プラットフォームによって適切な動画の長さやサイズが異なるため、それぞれに合うように動画を最適化します。
- 魅力的なコンテンツを作成する: 動画マーケティングの目標を達成できるように、事前に立てたマーケティング戦略を基にコンテンツを作成します。
- 動画を公開する: 誤字脱字や動画サイズなどを最終確認して、プラットフォームに動画を公開します。
- 動画を宣伝する:ウェブサイトに掲載したり、その他のSNSで動画を共有したりしてなるべく多くの顧客にリーチできるようにします。YouTube広告やTikTok広告などの動画広告を利用するのも効果的です。
- 結果を分析する: 各プラットフォームに備わっている分析ツールを使用して、公開した動画の視聴時間やエンゲージメント率、視聴者の属性などのデータを分析します。それらのデータを活用して、次の動画マーケティングのコンテンツや公開時間などを最適化しましょう。
動画マーケティング戦略を立てる際に考慮すべきこと
動画マーケティングで成功するためには、動画を撮影する前に、戦略やコンテンツを入念に準備することが大切です。YouTube ショートやInstagramリールのような短編動画であっても、この動画は誰のためのものなのか、顧客にどんな行動を取ってもらいたいのか、KPIをどのように設定するのかを考えましょう。
他には以下のような内容を考慮して動画マーケティング戦略を立てましょう。
ターゲット顧客を理解する
ターゲット顧客とは、動画コンテンツでリーチしたい特定の層やペルソナのことです。ターゲット顧客を設定していない場合は、動画マーケティングに取り組む前に、市場調査、座談会、アンケート調査などを利用して、ターゲット顧客について調査します。
コンテンツ作成時は、ターゲット顧客が抱える問題やニーズにこたえるような内容にすることが大切です。ただし、SNSによって視聴者層が違うため、複数のSNSに投稿する際はそれぞれに合う対策が必要です。プラットフォームごとに動画をアップロードして顧客の反応を確認し、各プラットフォームのユーザーの好みや視聴傾向を調べます。動画の長さやサムネイル、テキストなどを調整しながら、それぞれのSNSに一番合う動画を作成していきましょう。
予算を設定する
それぞれのプラットフォームの特徴と視聴者層に合うコンテンツを作成するために、製作にかかる人件費や編集費用などを含めた総合的な予算を設定しましょう。
TikTokなどの縦長動画であれば短い動画の方が視聴されやすいため、その分製作費用も下がります。新規事業や個人事業など予算があまりない場合でもお得にブランドを宣伝することが可能です。
YouTubeチャンネルのトップやAboutページに掲載するブランドストーリー動画など、多くの人に視聴されブランディングができる動画には予算をかけるのも良いでしょう。こういった動画を制作する場合は、出演者、制作スタッフ、動画編集ソフトなどのさまざまな製作過程に予算を割り当てる必要があるかもしれません。予算に限りがある場合は、無料ソフトを使用したり、編集方法をYouTube動画から独学で学んだりすることで費用を抑えることができます。
ブランドイメージを維持する
すべての動画コンテンツで一貫したブランドイメージを提供するようにしましょう。ブランド立ち上げ時に設定したブランドカラーなどを動画マーケティングでも適用します。また、音楽や編集スタイル、動画のフィルターなど、動画特有の要素についても、既存のブランディング要素に合うように気を配ります。映像の編集などを専門とするポストプロダクションに依頼する場合は、ブランディング要素をまとめたポートフォリオを作成して誤解がないようにイメージを伝えることも大切です。
伝わりやすいメッセージとCTAを決める
動画をマーケティングツールにするためには、明確なメッセージとCTA(コールトゥアクション:リンククリックなどの行動を起こしてもらうための要素)を設定することが必要となります。そのためには、動画コンテンツから視聴者に感じてもらいたいこと、または視聴者に取ってもらいたい行動を決めましょう。
CTAを設定する際は、動画の意図が購買を促すものであってもブランドストーリーを伝えることであっても、チャンネル登録やアカウントのフォローなど、視聴者がどのような行動を取ればよいのか明確にわかるものを設定しましょう。
目標を設定する
CTAの設定と同様に、動画の配信に目標を設定することで必要な行動が明確になります。目標はCTAに対応するものでなければなりません。メルマガやYouTubeチャンネルへの登録、売り上げの向上を目標としている場合、クリック数や売上金額など、測定可能な指標を設定しましょう。そうすることで、動画マーケティングの成功を定量的に判断することができます。目標を達成した動画や達成できなかった動画を知ることで、次に作成する動画のコンテンツタイプや長さなどを改善することもできます。
動画マーケティングの形式7選
動画マーケティングを成功させるには、さまざまな種類のオンライン動画を試してみて、どの方式が合っているのか探っていくことが大切です。ここでは、SNS投稿やコンテンツマーケティング用の動画を作成する際に役立つ動画マーケティング形式を7つご紹介します。
ブランド紹介動画
ブランド紹介動画は、商品、ブランドストーリー、またはブランドを支えている人々などを視聴者に紹介します。チャンネルの予告編、ブランドのウェブサイトやAboutページに掲載される動画などで使用される形式です。
ブランド紹介動画は、ブランドと共通の価値観を持った潜在顧客とつながる機会を得たり、ブランド発足や商品開発の舞台裏を紹介したりすることを目的としています。開発者や創業者など、ブランドの顔となる人物を起用することでコンテンツの信頼性が上がり、よりメッセージが伝わりやすくなります。
キッチンウェアブランドのJoseph Joseph(ジョセフジョセフ)は、創業者兄弟がブランドの理念を動画で語っています。YouTubeチャンネルのほか、ウェブサイトのAboutページにも動画を埋め込んでおり、複数チャネルで動画マーケティングを行っています。
ライブ配信
ライブ配信は、Instagram、Twitch、YouTubeなど多くのSNSで人気の動画マーケティング形式です。配信中のチャットで直接商品のフィードバックを受けることができるので、顧客と直接関わりたいブランドにとって効果的な方法です。ライブ配信の一般的なコンテンツには、顧客との雑談、Q&Aセッションや商品紹介などが含まれます。
ユニクロはライブ配信で商品を販売するライブコマースを定期的に行っています。視聴者の反応や質問などにリアルタイムで答えながら自社商品の紹介を行い、動画マーケティングの目標である売り上げ向上につなげています。
レビュー動画
動画によるレビューは、文字では伝えにくいニュアンスや実際の使用感や質感などを伝えることができるため、顧客の購買意欲を高めるのに役立ちます。実際に商品を使用した顧客やインフルエンサーなどに感想を共有してもらうことで、より消費者目線で商品を紹介することができます。顧客にインタビューをしたり、SNSで顧客が作成した動画レビュー(UGC)をブランドのアカウントで共有したりすることで、レビュー動画を使った動画マーケティングを行うことができます。
食材の宅配サービスを提供するOisix(オイシックス)は、顧客へのインタビュー動画で商品の感想を共有し、視聴者にサービスを利用した生活をイメージしてもらうことで商品購入につなげています。
教育動画
教育動画とは、簡単なHow to動画やオンラインコースなど、知識を伝えるあらゆるタイプの動画です。ブランドやターゲットの興味に関する教育的なコンテンツを提供することで、特定の分野の知識を得たい人々をオーガニック検索から取り込むことができます。
ターゲット顧客の興味を引くコンテンツを見つけるには、競合分析や市場調査が有効です。幅広く視聴者の興味を引きたい場合はGoogleトレンドなどでトレンドキーワードを検索するのも良いでしょう。ターゲット顧客の興味に合うトピックを見つけたら、それに関する教育動画を作成します。
ハンドメイドパーツを販売する貴和製作所は、ハンドメイドのチュートリアル動画を配信しています。消費者が持つ悩みを解決するコンテンツやハンドメイド初心者や興味がある人にも有益な教育コンテンツを提供することで、潜在顧客へのリーチや売り上げ向上につながる動画マーケティングになっています。例えば、購入したネックレスを長くしたいときに、どのパーツを使ってどのようにカスタマイズできるのかを動画と写真で丁寧に解説し、CTAとなる商品ページへのボタンも設置しています。
商品紹介や開封動画
商品紹介や開封動画は、単に新商品を発表するだけではなく、潜在顧客に使用感や特徴について詳しく伝えることができるため効果的なマーケティング手法です。専門的な知識が必要な商品や、組み立ての手順が複雑な商品はこの動画マーケティング形式が最適です。ライブ配信やSNSで使用する短編動画、または商品ページ用の動画など、さまざまな場面で活用することができます。
コメダ珈琲店は、サマーバッグの発売開始に先駆けてインスタグラムのライブ配信で商品紹介を行いました。紹介者と司会進行の二人で行うことで、付属品の使用方法や素材感を伝えながらファンとの交流も同時に行い、効果的に新商品の宣伝を行いました。
説明動画
説明動画は、簡単な商品紹介や開封動画よりも、商品の特徴をより深く掘り下げ、既存顧客と潜在顧客両方の興味を引く長めの動画のことを指します。
snowpeak(スノーピーク)は、アウトドアギアの特徴や開発のこだわりを伝える動画を作成し、視聴者が通常の商品紹介よりもより深く商品について理解し興味を持つように仕向けています。動画内で販売を促すような文言はなく、純粋に商品について知ってほしいという姿勢で動画が作られているのが特徴です。
舞台裏動画やVlog
舞台裏動画や日常がメイントピックのVlogで商品を紹介することで、視聴者の共感を得ながら商品に興味を持ってもらうことができます。また、生活感のある動画を通して、視聴者に商品の疑似体験のような感覚を与えることもできます。
生活用品や食品を販売するki duki(キヅキ)は、自社デザイナーであるVlog系YouTuberの動画内で商品紹介を行っています。Vlogの中でさりげなく商品が使用されることで、消費者がより自分に近い感覚で商品をイメージすることができ、購買意欲や共感を高めています。
動画マーケティングの配信とプラットフォーム
適切なコンテンツを適切なプラットフォームで配信することがトラフィックを増加させるために必要な要素です。複数のタイプの動画コンテンツを試して、マルチチャネル戦略として生かせる動画制作を心がけましょう。
動画コンテンツマーケティングのための配信
動画コンテンツマーケティング戦略の重要な要素は、配信計画を立てることです。配信チャンネルには大まかに3つのタイプがあり、ユーザーの属性や行動が異なるプラットフォームを考慮するとさらに細分化していきます。以下にその3つをご紹介します。
- オウンドメディア:ウェブサイト、ブログ、Eメール、ニュースレター、SNSなど、ブランドが直接運営するチャンネルをオウンドメディアと呼びます。ホスティングやドメインの費用は別として、オウンドメディアの配信自体は無料です。ホームページ、商品ページ、ランディングページなど、ウェブサイトの関連ページに動画を埋め込むことができます。
- 有料メディア:YouTubeなどの動画中に再生されるような動画広告は、有料メディアの一種です。Instagram、Facebook、TwitterなどのSNSに掲載することができます。
- アーンドメディア:ブログ記事への掲載や著名なインフルエンサーからのリポストなど、契約や支払いをしていない第三者による配信はアーンドメディアです。アーンドメディアは、メディア企業やインフルエンサーが任意に動画を取り上げるため、ブランド側が計画して実行することはできません。
おすすめの動画プラットフォーム
Facebookは、ユーザー数で言えば、今でも世界で最も利用者数が多いSNSです。しかし、他のSNSと比べると若者よりも30代以上のユーザーが多いため、利用者層に合った動画を投稿する必要があります。Facebookでも最近は24時間で投稿が消えるストーリーズが人気を集めており、Facebookの調査によると、ユーザーの50%がストーリーズで新商品の情報を得たいと感じていることなどから、SNS動画マーケティングの配信プラットフォームとして有効です。
Instagramは、ユーザーとブランドがつながりやすい人気のプラットフォームです。ストーリーズのような短い動画だけではなく10分までの長い形式の動画にも対応しています。ハッシュタグの使用やインフルエンサーの活用などを行うことで、顧客への動画の露出が増え、動画マーケティングの目標が達成しやすくなります。
TikTok
TikTokはここ最近急成長し、若年層だけではなく30代以上の中年層にもリーチ可能になってきています。また、ビジネス利用のアカウントが増えてきているものの、依然として広告配信先として選択する企業は少ないため、動画の露出を高め動画マーケティングの効果を上げることも期待できます。TikTokでは、手の凝った動画よりも真実味のある動画であることが重要なので、インフルエンサーやUGCを活用することでより多くリーチできるようになります。トレンドの曲やネタを活用するのも露出を高めるのに効果的です。
YouTube
YouTubeは2024年8月時点で20億人のユーザー数を誇る、世界で人気のある動画投稿のプラットフォームです。検索エンジンでも動画が表示されるので、キーワードに合うコンテンツを作成することでオーガニック検索からの流入が見込めます。YouTubeのアルゴリズムは、一貫した動画アップロード、キーワード、トレンドトピックに沿ったコンテンツを持つチャンネルを優遇するため、横長動画だけではなく、利用者数が増えている縦長動画も活用しながら魅力が詰まった動画配信を心がけることで、動画マーケティングの効果をあげることができます。
動画マーケティングの成功事例
三和交通
タクシー会社の三和交通は、若年層の利用が多いTikTokを活用し、ユニークなドライバーを前面に押し出した動画を制作し、採用活動で大きな成功を収めた企業です。また、動画の面白さや親しみやすさが視聴者の関心を引き、会社の知名度向上にもつながりました。これにより、三和交通は求職者からの応募が増え、広告費換算で5億円以上もの結果を生み出しました。
Smart HR
クラウド人事労務ソフトを提供するSmart HR(スマートHR)は、ウェブサイトに各機能の紹介動画やインタビュー形式の導入事例を掲載するなどして動画を活用している企業です。自社サイトに動画を掲載することで、サイトを訪れた見込み顧客に商品の特徴や魅力を効率的に伝えることができています。動画広告ではCPA(Cost Per Action:顧客獲得単価)の削減やコンバージョン率の向上を成し遂げています。
まとめ
YouTubeやTikTokといった人気のSNSでは動画投稿が中心となっていることから、顧客にリーチするために動画マーケティングに取り組むブランドが増えています。動画は顧客を引きつけながらより多くの情報を提供できるメリットがあり、ターゲットに合わせたプラットフォームやコンテンツタイプを選ぶことでよりマーケティングの効果をあげることができます。この記事を参考に、効果的な動画マーケティングを始めてビジネスの目標を達成してください。
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動画マーケティングでよくある質問
動画はマーケティング戦略として有効?
はい、動画はマーケティング戦略として有効です。動画は視覚的要素と音を組み合わせて顧客の注目を集めたり、文字や画像よりもわかりやすく商品を紹介したりすることができるため、集客や売り上げなどマーケティングの目標を達成しやすくなっています。
動画マーケティングの例は?
ブランド紹介ビデオ、ライブ配信、レビュー動画、教育動画、商品紹介動画、開封動画、説明動画、舞台裏動画、Vlogなどが挙げられます。
文:Ryotetsu