起業したりECサイトを立ち上げたりするときに、独自のURLやメールアドレスを取得する人も多いでしょう。そういった独自のドメインとともに重要となるのが、DNSとその設定です。
ここでは、DNSとは何か、役割や仕組み、設定方法などを簡単にわかりやすく解説します。
目次
DNSとは
DNSとはDomain Name Systemの略で、ウェブサイトなどの場所を示すドメインと、実際に割り振られている識別番号であるIPアドレス(123.456.78.9のような4つの数字の組み合わせ)を紐付けるシステムです。
DNSがあることで、覚えにくいIPアドレスを使わずにドメインでウェブサイトなどにアクセスすることができます。地図で例えると、緯度経度の数値がIPアドレス、住所がドメインのようなイメージです。DNSがなければ緯度経度の数字を覚えて行きたい場所を探さなくてはならず、とても煩雑なことがわかるでしょう。
DNSを普段のウェブサイト検索やメール送受信の際に意識することはほとんどないかもしれませんが、現代のインターネットでは不可欠なシステムです。
DNSサーバーの種類
DNSサーバーの種類と役割について詳しく見てみましょう。
キャッシュDNSサーバー
キャッシュDNSサーバー(DNSキャッシュサーバー)は、デバイスと直接やりとりをするDNSサーバーです。ユーザーが入力したドメイン名をIPアドレスに変換しデバイスに返信する役割があります。
具体的には、ユーザーがドメイン名を入力するとキャッシュDNSサーバーがドメインに該当するIPアドレスを探します。この際、キャッシュDNSサーバー内に情報があればそのままデバイスに返信し、情報がない場合は権威DNSサーバーに問い合わせをして該当するドメインを管理するDNSサーバーを見つけます。
ユーザーはプロバイダ(ISP:インターネットサービスプロバイダ)が提供するキャッシュDNSサーバーを利用します。
権威DNSサーバー・ルートDNSサーバー
権威DNSサーバーは、キャッシュDNSサーバーから問い合わせがあったドメインについて情報を返信するDNSサーバーです。権威DNSサーバーはいくつかの階層にわけられていて、最上位にあるのがルートDNSサーバー(DNSルートサーバー)です。
ルートサーバーは世界に13カ所あり、トップレベルドメイン(.comや.jpなど)を管理するDNSサーバーの情報を保持しています。その下にはセカンドレベルドメイン(.co.jpの.coの部分など)を管理するDNSサーバー、さらにその下位層を管理するサーバーが階層状に存在しています。
キャッシュDNSサーバーは、ルートサーバーにトップレベルドメイン(TLD)を管理するDNSサーバーを問い合わせ、次にそのDNSサーバーにセカンドレベルドメイン(SLD)を管理するDNSサーバーを問い合わせるというように、順にDNSサーバーをしぼり込み、最終的にユーザーが入力したドメインを管理するDNSサーバーを見つけ出します。
上位層のサーバーになるほど管理する範囲が広くなるため、キャッシュDNSサーバーからの問い合わせ全てに対応するのは、処理スピードの低下やサーバーへの負荷増などを生じさせ非効率です。そのため、キャッシュDNSサーバーも一定期間情報を保持し、権威DNSサーバーへその都度問い合わせをしなくてもIPアドレスを返信できるようになっています。
DNSサーバーの仕組み(名前解決)
DNSサーバーはネームサーバーとも呼ばれ、ユーザーがドメイン名を入力した際にそれと紐付くIPアドレスを探し、変換します。これによって、ユーザーはドメイン名だけでウェブサイトなどにアクセスできるのです。
一連の仕組みを流れに沿って解説します。
このようにドメイン名とIPアドレスを変換することを名前解決と呼びます。権威DNSサーバーを経由せず、キャッシュDNSサーバーが持つ情報だけで名前解決を行うこともあります。
DNSサーバーの設定方法
DNSサーバーの設定を行うためには、DNSレコードを設定する必要があります。DNSレコードとは、ゾーンファイルと呼ばれる情報ファイルに記載されたひとつひとつの情報のことです。一行につきひとつの情報が記載されています。
DNSサーバーはゾーンファイルに記載されたDNSレコードによって、ドメインに対応するIPアドレスやそのほかの情報を管理して見つけ出します。
DNSサーバーを設定する前に、主なDNSレコードの種類を確認しておきましょう。
- Aレコード:ドメイン名に対応するIPv4のIPアドレスが書かれた行
- CNAMEレコード:ドメイン名の別名が書かれた行
- MXレコード:そのドメインを持つメールの配送先メールサーバーが書かれた行
- TXTレコード:コメントなどが書かれた行
- AAAAレコード:ドメイン名に対応するIPv6のIPアドレスが書かれた行
- SRVレコード:ドメイン名に対応する任意のサービスの場所が書かれた行
DNSサーバーの一般的な設定方法は次のような流れになります。
住所となるドメインを取得します。
ドメインを提供する事業者のコントロールパネルなどから、DNSレコード設定を行います。新規取得ドメインや他社で取得したドメインなど条件によって設定方法が異なる場合があり、各社のマニュアルに従って設定します。
ドメインを取得した事業者と違うレンタルサーバーを利用している場合は、ドメイン事業者側でもレンタルサーバー側のDNSサーバーを登録する必要があります。
例えば、ムームードメインでドメインを取得し、Shopifyを利用してサイト構築を行っている場合、Shopifyのサーバーにドメインが紐付くようにムームードメインのDNS設定を行う必要があります。
ムームードメインのDNS設定でShopifyのAレコードとCNAMEレコードを登録し、Shopifyの設定でドメインを接続することで、ムームードメインで取得したドメインとShopifyサーバーのIPアドレスが紐付きます。
DNS設定の確認方法
DNS設定ができたら確認をします。しかし、DNS設定を行ってもすぐに反映されないことがあり、単にドメインを入力してサイトが表示されるかを確認するだけでは、正しい結果を得られない可能性があります。
これは、キャッシュDNSサーバーが24時間から72時間ほど情報を一時保管し、それを参照してドメインとIPアドレスを紐付けしているからです。
そのため、DNS設定を確認するためには、72時間以上時間をあけてから確認するか、コマンドプロンプト(Windows)を利用して確認を行います。
コマンドプロンプトを利用した確認方法は以下の通りです。
スタートメニュー→すべてのアプリ→Windowsツール→コマンドプロンプト
または
スタートメニュー→コマンドプロンプトで検索→アプリを開く
表示されたコマンドプロンプトにある「ユーザー名>」の後に、「nslookup+ドメイン名」を入力します。
例:ドメインが www.abc.net の場合
nslookup www.abc.net (nslookup 半角スペース ドメイン名)
nslookup+ドメイン名を入力したらエンターキーで実行します。
サーバー名やアドレスが表示されます。「Address:」の後が設定したIPアドレスになっているかを確認します。
設定したIPアドレスになっていれば、DNS設定は正しく行われています。
まとめ
DNSは現代のインターネットで重要な役割をもつシステムです。DNSがなければ、ウェブサイトなどへアクセスするのにIPアドレスを利用しなくてはならず、とても不便です。普段のインターネット利用で意識することは少ないかもしれませんが、独自ドメインの取得を考えている事業主などであれば、DNSについて理解しておくことはとても大切です。独自ドメインを取得してビジネスのサイト開設やブランディングに生かすのであれば、DNS設定をしっかりと行い、ウェブサイト閲覧やメールの送受信に影響が出ないようにしましょう。
DNSについてよくある質問
DNSレコードとは?
DNSレコードとは、DNSサーバーが情報を管理するゾーンファイルに記された個々の情報です。一行につきひとつの情報が記載され、IPアドレスについて書かれたAレコードやAAAAレコード、メールサーバーについて書かれたMXレコードなどいくつかの種類があります。
DNSの役割は?
DNSの役割は、ユーザーにとって使いやすいドメイン名とシステム上利用されるIPアドレスを紐付けし、ドメイン名からでもウェブサイトなどにアクセスできるようにすることです。
DNSを行うサーバーには2種類あり、情報を問い合わせてユーザーに返信する役割を持つキャッシュDNSサーバーと、情報を管理してキャッシュDNSサーバーからの問い合わせに返答する役割を持つ権威DNSサーバーがあります。
DNSの名前解決とは?
DNSの名前解決とは、対応するドメイン名とIPアドレスを検索し見つけることです。ユーザーがドメイン名で検索してウェブサイトが表示されるのは、DNSサーバーが名前解決を行い対応するIPアドレスを返信しているからです。