小売業を始める際、卸売業者や仕入先はビジネスを成功させる重要なポイントになります。最適な卸売業者を見つけるには、慎重なリサーチが大切です。
この記事では、卸売業者の概要や信頼できる仕入先の探し方、卸売業者一覧などを紹介します。ネットショップの開業を検討している方は参考にしてください。
卸売業者とは
卸売業者は、メーカーから直接商品を仕入れ、実店舗やオンライン小売業者に販売して利益を得るサプライヤーで、サプライチェーンの中間業者としての役割を持っています。卸売業者がいなければ、メーカーと小売業者が各々で契約を結んだり流通の仕組みを作ったりしなければならず、手間やコストが大幅に増えてしまうでしょう。
卸売業者は小売業者の販売量を超える規模で大量に仕入れることを条件に、メーカーから一般消費者向けの定価よりも低価格で商品を購入しています。小売業者は、この商品を卸売業者から小売価格の60〜70%くらいの価格で仕入れて、消費者へ個別に販売することで利益を得ます。
そのため多くの場合、卸売業者はメーカーとの契約によって消費者へ仕入れ値で直接販売することは禁止されています。
信頼できる仕入先の探し方
信頼できる仕入先を見つけるには、以下の注意点を参考にしてください。
- 品質:一部の卸売サイトには偽物や低品質な商品が数多く掲載されている場合があります。低品質な商品を大量に抱え込まないために、市場調査を行うようにしましょう。
- 価格:最初に提示された仕入価格が絶対というわけではなく、交渉も可能です。例えば多く仕入れるほど割引してもらえることもありますし、10%ほど価格の下がる余地があるならその仕入先は良い取引相手といえます。
- クレーム:問題が発生した際は、誰がどのように対応してくれるのか確認します。特にドロップシッピングでは顧客対応が重要となるので、評判の良い仕入先と取引するようにしてください。
また、迅速な対応をしてくれる仕入先を選ぶことも重要です。消費者は注文後3営業日以内に商品が届くことを期待している傾向にあるといわれるためです。
卸売業者一覧:大手5社
AlibabaとAliExpress
Alibaba(アリババ)とAliExpress(アリエクスプレス)は、中国のアリババグループが展開するECモールで、アメリカのAmazonに匹敵するほどの規模と影響力を持っています。調査によると、中国国内のECプラットフォーム市場におけるシェア率は44%です。
AlibabaとAliExpressの違いは、ターゲットとする顧客層です。AlibabaはBtoB向けで、主に卸売価格で大量購入を希望する小売業者向けのECサイトです。一方、AliExpressはBtoC向けで、1個から少量の購入が可能です。そのため、Alibabaで本格的に仕入れる前に、AliExpressで試しに仕入れてみるのも一つの方法です。
アリババグループのECサイトは以下のような用途に最適です。
- 中国から中〜低価格の商品を仕入れたい
- 幅広い種類の卸売商品と価格帯を見比べたい
- 自社ブランドで販売できるプライベートラベルやホワイトラベルの商品を見つけたい
NETSEA
NETSEA(ネッシー)は、約4,700社の問屋や卸売メーカーから商品を仕入れることができる日本最大級の卸売ECサイトです。仕入れ価格の平均は定価の約60%で、アパレルや日用雑貨、備品や消耗品、美容や健康、家電や家具など約230万点以上の商品が取り扱われています。有名メーカーのワケあり商品をオークション形式で購入することも可能です。
また、卸売業者によってはドロップシッピングにも対応しています。登録している卸売業者はNETSEA独自の審査を通過しており、連絡先も公開されているため安心して利用できます。
- 有名メーカー製品や人気商品、日本製商品を仕入れたい
- 信頼できる卸売業者を見つけたい
- 個人事業主で卸売サイトを利用したい
orosy
orosy(オロシー)は、Amazonなど他のECモールにはないブランドを中心に約1,500社以上のメーカーや卸売業者が出展している卸売・仕入れマーケットです。スマホアプリ(iOS版・Android版)も提供されており、簡単にいつでも仕入先を探せます。
ポイント還元システムも特徴で、初めて購入するブランドでは取引額の20%分、負担になりがちな送料も1500円分まで全額など、様々なシーンでポイント還元が設定されています。さらに、初めて仕入れたブランドの場合、売れ残った商品は60日間返品が可能です。登録している卸売業者は審査を通過した信頼できる会社のみなので、安心してインターネット上で仕入れができます。
また、orosyはBASE(ベイス)、Shopify(ショッピファイ)、COLOR ME(カラーミー)、STORES(ストアーズ)、b8ta(ベータ)など、各種販売プラットフォームと連携し、小規模メーカーも簡単に卸販売に参入できるようにしていることも特徴です。
- 問屋にない、特徴的で高感度な商品を仕入れたい
- 初めて取り扱うブランドの在庫リスクを抑えたい
- 送料などの負担をできる限り抑えたい
TopSeller
TopSeller(トップセラー)は、ドロップシッピングに対応した商品仕入れサイトです。商品が売れたら、メーカーや卸売業者から消費者へ直接発送される仕組みのため、梱包・発送などの作業負担を削減できます。また、在庫を抱える必要もないため、商品を保管するスペースも不要です。
約1,000社が登録しており、雑貨や家具、日用品など幅広い種類の商品を約30万点取り扱っています。楽天市場やYahoo!ショッピングなど一部のECモールならすぐに販売を開始できます。取扱える商品の種類に応じた月額料金プランが用意されており、5種の商品を選べる「おためしプラン」は無料で利用可能となっています。
- 有名メーカーや国内外の人気商品を取り扱いたい
- 手間をかけずにオンラインストアのラインナップを充実させたい
- マーケティングに集中できるドロップシッピングビジネスを手がけたい
スーパーデリバリー
スーパーデリバリーは、BtoB向けの卸・仕入れサイトで、取扱商品数は約170万点あり、3,100社以上の企業が出展しています。多様な商品ラインナップを提供し、取扱商品の約75%は1点からの仕入れが可能なため、個人で運営するオンラインショップにも対応しています。また、最新のトレンドを反映した商品や、国内外のブランド商品が揃っており、幅広いニーズに応えることが可能です。
- 有名メーカーや国内外の人気商品を仕入れたい
- 小規模な取引から始めたい
卸売業者と取引する際の注意ポイント
仕入先や取り扱い商品の候補が見つかったら、実際に仕入れる前に取引条件も細かく確認しておく必要があります。これから紹介する重要なポイントを参考に、ビジネスに合った取引条件を選びましょう。
- 過剰な出費:卸売業者と取引する場合、仕入れる量が多くなれば1点当たりの価格は下がる傾向にありますが、仕入れる商品の需要や人気が不明なうちは、大きな予算を投入するのは避けたほうが良いでしょう。予算をしっかり把握し、過剰な支出にならないよう調整することが大切です。
- 手数料:卸売業者と取引を始める前に、会員費やその他の追加費用を事前に把握しておきましょう。契約プランによって仕入れられる商品のラインナップが変わる場合もありますが、その内容を卸売業者が適切に説明しているかがポイントになります。
- 一般向け販売の有無:卸売業者が、一般消費者向けにも商品を直接販売している場合は注意してください。卸売価格ではなく、小売価格に近い値段が設定されている場合もあります。
また、ドロップシッピングビジネスを新たに始める場合には、Shopifyのオンラインストアに直接商品を追加できる専用アプリもおすすめします。ドロップシッピングを利用すると、梱包や配送、在庫管理の負担を軽減できます。
卸売業者を利用するメリット
- 必要な分だけの在庫を購入できるため、保管スペースを小さくできる
- 商品の売れ行きが急に拡大ても、卸売業者の持つ在庫から迅速に再入荷できる
- 卸売価格で商品を仕入れ、利益率を確保してオンライン販売が可能
- 商品開発が不要なので、時間とコストを削減できる
卸売業者をうまく活用すれば、販売する商品やサプライチェーンを独自に開発する必要がなくなり、小売業者はマーケティングやカスタマーサービスに集中することができます。
ドロップシッピングと卸売業者
注文から発送までの一連の作業を代行してくれるフルフィルメントサービスを活用したドロップシッピングなら、小売業者は商品を直接扱う必要がありません。小売業者のストアに顧客から注文が入ると、ドロップシッピング対応の卸売業者が商品を取り寄せ、直接顧客に発送してくれる仕組みになっています。
このように、ドロップシッピングは卸売の仕組みと第三者による配送の仕組みを組み合わせたビジネスモデルといえるでしょう。
卸売業者を見つける意外な方法
卸売業者を見つける最も簡単な方法はBtoBのECサイトを利用することですが、他にも方法があります。
- 業界の展示会に参加し、直接卸売業者とコンタクトを取る
- ニッチな分野のソーシャルメディアグループに参加し、同業者と情報交換する
- 取り扱う商品に関連のある業界団体に参加し、情報を得る
卸売業者と対面で会うことで、自分のビジネスに最適な解決策が見つかるかもしれません。対面でのビジネス関係の構築は、信頼性を高め、将来的に卸売価格を安くしてもらえる可能性を高めてくれます。
卸売業者に問い合わせる際に確認すべきポイント
卸売業者に問い合わせるときは、以下の項目を質問しましょう。
- 最低注文数量(MOQ):最低注文数量が自分の希望注文数量より多くないか確認しましょう。例えば、100個しか注文する必要がないのに、卸売業者が500個からしか割引を提供してくれないのであれば、ビジネスに合った仕入先とはいえません。
- 1単位あたりのコスト(CPU):最低注文数量と関連していますが、注文数量が多いほど1単位あたりのコストは安くなります。しかし、ビジネスを始めたばかりで、必要以上の在庫を抱えるのはリスクが高くなるため、避けたほうが無難です。
- 返品ポリシー:商品に問題があった場合に返品するための条件や方法を確認しましょう。返品にかかる費用は全額自己負担なのか、または卸売業者が負担してくれるのか、事前に把握しておくことでリスクを最小限に抑えられます。
- 納品までにかかる日数や期間:顧客は注文から商品が届くまでの期間が長いと不満に感じます。また、売り切れの状態が長く続く場合も顧客が離れていく原因になります。そのため、納期を把握しておくことが、顧客満足度の維持に繋がるでしょう。
メールで卸売業者に問い合わせるときは、曖昧な質問では返信をもらえない可能性があります。そのため、「250個からの注文する場合、価格はいくらになりますか?」のように明確な質問を送るほうが返信率は高くなります。提示された価格が予算を超えている場合は、価格交渉しても問題ありません。
また、卸売業者と取引をする場合は、事業者としての証明を行なう必要もあります。法人の場合は登記簿謄本や印鑑証明書、個人事業主の場合は開業届などの提出を求められる場合があります。必要書類を事前に確認し、用意しておきましょう。
契約前の最終確認
- 利用者の口コミ:卸売業者がこの質問への回答に消極的、またはありきたりな答えしか返ってこない場合は注意しましょう。また、自らインターネットで口コミを探すのも一つの方法です。
- 必要な保険に加入しているか:商品賠償責任保険や損害保険、盗難保険などに加入しているか確認しましょう。商品賠償責任保険は商品の欠陥や不具合によって顧客に損害を与えた場合に備える保険です。損害保険は、商品や設備に対する損害を補償する保険で、盗難保険は商品や設備が盗まれた場合に補償を受けるためのものです。このような保険に卸売業者が加入していない場合は、契約を再検討したほうがいいでしょう。
- 数字が妥当か:大量に購入すれば割引率は高くなりますが、割引率を優先して仕入れてしまうと在庫を多く抱えることになります。ビジネスを始めたばかりの場合は、必要な分だけを購入するのが最適な戦略です。
人気商品の注意点
時計やジュエリー
時計やジュエリーの卸売業者を探すときは、以下の重要な情報を卸売業者が提供しているか確認してください。もし、提供されていない場合は、他の卸売業者を探したほうがいいでしょう。
- 製品レビュー:顧客の期待に応える品質かどうか、あらかじめ確認しておく必要があります。
- 契約している企業:有名な企業が卸売契約を結んでいるかどうかは、業者の信頼性を測るポイントとなります。
- 緊急時の対応:ジュエリーは小さくてデリケートなので、トラブルが発生した場合、どちらの負担になるのか注文前に確認しておくことが不可欠です。
衣料品
ファッション系アイテムはドロップシッパーや小売業で人気が高く、最新のトレンドによってビジネスの状況も常に変化します。最適な衣料品の卸売業者を見つけるポイントは以下のとおりです。
- カスタマイズ性:オリジナルのTシャツやパーカーなど、ブランド独自のカスタマイズが可能であれば、ビジネスの幅は広がります。
- パッケージの品質:商品を保護するだけではなく、ブランドイメージにも直結する大切な要素となります。
紅茶やコーヒー
オンラインでの紅茶やコーヒーの販売も需要の高いビジネスですが、注意するべきポイントがあります。
- サポート力:紅茶やコーヒーは顧客が手に取るときに、ロゴやパッケージで商品の魅力を伝える必要があります。食品業界ではブランドイメージの確立が大切になるため、卸売業者とも連携して取り組むことが重要です。
まとめ
いくつもの条件が絡んでくるため、ビジネスに最適な卸売業者を見つけるのは簡単ではありませんが、粘り強く取り組む必要があります。まずは、信頼できる業者かどうかを見極めるために、しっかりとリサーチを行い、価格や品質、返品ポリシー、納品までにかかる日数や期間などの詳細を確認しましょう。必要であれば、直接会って話をすることも効果的です。
また、初めて取引する場合は、少量の注文から始め、在庫を多く抱えるリスクを減らしましょう。ビジネスニーズに合った卸売業者を見つけることができれば、安定した仕入れと販売が可能になり、ビジネスの成長に繋がります。
よくある質問
卸売業者とは?
卸売業者は、メーカーから直接商品を仕入れ、実店舗やオンライン小売業者に販売して利益を得る業者です。
仲卸業者と卸売業者の違いは?
仲卸業者と卸売業者の違いは、商品の仕入先です。仲卸業者は卸売業者から商品を仕入れるのに対して、卸売業者はメーカーから大量に商品を仕入れます。
文:Momo Hidaka