最近ではインターネット上で手軽にショッピングを楽しむことが当たり前となり、自分自身でもネットショップを開設してEC事業を始める人が増えています。
Shopifyなどのネットショップ開設サービスを利用すれば、初心者でも自分でショップを立ち上げてビジネスを始めるのは難しくありません。
この記事では、ネットショップを開業するための具体的なステップや費用、立ち上げの際に気を付けるべきポイントを紹介します。
ネットショップ開業までの10個のステップ
1. ターゲット顧客を決める
Eコマースを始める前に、まずは商品を販売するターゲット顧客を決めることが非常に重要です。ペルソナを設定するなどしてターゲット顧客を明確にすることで、商品を必要としている消費者にリーチしたり、興味を持ちそうな潜在顧客に効果的に宣伝したりすることができ、コンバージョン率が上がり、売り上げを伸ばすことができます。
ペルソナを設定する際に考えるべき主なカテゴリーは以下の通りです。
- 顧客の特徴:年齢、性別、職業、学歴、収入など
- 販売地域:商習慣や文化などの地理的な特徴
- 興味関心:顧客のライフスタイル、性格、考え方など
ネットショップを開業する段階で何を売るか決まっていない場合も、ターゲット顧客を決め市場を絞り込むことで、効率的に売れやすい商品をサプライヤーから仕入れることができます。
2. ビジネスプランや商品を決める
ターゲット顧客を決めたら、ビジネスプランや商品を考えていきましょう。初心者でも、ネットショップに合ったビジネスプランや商品は以下のような方法で探すことができます。
- 趣味をお金にする
- ターゲット顧客のニッチ市場を調べる
- Googleトレンドなどでトレンドを確認する
- 他社ECサイトで何が流行っているかを見る
3. プラットフォームを決める
ネットショップを開業する際には、使える機能がそれぞれ異なったり顧客にとっての利便性に違いがあったりするため、どのプラットフォームを使うかが大きなポイントです。在庫管理や受注管理、マーケティングツールなどネットショップ運営で重要な機能が利用できるプラットフォームを使うことで、効率的にネットショップの運営ができます。
Eコマースのプラットフォームを選ぶポイントには以下のようなものがあります。
- 使いやすさ:直感的に操作でき、簡単にオンラインストアを作成できるものが望ましいです。必要な機能がアプリなどで追加しやすいプラットフォームを選ぶことも重要です。
- カスタマーサポートの利用しやすさ:ECサイト構築時から運営時までサポートが充実しているプラットフォームを探しましょう。
- 決済方法が充実しているかどうか:売り上げを伸ばすためには、顧客のニーズに合った決済方法が利用できるかどうかが重要です。また、顧客にとって無駄なプロセスがなくチェックアウトしやすいプラットフォームを選ぶようにしましょう。
- ウェブホスティングを提供しているかどうか:ネットショップを開業するには、レンタルサーバーを別途契約する必要があることが多いですが、プラットフォームによってはデータを保管するウェブホスティングを提供しているものもあります。
ネットショップ開業時に必要な機能だけではなく、ビジネスが成長しても管理しやすく、規模やニーズに合わせて機能が追加できるプラットフォームを選択しましょう。
4. ブランドを構築する
使用するプラットフォームが決まったら、ブランド構築を行います。以下の要素を検討し、ウェブサイトのデザインに反映させましょう。
ブランドミッション
ロゴやカラーパレットのような視覚的なデザインをする前に、ブランドが何のために存在するのか、ブランドミッション、USP(Unique Selling Proposition:独自の強み)、ブランドプロミス(ブランドが顧客に対して約束する品質や機能、価値)を決めましょう。そこからブランドの雰囲気やデザインを決めていくことで統一性を出すことができます。
屋号
屋号やショップ名を決めます。自分の名前や造語、商品を説明するものなど、ブランドに合ったものを考えます。Shopifyの無料ドメイン名ジェネレーターやNamechk(英語)のようなツールを使って、考えた屋号がSNSやドメインとして利用可能かどうかも確認しましょう。
ロゴ
ブランドミッション、ブランドの雰囲気などからブランドを表現できるロゴを作成しましょう。作成にあたって、ロゴを通して何を表現したいのかを明確にしておくとスムーズに作成が進むでしょう。Hatchfulなどのツールを使うと初心者でも簡単に作成することができます。
5. ビジネスの形態を決める
個人事業主としてビジネスを行うのか、法人化するのか、ビジネスの形態を決定します。
法人化する場合は、会社の形態をどのようにするか決定します。会社の形態には株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つがあります。最も多いのは株式を発行して資金を集める株式会社で、出資者と経営者が異なるのが特徴です。合同会社は出資者と会社の経営者が同一であるのが特徴で、株式会社に比べ設立費用も抑えることができます。
法人化には以下のようなメリットがあります。
- 法人向けの制度を利用した節税
- 退職金制度の活用
- 赤字の繰り越し
- 社会的信頼の確保
法人化にもメリットはありますが、初心者やサイドビジネスとしてネットショップを開業する場合は、開業資金や手続きが比較的少なく済む個人事業主としてスタートするのがおすすめです。
個人事業主としてビジネスを行う場合は、事業を始める前に開業届を提出しましょう。開業届は、個人事業主がビジネスを始める際に税務署に届け出る書類です。提出しなくても罰則はありませんが、節税効果のある青色申告や屋号名義での銀行口座開設などができるようになります。
特に青色申告は、所得税の計算時に最大65万円の控除が受けられ、大きな節税ができるため、忘れずに提出しましょう(青色申告の提出期限:開業日から2ヵ月以内)。なお、副業でネットショップから収益を得ている場合は青色申告の対象とはなりません。
開業届の提出方法は下記のとおりです。
開業届を取得:開業届は最寄りの税務署の窓口で受け取るか、または国税庁のホームページより「個人事業の開業・廃業等届け出書」をダウンロードできます。
必要事項の入力:以下のような必要事項を正確に入力しましょう。
- 納税地の税務署名、開業届の提出日
- 納税地の住所
- 氏名・生年月日
- マイナンバー
- 職業
- 屋号(決まっていれば)
- 事業内容
- 青色申告提出の有無 など
所轄の税務署へ提出:開業届の提出方法は以下の3つです。
- 所轄の税務署窓口へ直接持参する
- 所轄の税務署窓口へ郵送する
- e-Taxを利用してオンラインで提出する
6. ウェブサイトを作成する
販売する商品やプラットフォームが決まったら、実際にネットショップを作成していきます。
商品ページの作成
顧客が見る商品ページを作成します。SEOも意識した商品説明、商品画像などを追加していきます。商品画像は魅力がしっかり伝わるように、高品質なものを準備しましょう。商品の撮影はスマートフォンなどで物撮りすることも可能です。撮影した画像は画像編集ソフトで加工することで、より商品の魅力が伝わりやすくなります。
商品ページ以外のページ作成
配送ポリシーが書かれたページやAboutページなど、商品ページ以外のページもネットショップには重要です。これらのページは、企業の想いを伝えて顧客と信頼を築いたり、顧客とコミュニケーションをとったりするのに役立ちます。具体的には以下のようなページの作成を検討しましょう。
- Aboutページ
- 問い合わせ
- FAQ
- サイトポリシー
- 会員登録
- 特定商取引法に基づく表記
配送の設定
梱包費用や委託する運送会社のコストなどを考慮し、配送料や配送方法などを設定しましょう。送料無料、一律料金、実店舗での受け取りなど送料に関するキャンペーンやオプションを導入することで顧客の利便性を上げ、購入機会を増やすこともできます。
全体のデザイン調整
商品登録し、その他の関連ページを作成してウェブサイト全体の下地が完成したら、全体のデザインを調整していきましょう。Shopifyテーマではそれぞれのブランドに合う多種多様なテーマがそろっています。ストア規模、商品数、商品ジャンルに加えて、テーマで表現できるデザイン、ナビゲーションメニュー、購入完了までの導線などから判断して適切なテーマを選ぶことが大切です。
準備中ページの作成
ウェブサイトの作成中、サイト準備ページを作成し公開しておくことも検討しましょう。実際のネットショップ公開に先駆けて準備中ページを公開しておくことで、ターゲット顧客の期待感を高めたり、認知度を上げておいたりすることができます。また、準備中ページに適切なキーワードやメタタグとよばれる記述を含めることで、新規ウェブサイトが検索エンジンのデータベースに保存されるインデックス登録のプロセスを先に進めることができるため、SEO対策を効率的に行うことができます。
7. 決済方法を決める
顧客側の支払い方法とオーナーとしての支払い方法を決定しましょう。Shopifyペイメントのように決済ゲートウェイと決済代行サービスが一体化したものもあります。決済代行サービスを利用することで、一つの契約でさまざまな決済方法に対応できるようになります。決済方法や代行サービスを決める際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 顧客の希望する決済方法の選択:ターゲット顧客が好む支払い方法を提供できるかどうか。
- 複数通貨での販売:越境ECを始める場合、ターゲットとなる国の通貨がスムーズに利用できるよう、現地通貨の自動変換などができるかどうか。
- 支払いスケジュール:毎日、毎週、または毎月など、売上金の受け取りスケジュールが適切かどうか。
- 詐欺防止策の追加:クレジットカードのセキュリティコードや郵便番号/ZIPコードの認証を要求するなど、セキュリティを強化する機能があるかどうか。
- 銀行取引明細書のカスタマイズ:顧客がストアでの取引内容を簡単に識別できるように、取引明細書にオンラインストアの名前を表示するなどカスタマイズができるかどうか。
8. ネットショップ開業の最終準備を行う
ネットショップを公開する前に、以下のような準備を行うことで、より売り上げにつながりやすいネットショップにすることができます。
- カスタムドメインの追加:ブランド名などが入った独自ドメインを使うことでブランド力が高まるだけでなく、ネットショップの信頼感を高めることができます。
- 関連販売チャネルの設置:ネットショップに加えて、以下のようなチャネルを利用してマルチチャネル戦略を行うことで、売り上げや集客につなげることができます。
- SNS:Facebook、Instagramで販売、TikTokなどで宣伝する。
- マーケットプレイス:楽天市場、Amazonなどを並行して利用し、ネットショップと同期させる。
- Google:Googleショッピング広告を利用して、検索結果のショッピングタブに商品を掲載する。
- 実店舗:ポップアップストアなどで対面販売する。
- メールマーケティング:自動メール送信機能などを設定し、カスタマージャーニーの各段階で顧客にメッセージを送るようにします。これにより顧客との関係構築やコミュニケーションが可能となり、ロイヤリティを高め売り上げにつながりやすくなります。
9. ネットショップを公開し調整する
ネットショップを公開したら、テストとして実際に取引を行ってみたり、身内に利用してもらってフィードバックをもらったりなどしてウェブサイトの機能をテストしましょう。
公開後はトラフィックのデータを分析し、集客や売り上げにつながるようネットショップを改善・調整していきます。
10. ネットショップを宣伝する
ネットショップで売り上げを出すためには、ネットショップをより多くの人に知ってもらう必要があります。ネットショップの集客力を上げるにはいくつかの方法がありますが、以下にマーケティングに欠かせない要素をご紹介します。
SNSの活用
ターゲット顧客に合わせて適切なSNSマーケティングを行うことが重要です。ターゲット顧客が好んで使うSNSを使用することで効果的に宣伝することができます。例えば、Z世代がターゲットならTikTokが効果的です。
また、UGCなどユーザー目線のコンテンツを作成することで、押し売りのようなネガティブな印象を与えずに効率的にアプローチすることができます。
検索エンジン最適化(SEO)
ネットショップをより多くの人に認知してもらうには、検索エンジンの検索で上位に検索される必要があるため、SEOを意識したコンテンツ制作が必要です。Googleが提供しているキーワードプランナーなどの無料ツールを使って、検索ボリュームのあるキーワードでコンテンツ作成を行いましょう。どこから対策したら良いかわからない場合は、SEOチェックリストなどを活用すると良いでしょう。
データ分析
Google Analytics(グーグルアナリティクス)やGoogle Search Console(グーグルサーチコンソール)を利用して各チャネルのトラフィック数や検索キーワードを分析します。集客につながっているチャネルに集中して投資することで効率的にネットショップを宣伝することができます。
ネットショップを開設するのに必要な費用は?
ネットショップを開設するのに必要な費用には、以下のようなものがあります。
システム費用
ネットショップの開設には、システム費用がかかります。これには、ドメインやサーバーの取得、および維持費などが含まれます。
さらに、ECサイトで利用する決済システムには月額の使用料が発生しますが、一部のシステムでは無料版も利用可能です。無料版は月々の費用を抑えられますが、利用できる機能に制限がある場合が多いので、必要な機能が使えるかを事前に確認しましょう。
そのほか、ECモールを利用する場合は、月額出店料や販売手数料などが発生します。金額は、利用するECモールサービスやプランによって異なるため、具体的な料金体系を確認しておきましょう。
仕入れ費用
ネットショップを開設するには、商品や原材料などを購入するための仕入れ費用も必要です。仕入れ費用は仕入れルートや見込まれる販売量によって異なり、予想以上に高くなってしまう場合は、仕入れ先を見直したり、価格を交渉する必要があります。
在庫を持たないドロップシッピングを利用する場合は、仕入れ費用や在庫管理にかかる費用を軽減できます。
広告費用
広告費用は、ネットショップに集客する際にかかる費用です。例えば、インスタグラム広告やGoogle広告などがあります。特に自社ECサイトの場合は、集客に力を入れる必要があります。静かに待っているだけではユーザーはネットショップに訪れてくれないため、広告を活用して集客することで早く成果を出せるでしょう。
備品の費用
ネットショップ開設にあたって、必要な備品も揃えなくてはなりません。
パソコンとインターネット環境は必須です。さらに、納品書や明細書などを印刷するためのプリンターや商品の写真を撮影するためのカメラ、商品を自分で発送する場合は梱包資材も必要になるでしょう。
必要な備品をリストアップし、それぞれの備品の価格を調査することが重要です。初めは最低限の備品からスタートし、徐々に必要なものを追加していくことも可能です。
ネットショップ立ち上げの際に気を付けたいこと
ここからは、ネットショップ立ち上げの際に気を付けたいことを紹介します。
販売禁止商品を扱わない
ネットショップでは販売が禁止されている商品もあるため、注意が必要です。例えば、薬物や医薬品といった法律で規制されているものや、模倣品や偽ブランド品といった著作権を侵害するものなどです。ほかにも、販売するのに許可や資格が必要な商品もあるので、ネットショップを立ち上げる際は事前にネット販売の可否について確認しておきましょう。
商品説明をわかりやすくする
ネットショップでは、購入する際に実際に商品を手に取ることができません。そのため、商品説明はできるだけわかりやすい必要があります。難しい専門用語などは使わず、簡潔でわかりやすい文章を心がけましょう。
例:
- 高性能なプロセッサーを搭載しています。
→処理速度が速く、快適な動作が可能なプロセッサーを搭載しています。 - 驚くべきパフォーマンスを発揮します。
→優れたパフォーマンスにより、スムーズな操作と高速な処理が可能です。
特定商取引法に基づく表記をする
特定商取引法は、事業者と消費者の間でトラブルが生じないように、事業者が遵守すべきルールを定めています。例えば、代金の支払方法や販売者の氏名、電話番号などネットショップに記載しなければならない項目が明確に定められています。これらの規定に違反すると、行政処分や罰則の対象となる可能性があるため、規定内容をしっかり確認しておきましょう。
ただし、個人でネットショップを開業する際に住所や電話番号を公開することに抵抗がある場合は、「消費者から請求があった場合に「遅滞なく」情報を提供できる措置を講じている場合に限り、住所と電話番号の表示は省略できます。
まとめ
初心者でも簡単にネットショップを開業する方法を解説しました。ネットショップの開設は未経験の初心者でも気軽に行えます。ただし、ショップの運営には決済方法や配送方法、魅力的なサイトデザインなど、準備しなければならない要素がたくさんあります。
ECサイト制作プラットフォームのShopifyはネットショップ運営に必要な機能をすべて備えており、未経験の方でも簡単にネットショップを開設してインターネット上での商品販売を始められます。ネットショップの運営に初めて挑戦するため不安を感じているという人は、無料で始められるShopifyを利用して自分のショップを開設し、即座にビジネスを開始することをおすすめします。
「ネットショップ開業」に関するよくある質問
無料でネットショップを開業するには?
無料でネットショップを開業する手段としては、Shopifyなどのネットショップ開設サービスがあります。サービスによって使える機能や特徴が異なるため、運営したいショップに合わせて慎重に検討しましょう。
ネットショップ開業で導入した方が良い決済方法は?
ネットショップを開業する際の決済方法として、「クレジットカード決済」は必須です。 2020年の時点ではインターネットで購入する際の決済方法として「クレジットカード払い」が約8割と最多となっています。ほかにも、電子マネーやコンビニ決済、銀行振り込みなど、自身のネットショップがターゲットにしている顧客と親和性の高い支払い方法を導入すると良いでしょう。