1965年よりチェーン展開をスタートしたドラッグストア、サンドラッグ。首都圏を中心にドラッグストア事業のやディスカウントストア「ダイレックス」なども運営。全国44都道府県に1,380店舗(2023年3月末時点)を有する大手グループとして知られています。
サンドラッグでは「すべてはお客様のためにある」という顧客重視の哲学を経営方針に据え、変化する社会環境下で「お客様が本当に求めているもの」を追求しています。その実現に向けてさまざまな購買チャネルに対応することを基本方針としていることから、EC事業を強化していくことを目指しています。
リアル店舗とネット販売サイトの融合もその一環です。サンドラッグではShopify Plusを導入し、通販サイトと会員登録した顧客向けのマイページを統合した「サンドラッグ Online Store」をリニューアルオープン。さらに、店舗とオンラインをシームレスに統合することで顧客満足度の向上を図り、社内の利便性を高めるためのデジタル化を推進しています。その結果、次のような成果が上がっています。
- 販売チャネルの垣根を作らないユニファイド・コマースを展開
- 柔軟性を生かしスピード感のあるECサイトのリニューアルを実現
- Shopifyアプリで実店舗とオンラインの購入履歴の統合
- ファースト・パーティ・データを活用したリアル店舗の拡大
- MAでのスピーディなCRM導入、他との連携も可能に
EC事業を強みとして成長させるためにShopifyを選んだ背景や具体的な活用事例、また今後の展望についてサンドラッグ執行役員兼EC事業部事業長の田丸知加氏に伺いました。
会社を挙げた経営戦略においてオンラインを起点に据える理由
サンドラッグ執行役員兼EC事業部事業長の田丸知加氏
多くの会社において、アプリやウェブ、ECなどを指す「オンライン」において、特にECが外付けのチャネルとなっている事例が少なくありません。店舗・オフライン事業とオンライン事業は同じような取り組みであっても顧客が分断され、購買情報が統合されていない状態というのが「ありがちなECの立ち位置だ」と田丸氏は強調します。
「サンドラッグでは単にECの立て直しではなく、会社全体の経営戦略でオンラインを起点に考えるという方向性、OMO(Online-Merges-with-Offline)という顧客基盤統一の考え方を基軸に進めています」(田丸氏)
リニューアルされたサンドラッグオンラインストア
会社を挙げて「オンライン」の強化を図るため、手始めにオンラインストアのリニューアルを行いました。サンドラッグの顧客IDをShopifyで統合することによって、顧客が商品を購入している場所がオフライン(実店舗)なのか、オンラインなのか、さらにはオンラインの中でもどこからなのか、というところまで見える化を実現することに注力。それが運営する通販サイトと会員登録した顧客向けのマイページを統合した「サンドラッグ Online Store」です。販売チャネルの垣根を作らないユニファイド・コマースを実現しました。
ユニファイド・コマースとは、オンライン・オフラインの概念もなく、ECや実店舗で取得したデータ(顧客情報・行動履歴など)をもとに、顧客それぞれにアプローチすることが可能です。カスタマージャーニーが複雑化する中で、サンドラッグが目指す「お客様ありき」の視点の実現にユニファイド・コマースが果たす意義は大きいと言えます。
またサンドラッグECはスクラッチでの開発で、機能追加のたびに時間やコストの負担が増すことがネックとなってもいました。今回のサイトリニューアルにあたっても、スクラッチでは結果的に各フェーズで1年半かかるとの見積もりが。「それに比べ、Shopifyにはスピード感があります。さらに私たちが取り扱う医薬品分野ではデジタル化がどんどん進んでいます。迅速な対応が求められますから、すぐに機能を追加できる拡張性・柔軟性を重要視したのがShopifyを選んだ理由でもあります」(田丸氏)
要件を落とし込むのに2カ月、開発に約6カ月、合計8カ月ぐらいでのプロジェクト構築が可能となり、Shopify導入で大幅な時間短縮を図れたといいます。
東京都が実施した「都内におけるドローン物流サービスの社会実装を目指すプロジェクト」に参画
2023年1月には東京都が実施する「都内におけるドローン物流サービスの社会実装を目指すプロジェクト」に参画。山間地域の生活利便性向上および持続可能な配送スキーム構築に向けて、東京都青梅市で、サンドラッグの商品(日用品、市販医薬品、食品等)をドローンで、店舗から指定場所までダイレクトに配送を行う実証実験を開始、2025年度中のドローン配送サービスの実用化を目指しています。ここでもShopifyの柔軟性が役立っています。
「ドローンでお届けするサービスは予約制な上、実施は天候にも左右されます。スケジュールが非常にタイトでなおかつ柔軟性が必要となるプロジェクトでしたが、Shopifyアプリを活用することで予約機能が付加できます。スムーズな運用ができ、本当に助かりました」(田丸氏)
東京都ドローン・プロジェクトに関しても、わずか10日で予約サイトの立ち上げを実現しています。
Shopifyアプリで得られるファースト・パーティ・データはリアル店舗の動向など幅広く活用
Shopifyでは半年ごとに100以上の製品や機能アップデートを提供し、市場やビジネスの変化によるユーザーのニーズに対応した最新機能を利用することが可能です。サンドラッグのサイトリニューアルでは、ECサイトと店舗のお客様向けのサイトを統合、Shopifyのアプリを用いた店舗検索の機能を実装しました。この機能拡張で顧客がどの地域を入れて検索しているのか、どこの店舗のページを見ているのか、店舗やネットで何を買ったのかというデータを得られ、新たなニーズの発掘にも寄与しています。このファースト・パーティ・データは細やかなターゲティングや分析を可能にし、広告やクーポン配信などOne to Oneマーケティングにも活用されています。
「『データ』と言うとECのデータに意識が行きがちですが、Shopifyアプリで得られるファースト・パーティ・データはリアル店舗の拡大にも活用できるのが強みです。新店舗のオープン後もお客様が新しいお店を探されているかどうか、また配信したクーポンが利用されているかどうかなど、データを取れるようになったのは大きいです」(田丸氏)
コロナ禍を契機とする巣ごもり需要など、顧客の購買行動にも大きな変化が生まれています。また顧客によって行動も多様化しているため、サンドラッグの理念である顧客に寄り添うという観点から、CRM(顧客管理)に役立つShopifyアプリも実装しています。
「MA(マーケティング・オートメーション)ではBrazeを採用しています。これまでのMAの実装にはAPI開発が必要でした。しかしBrazeならSNSをはじめとする多くのチャネルとの連携も早い。Shopify上で商品とのコネクターがすでにできあがっていますので、費用対効果を考えてもかなりのメリットを享受できていると思います」(田丸氏)
同様にリテールメディア向け広告配信システム「Criteoリテールメディア・ソリューション」も活用。リアルとネットを統合したサンドラッグのサイトにおいても、最適化した広告配信で顧客、広告主、サンドラッグ、三方よしの成果が得られる利点があります。
さまざまな購買チャネルに対応しオンオフ問わずお客様に向き合っていく
今後、収集したデータのシームレスな連携を続け、さらに効率化・最適化することで会社全体の成長につなげたいというサンドラッグ。ドラッグストア・調剤事業、ディスカウントストア事業、EC、マーケティングを含めたデジタル事業の融合をより深め、売上や規模拡大を目指しています。
Shopifyは越境ECサイトにも対応する世界標準のコマースプラットフォームです。日本在住の外国人顧客など多くの方にとって利用しやすく、質の高い買い物体験のできるサイトであるために多言語化にも対応しました。またサイトリニューアルでは、薬剤師とのやり取りなど専門的な知見を生かしたより深い顧客とのコミュニケーションも可能になったのです。
「Shopifyは日本の小売業の課題解消のためにできることをスピーディかつ柔軟に提案してくれますから、機能拡張などをさらに活用できればと考えています。今後はお客様のためにあるという視点を前提とし、当社の価値創造プロセスをさらに豊かにできるよう、EC事業の強化に取り組んでいきます」(田丸氏)
Shopifyにはスピード感があります。さらに私たちが取り扱う医薬品分野ではデジタル化がどんどん進んでいます。迅速な対応が求められますから、すぐに機能を追加できる拡張性・柔軟性を重要視したのがShopifyを選んだ理由でもあります