海外販売や海外からの仕入れに挑戦したくても、手続きや輸送などわからないことだらけで尻込みしている人も多いのではないでしょうか。
ここでは、海外物流の拠点となる海外倉庫についてと、国際物流で重要な通関手続きについてまとめました。
目次
国際(海外)倉庫とは
国際倉庫(海外倉庫)とは、輸出入する荷物を保管する日本国外の倉庫のことです。その多くは港近くや港へ輸送しやすい所にあります。
海外倉庫を利用すると、さまざまな所から輸送される荷物を一度集めて仕分けや梱包などをまとめてできるため、輸出入に関わるコストや手続き、輸送準備の手間を少なくすることができます。
海外倉庫のメリット
輸送費と手間の削減
倉庫があれば荷物をストックして自社の都合に合わせてまとめて輸送することが可能で、仕入れや受注ごとに海外配送するよりも、手続きの手間と輸送コストを抑えることができます。
例えば海外製品の仕入れで、各仕入れ先から購入した商材を一度海外倉庫に集め、効率的にパッキングしてひとまとめに輸入することで、送料を抑え税関手続きも1回で済ませることができます。
人件費を抑えることができる
国内倉庫を利用するよりも、日本より人件費のかからないアジアなどの海外倉庫を利用することで人件費を抑えることができます。例えば、検品やタグ付けなど物流加工をまとめて行うと、日本国内での作業が減り、人件費が削減できます。
輸入の場合、仕入れ先が広がる
日本への発送を行っていない海外企業でも、発送可能エリアに海外倉庫があれば商品を購入することができるため、仕入れ先の選択肢が広がります。
海外倉庫の選び方
日本語に対応しているか
海外物流の担当者が英語でやりとりできる場合は問題ありませんが、そうでない場合は日本語に対応している所を選びましょう。
海外物流は、国内と比べ手続きも多く時間もかかるため、そのぶんトラブルも発生しやすくなります。コミュニケーションに不安があるとトラブルに適切に対処できないので、日本企業が提供する海外倉庫や、現地日本人が運営する海外倉庫などを選ぶと安心でしょう。
代行サービスを提供しているか
海外倉庫を利用して輸出入の物流を改善したいのであれば、複雑な通関手続きや梱包などの代行サービスを提供している所を選ぶと良いでしょう。
特に通関手続きは法的な手続きのため、間違いがあったときに大きな損害が生じます。代行サービスを利用することでリスクと手間を減らしましょう。
商材に合った保管方法が可能か
温度や湿度、製品期限などの管理が必要な商材は、冷蔵機能を備えた倉庫や、期限データも管理できる倉庫管理システムを導入できる所などを選ぶ必要があります。また、アパレルなどではハンガーに掛けた状態で保管や輸送ができる倉庫を選ぶと良いでしょう。
国際物流の通関手続き
越境ECなど海外販売を考えるのであれば、国際物流に伴う通関手続きについて知っておく必要があります。そもそも通関とは、輸出入の際に税関に内容を申告し許可をもらうことで、この一連の作業を通関手続きと言います。
税関は日本国内9カ所にあり、それぞれの地域を所轄しています。通関手続きは、手続きが完了するまで一時的に荷物を保管する、保税倉庫がある地域を管轄する税関に対して行います。通関手続きは自分で行うことも、通関業者などに代行してもらうこともできます。通関業者とは、財務大臣の許可を得て輸出入の申告などを代理で行う専門業者です。
輸出と輸入それぞれの通関手続きの概要を見てみましょう。
輸出通関手続き
輸出通関手続きは、保税倉庫での保管中に完了させます。
輸出通関手続きに必要な書類
- 輸出申告書(自分で手続きする場合):税関のHPからダウンロードできます
- 委任状(通関業者を利用する場合):通関業者に手続きを委託する旨を税関に示す書類です
- 仕入れ書/Invoice I/V:決まったフォーマットはありませんが、輸出入者情報、品名・数量・価格などを記載した書類で、輸出する側が作成します
- 包装明細書/Packing List P/L:商品名と数量、重量、梱包後の重量、容積などを記載して梱包内容を説明します。必要に応じて写真やカタログも添付します。
- 船積み指示書/Shipping Instruction S/I(通関業者を利用する場合):荷送人、荷受人、船情報など)を記載します。
- 他法令の確認書類(特定の荷物について必要):植物や食品、医薬品などで必要になることがあります。
個人輸出で郵便物として荷物を海外に送る場合は、申告価格が20万円以下なら通関手続きは不要で、郵便局にある「税関票符」や「税関告知書」に必要事項を記入し、荷物に貼り付けて預けます。途中の税関検査で、輸出の許可が必要な品物があった場合は別途手続きを求められます。
20万円を超える場合は、郵便局に荷物を出す時に委任状を含む必要書類も合わせて提出します。日本郵便が通関手続きを行い、許可が出ると海外に発送されます。
輸入通関手続き
輸入通関手続きは、税関への申告のほかに、関税や消費税などの税金の申告も必要になります。
海外から送られてきた商品が日本へ到着すると、保税倉庫へと運ばれます。そこでの保管中に通関手続きと税金の支払いを完了させ輸入の許可を取ります。
輸入通関手続きに必要な書類
- 輸入申告書(自分で手続きする場合):税関のHPからダウンロードできます
- 委任状(通関業者を利用する場合):通関業者に手続きを委託する旨を税関に示す書類です
- 仕入れ書/Invoice I/V:決まったフォーマットはありませんが、輸出入者情報、品名・数量・価格などを記載した書類で、輸出する側が作成します
- 包装明細書/Packing List P/L:商品名と数量、重量、梱包後の重量、容積などを記載して梱包内容を説明します。必要に応じて写真やカタログも添付します。
- 船荷証券又は海上運送状/Bill of Lading B/L(航空貨物は航空貨物運送状):船会社(航空会社)が荷物を預かったことを証明します。
- 貨物到着通知/Arrival Notice A/N:海上貨物の場合、A/Nが運賃明細書の役割をはたします。航空貨物の場合は航空貨物運送状が運賃明細書も兼ねます。
- 保険料明細書/Insurance Policy:保険金額も課税価格に入るため、保険をかけた場合は提出が必要になります。
- 他法令の確認書類(特定の荷物について必要):植物や食品、医薬品などで必要になることがあります。
個人輸入で郵便物として荷物が日本に届いた場合は、課税価格や税金額によって受け取りまでの流れが変わります。
課税価格が20万円以下の場合
- 免税品・無税の場合:手続きは不要で、一般的な郵便物同様に直接配達されます。
- 税金合計額が1万円以下の場合:荷物は直接配達されますが、合わせて「国際郵便物課税通知書」が来るので、指示に従って税金を納付します。
- 税金合計額が1万円を超え30万円以下の場合:日本郵便から荷物の到着と税額の連絡が来るので、受け取り方法と納付方法を選択します。
- 税金合計額が30万円を超える場合:「国際郵便物課税通知書」が送付されるので、通知書を持参し指定郵便局へ行って納付書を交付してもらいます。税金を納付後、荷物を受け取ることができます。
課税価格が20万円を超える場合
荷物が日本に到着すると、通関手続きの案内文書が送られてくるので、必要書類をそろえて手続きをするか、日本郵便や通関業者に代行を依頼します。
FedexやDHLなど国際宅配便の場合は、宅配業者が通関手続きを代行してくれるため、とくに手続きは必要ありません。
郵便や国際宅配便ではない場合は一般貨物となるため、個人輸入であっても輸入通関手続きに則って申告し許可を得る必要があります。
国際物流を代行する会社
自社倉庫や提携倉庫のある国際フォワーダー(国際物流代行業者)を利用することで、輸入時のインボイス作成や輸送手配も行ってもらえるため、海外倉庫を利用するメリットが大きくなります。。フォワーダーごとに得意とする分野や輸送手段の選択肢、実績の多い地域などに違いがあるため、海外展開したい地域や商材、輸送コストなどが自社に合ったものを選ぶと良いでしょう。また、対応する事業規模などにも違いがあるため、個人事業主や小規模事業は少量からでも対応してもらえるフォワーダーを選びましょう。
まとめ
越境ECで販路を拡大したいと思ったときにハードルとなるのが物流です。海外倉庫を利用することで国外に拠点を持つことができ、輸出入に伴う荷物の流れを集約して効率的に輸送することが可能になります。
通関や輸送手配は個人でもできますが、海外倉庫を提供する会社の代行サービスやフォワーダーなどを利用することもできます。法令を遵守して安心して輸出入することができるので、海外倉庫を利用する際はそういったサービスや業者も合わせて検討しても良いでしょう。
海外倉庫についてよくある質問
国際物流フォワーダーとは?
国際物流フォワーダーとは、自身で輸送手段を持たずに、トラックや船舶などを利用して荷主の貨物を輸送するほかに、通関手続きや海外倉庫など国際物流に関わるさまざまなサービスを提供する業者です。