ネットショップは、今や私達の生活に欠かせない存在になっています。しかし、「自宅でショッピングしたいけど、サイズ感がわからず不安」「実際に試着しないと自分に似合うかどうかわからない」など、購入をためらう消費者がいるのも事実です。そういった消費者にも安心してECサイトで買い物をしてもらうため、今、注目を浴びているのがバーチャル試着(バーチャルフィッティング)です。
今回は、2024年度の消費トレンドでも注目されているバーチャル試着について解説し、さらにバーチャル試着アプリを利用した場合のECサイトのメリット、バーチャル試着アプリ導入の成功例やShopifyのバーチャル試着アプリなどを紹介します。これからネットショップを開業する方、アパレルブランドの立ち上げを検討している方はぜひ参考にしてください。
バーチャル試着(バーチャルフィッティング)とは
バーチャル試着とは、パソコンやスマートフォンなどのデバイス上で洋服などを試着する仕組み・サービスです。服だけでなくアクセサリーやメガネなどのファッション雑貨のほか、コスメを試すことができるものもあります。
バーチャル試着はARという「拡張現実」の技術を活用します。顧客はまずアプリなどで自分の身体や部屋などをカメラで撮影し、試着したい商品、サイズ感を確かめたい商品の3Dデータを画像に重ねます。これにより、実際に試着したり部屋に置いたりしているかのように、さまざまな角度から商品イメージを確認できます。
このように、実物を手に取って見ることができないのがネックであったECサイトで、顧客がオンライン上で試着したり商品のサイズ感を確かめたりできることから、ARを導入するネットショップが増えてきています。
ECサイトにバーチャル試着アプリを導入するメリット
返品率を下げる
バーチャル試着アプリを導入する企業にとって最も大きなメリットは、商品の返品率を削減することができるということです。米Snapと調査会社Foresight Factoryによる共同調査「オンラインショッピングに関するグローバルレポート」によると、バーチャル試着アプリを導入した結果、返品率は最大で約42%削減しました。AR試着のできるバーチャル試着アプリを利用することで、ECサイトの高い返品率を下げることができます。
機会損失を防ぐ
バーチャル試着ができると、店舗に行く時間がなく試着ができないことによる売り上げの機会損失を防ぐことができます。家具などの場合は店舗で実物のサイズ感を確認しなくても自分の部屋に置いた様子を知ることができるため、購入を決断しやすくなります。
人件費やスペースの削減
バーチャル試着では実店舗のようにスタッフが試着に対応する必要がありません。さらに、バーチャル試着を利用することで、実店舗で必須となる試着スペースも不要になるので、人件費やスペースの削減につながります。バーチャル試着によって各ユーザーに合った対応を提供することが可能となり、パーソナライズされたおすすめ商品や関連商品を紹介することで、購買単価の向上も期待できます。
バーチャル試着アプリの成功例
Amazon
Amazonでは、さまざまなバーチャル試着アプリを導入しており、その中で特に注目を集めているのが「バーチャルメイク」です。仏化粧品会社ロレアルグループが提供するModiFace(モディフェイス)のAI(人工知能)とARを活用して、バーチャルにメイクアップアイテムを試せます。自分の顔写真でリップやアイシャドウなどを試し、気に入ればそのまま購入することができる利便性が特徴です。店頭でスタッフにアイテムの試着を依頼する必要もなく、気になる色を端から試すこともできるため、気に入った商品が見つかりやすく、購入につながりやすくなっています。
Zoff
メガネブランドZoffは、最先端のAR/仮想ミラープラットフォームを開発するAuglioと、オンラインでメガネをバーチャル試着できるサービス「イージー ゾフバーチャルフィッティング」を共同開発し、2024年3月15日よりZoff公式オンラインストアでの導入を開始しました。「イージー ゾフバーチャルフィッティング」では顔のサイズを計測し、その顔サイズデータをもとに実寸に近い形のメガネやサングラスの試着ができます。また、好みのフレームやレンズカラーも選択可能なので、自分好みにカスタムマイズされたアイウェアの試着もできます。
SHOPLIST
ファストファッションブランド通販サイトの SHOPLISTでは、高精度身体採寸テクノロジーの「bodygram」を利用したバーチャル試着アプリを世界で初めて導入しています。4つの情報(身長・体重・性別・年齢)と2枚の全身写真で高精度な採寸が可能で、採寸データを利用したバーチャル試着のほか、最適なサイズや商品を表示します。そのため、「サイズが合わない」「自分に合ったサイズがわからない」という顧客を減らし、返品の削減や売り上げの向上につなげています。
洋服の青山
洋服の青山は、2023年9月27日より公式オンラインストアでAIとAR技術を活用したバーチャル試着サービス開始しました。専用アプリをインストールする必要がなく、スマホで気軽にリアルな試着を体験できるのが特徴です。対象商品ページの「バーチャル試着」ボタンをクリックし、画面の指示に従って撮影、身長・ウエスト・ヒップを入力するだけでバーチャル試着ができます。全身を画面にきちんと入れ込むことで、体の動きに合わせた服の自然な動きも確認することができ、実際に試着している感覚を味わえます。
Shopifyのバーチャル試着アプリ
YouCamバーチャルトライ
YouCamバーチャルトライは最新のバーチャル試着技術を導入し、顧客にコスメやメガネのバーチャル試着を提供します。最大10個のコスメとメガネ商品のカテゴリーに対応し、あらゆるデバイスから商品をバーチャル試着できるようにします。正確なフェイスマッピング技術で顧客の顔に完璧に適用できるほか、ビフォーアフターを瞬時に比較できるのが特徴です。
Poplar AR/3D product viewer
Poplar AR/3D product viewerはEコマース用3DおよびAR埋め込みバーチャル試着ユニットアプリです。家具からアクセサリーまでさまざまな商品の写真を3Dモデルに変換できます。
Senswear
Senswearはバーチャルで靴を試し履きできるサービスで、360度ビューが特徴です。顧客は靴をあらゆる角度から詳細に見ることができ、バーチャルに靴を試して気に入ったら、そのままワンクリックで商品をカートに追加できます。
まとめ
バーチャル試着はオンラインで試着ができるサービスで、洋服やメガネ、コスメなどから家具まで幅広く活用されています。ECサイトの普及は目覚ましいものがありますが、消費者の中には、実物を手にすることのできないECサイトでの買い物にまだ苦手意識がある人もいます。バーチャル試着アプリやAR試着アプリを取り入れることで、顧客は着用感やサイズ感を確認できるようになり、不安要素が取り除かれるため、売り上げのアップや返品率の削減につながります。
Shopifyにはさまざまなバーチャル試着・AR試着のアプリがあるため、用途に合わせてアプリを選びインストールするだけで試着サービスを開始することができます。アプリ以外にも、size.linkという商品のサイズ感を簡単に確認できる無料ツールも提供しています。顧客の購買体験を高め売り上げにつなげたい事業者の方は利用を検討してみてはいかがでしょうか。
よくある質問
バーチャルフィッティングとは?
バーチャルフィッティングとは、パソコンやスマートフォンなどのデバイス上で洋服などを試着する仕組み・サービスです。服だけでなくアクセサリーやメガネなどのファッション雑貨のほか、コスメを試すことができるものもあります。
AR 技術とは?
AR技術とは、現実世界にデジタル情報を組み合わせ、実体験のようなリアルな体験を提供する技術です。その特徴を活かし、近年では試着アプリなどに採用されています。AR技術を利用すると、写真や動画よりもよりイメージが伝わりやすくなるなどの利点があります。
文:Chieko Hiroi