在庫とは何でしょうか。よく耳にする言葉ですが、理解しているようで正しくは理解できていないかもしれません。
今回は、在庫の意味や重要性、ビジネスに生かすための管理方法を解説します。
目次
在庫とは
在庫とは、企業が一時的に保管している商品や製品、原材料などのことです。棚卸資産と呼ばれることもあり、企業の資産として定義されます。わかりやすく言うと、企業が将来販売するために保管しているものです。
在庫は、販売や生産をスムーズに進めるためには適度な量が保たれていなければならず、過不足があると納品の遅れや機会損失、商品価値や品質の低下を引き起こしてしまいます。
在庫の種類
在庫の種類は数多くありますが、ここでは勘定項目をもとに3つに分類します。
製品・商品
製造業では完成した製品、小売業では商品で、販売されるのを待っている状態のものです。
例えば、アパレルであればバックヤードに保管されている服などが商品在庫です。家具メーカーであれば、完成した家具が製品在庫になります。
仕掛品(しかかりひん)・半製品
仕掛品とは、製造途中のもので、そのままでは外部に販売できない状態のものです。
半製品とは、製造途中のもので、一定の加工が完了しているためそのままでも外部へ販売できるものです。例えば、液晶テレビのディスプレイパネルなどはこれにあたります。
部品・原材料
ネジやナットなど、製造に使われる製品や、原料・材料として保管されているものです。
在庫の重要性
在庫は顧客へのすばやい納品や生産工程の円滑化につながります。商品在庫がなければ売り上げをあげることができず、部品・製品在庫がなければ物品を製造することができません。製品・商品在庫や部品・原材料在庫はビジネスの生命線とも言えるでしょう。
かといって、在庫が多ければ多いほど良いというわけではありません。過剰な在庫は商品価値を下げてしまったり、使用期限などがあるものであれば品質の低下にもつながったりしてしまいます。
また、会計の視点からも在庫は重要な意味を持ちます。在庫は棚卸資産であるため、貸借対照表で資産として扱われます。在庫が増えると現金の割合が減ってしまい、キャッシュフローが悪化(企業の運転資金が減少)してしまいます。
在庫はビジネスに直接影響を及ぼす重要な要素であるため、在庫管理をしっかりと行って適量を維持することが求められます。
多くの在庫を持つ利点
顧客満足度の向上
在庫があることで、顧客が商品を購入したいと思ったときにすぐに提供できるため、欠品で購入できなかったり、再入荷まで待たなければならなかったりということがなく、顧客満足度のアップにつながります。
また、仕掛品や半製品の在庫があれば、初期不良などで交換が必要になった時にも迅速に対応できるため、顧客の購買体験や満足度が下がってしまうことを防ぐことも可能です。
コスト削減
仕入れ数を多くしたりまとめたりすることで単価を安くすることができるため、在庫としてまとまった量を持つことは仕入れコストの削減になります。輸送や仕入れの手続きも一度になるため、人件費や入荷に伴う事務作業の手間なども削減できます。
生産性の向上
製造業においては、部品・原材料在庫や仕掛品・半製品在庫を持つことは生産性の向上につながります。原材料や部品が十分にあることで材料不足による生産ストップを防ぐことができ、生産する数量が増えたときにも部品や材料の調達を待たずにすばやく対応できます。仕掛品や半製品があればスピーディーに完成品を作ることもできます。
多すぎる在庫を持つ弊害
品質や商品価値の低下
保管する期間が長い滞留在庫や不動在庫になると、品質や商品価値が低下してしまう可能性があります。特に使用期限や賞味期限があるものは、期限が切れてしまえば商品にはならず、期限が近すぎても顧客からクレームが出たり、顧客満足度が下がったりしてしまいます。また、仕様変更や法改正、トレンドの変化などによって在庫品の商品価値が低下してしまうこともあります。
製造においても、原材料が経年劣化するものである場合は、過剰な原材料在庫は品質低下につながってしまいます。
保管コストの発生
在庫を保管するために倉庫を借りたり、在庫管理のために人員を配置したりすると、余分な費用が発生します。また、商品によっては冷蔵倉庫や湿度管理ができる倉庫などを利用する必要があり、保管コストがより高くなるかもしれません。
キャッシュフローの悪化
在庫はまだ売れていないものであるため、資産ではあるものの利益が発生しません。必要以上に在庫がある過剰在庫の状態や仕入れただけで動きのない停滞在庫になると現金が少なくなってしまい、キャッシュフローが悪化してしまいます。
税金の増加
在庫の時点では、仕入れのための支払いが発生しただけで現金にはなっていません。しかし、会計上は資産として考えられるため、税金の対象となってしまいます。
在庫は保管中の劣化や流行が終わったことによる価値の低下などで減価償却されるものもあるため、評価損として計上することで税金を抑えることができます。
在庫を正しく管理するためには
在庫を正しく管理するためには、現状分析と適切な発注、そして正確な在庫管理を行うことが必要です。
現状分析する
まずは在庫状況などの現状を把握します。いくつかある分析方法のなかで販売状況を調べる方法は、主に以下の2つです。
需要を予測する
過去の販売実績や現在のトレンド、季節、販促活動などから顧客の需要を予測します。
適正在庫を決めて発注する
現状を分析し、売れ筋商品や在庫サイクルがわかったら、分析結果や需要の見込みをもとに適正在庫を設定します。適正在庫とは、欠品も出さず過剰在庫にもならないような、需要に合った在庫です。
そして、この適正在庫をもとに発注をかけますが、このときにも在庫サイクルなどをもとに発注方式を選ぶと良いでしょう。代表的な発注方式は2つあります。
入出庫などの在庫管理をする
入荷・出庫・棚卸・返品などを正確に管理します。数え間違いや入力ミスなどの人的ミスが発生しやすい業務であるため、在庫管理システムのようなデータ入力ができるシステムを利用するのも良いでしょう。
まとめ
在庫は適正に管理することで企業にとって有益なものになります。過剰在庫などで資産の損失につながったりせず将来の利益を生み出すためにも、在庫状況をよく知り過不足のない在庫数を維持することが大切です。
在庫についてよくある質問
安全在庫とは?
安全在庫とは、需要が増加したときや再入荷までの期間などに欠品が発生しないように蓄えておく必要最小限の在庫です。安全在庫があることで、機会損失を防ぐことができます。