食べ残し、売れ残りや期限が近いなどさまざまな理由で、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されている。日本でも1年間に約522万トン(2019年度推計値)もの食料が捨てられており、これは東京ドーム4個分とほぼ同じ量だ。 *1
このような社会課題に取り組み「楽しいお買い物でみんなトクするソーシャルグッドマーケット」を提供している『Kuradashi』。社会性、環境性、経済性に優れた『Kuradashi』は自社ECサイトの構築・運用にカナダ発のマルチチャネルコマースプラットフォーム「Shopify Plus」を導入した。Shopify Plusの特徴である、アプリを活用した手軽な機能追加により、運用面でのブラッシュアップを日々重ねる一方で、最近では定期通販を導入し、売上拡大に成功した。
<目次>
1. 生産者も消費者も喜ぶソーシャルグッドマーケット『Kuradashi』はどのように始まったか
2. Shopify Plus移行への決め手は「サーバーの安定性」と「カスタマイズによる機能拡張」
3. 「Kuradashi」の課題「売上の安定化」を定期通販で解決
4. ユーザー目線で作られたShopify の定期通販(サブスクリプション)
5. Kuradashiの今後について
1. 生産者も消費者も喜ぶソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」はどのように始まったか
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Shopify Experts 株式会社ハックルベリー代表取締役 安藤祐輔(以下、安藤氏):最初にKuradashiについてお話をお聞きします。なぜフードロスの問題に着目してECを始められたのでしょうか?
株式会社クラダシ 取締役執行役員CEO 河村 晃平氏(以下、河村氏):弊社は「世の中にある、まだ食べられるにも関わらず捨てられている食品などを再流通させることで、フードロスの削減に寄与しよう」と、いうことをコンセプトにした会社です。
このような考えに至った背景には、代表取締役社長の関藤 竜也が阪神淡路大震災の時に被災した経験があります。
当時、関藤は救援物資を背負って知り合いの家を訪問したりしましたが、1人の力では救える人に限りがあると無力感を覚え、多くの人を助けられる持続可能な仕組み作りが必要だ、ということを身に染みて感じました。
その後、関藤は商社に勤務しますが、商社に勤める中で、中国で大量生産され大量に捨てられる食品などを目の当たりにし、阪神淡路大震災で感じた「持続可能な仕組みづくり」と、「フードロス削減」を両立するコンセプトのもとに出来たサービスがKuradashiです。
安藤氏:創業が2014年ということで、まだSDGsなども無かった時代にフードロス削減のサービスを作るのは、とても苦労されたのではないでしょうか?
河村氏:とても苦労しました。仰る通り、「フードロス」という言葉すら無かった時代ですので、メーカーさん達の理解を得るのにとても苦労しました。
安藤氏:そんな中、どのようにメーカーさんの信頼を得ていったのですか?
河村氏:メーカーさんの中でもフードロスを削減したいという想いは昔からあったのですが、単純に割引して売り出すのはブランドイメージ的にしたくないという状況でした。
そこで、ご提案したのがKuradashi独自の社会性、環境性、経済性に優れた「みんなトクする」ビジネスモデルです。
Kuradashiでは、ユーザーさんが商品を購入した際、その売上金の一部が社会貢献活動団体に寄付されます。ただ割引して販売するのではなく、フードロスを削減しながら、社会貢献にも寄与できるというビジネスモデルに賛同してくださるメーカーさんが徐々に増え、現在に至ります。
2. Shopify Plus移行の決め手は「サーバーの安定性」と「カスタマイズによる機能拡張」
安藤氏:ECを展開するうえで、他カートを利用されていたかと思うのですが、なぜShopify Plusに移行しようと思ったのかお聞かせください。
河村氏:Shopify Plusは実は3社目のカートです。最初に利用していたカートはECについて何も分からずに選んでしまいました。そこで2社目に移行したのですが、サーバーダウンが頻繁に起こってしまうのが問題となっていました。テレビ出演も多くなっていた時でしたので、サーバーダウンによる機会損失を削減しようとShopify Plusへの移行を検討しました。その上で、決め手となったのは「サーバーの安定性」と「カスタマイズによる機能拡張」でしたね。
安藤氏:私も、その2点はShopify Plusの強みだと思います。サイトリニューアルして半年ほど経ったかと思いますが、実際に利用してみてどうでしょうか。
河村氏:一切サーバーが落ちず安心感がありますね。ちなみに11月に一時間の特番でテレビ出演させていただいたのですが、注文が殺到してもサーバーが落ちることはありませんでした。以前2社目のカートを利用していた時に、朝の情報番組に10分ほどだけ出演したことがあったのですが、10分の出演だけでも1日中サーバーが落ちてしまいました。それに比べるとShopify Plusの安定性はレベルが違います。
3. フードロスECの課題「売上の安定化」を定期通販で解決
安藤氏:Kuradashiは、そもそも通常の販売だけでもかなりの流通量がありますが、新たにサブスク商材を提供され始めた理由を教えてください。
河村氏:定期通販を開始した理由は、売り上げの安定化を図るためでした。
そもそもフードロス商品は、賞味期限が近いものや、季節限定のパッケージの商品などの、本来は食べることができたはずだけど廃棄されてしまう商品です。
このように、「品質に問題はないけれど、廃棄されてしまう商品」が、月にどのくらい出るかというのは、生産者さんも私共も正確に予測することはできません。そのため、フードロス商品を扱うというのはとても難しいのです。
そのため「提供できる商品があるのか」や、「ユーザーが安定的に購入してくれるか」という不安がありました。そこで、安定した収益を得られる基盤として、定期通販を導入しました。
具体的には、フードロス商品を詰め合わせた定期便を作りました。詰め合わせの定期便は特定の商品の在庫を確保しなくても、別の商品で穴埋めすることが出来るので、仕入の不安定さを解消することができます。同時に、ユーザーさんにとっても必ず商品が届くモデルを構築できたと思います。
定期通販を導入したことにより、収益も安定し売り上げも向上したので、定期通販の導入は成功だったと思います。
4. ユーザー目線で作られたShopify Plusの定期通販(サブスク)
安藤氏:国内カートの中では、Shopify Plusの定期通販(サブスク)の認知度はあまり高くないと思うのですが、実際にサブスクを利用してみていかがですか?
河村氏:サブスクは事業者側の「売上を上げるための施策」として導入する側面もあるのですが、どちらかというと顧客の購入体験をよりシンプルに、楽に出来る点が重要だと思います。
我々が利用している『定期購買』アプリは、基本的な機能に抜け漏れがなく使いやすいですし、スキップの機能など、かゆいところに手が届く機能も豊富で、ユーザーからの満足度は高いです。
お客様の中には、「定期購入しているものが余ってしまう」という方もいらっしゃいますから、スキップ機能もある『定期購買』には助かっています。
安藤氏:ありがとうございます。定期購買アプリは、リリースから約二年がたちますが、マーチャントの皆様を通して、お客様の「サブスク体験」を最大化できるよう、開発を重ねてきました。
今後、「チェックアウトページのカスタマイズ」などShopify Plusならではの機能を活用した、「ShopifyだからこそできるEC体験」の提供も視野に入れ、マーチャント様にも、お客様にも最高のサブスク体験をお届けしていきます。
5. Shopify Plusを活用して、フードロス問題の解決に挑み続けたい
安藤氏:Kuradashiの今後についてどのように考えていますか。
河村氏:フードロスの市場規模は9000億円ほどだと言われているので、現状に満足せずまだまだシェアを伸ばしていこうと思っています。また、ユーザーの動向を見ていると、お酒やお米のように定期的に購入してくれる商品は確かに存在していているので、サブスク商品の拡張、拡大はしていこうと考えています。そして、「定期購買」アプリのようにShopifyのアプリを用いた機能拡張を通して、更なる売り上げの向上を目指していきたいと思います。
【注釈】
- *1 FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書参考
- *2 フードロスとは、売れ残りや食べ残し、期限切れ食品など、本来は食べることができたはずの食品が廃棄されること。
【関連リンク】
- クラダシ:https://corp.kuradashi.jp/
- ハックルベリー:https://huckleberry-inc.com/
- その他のShopify Plus事例 : https://www.shopify.com/jp/blog/topics/shopify-plus