海外販売や海外仕入れを考えるビジネスにとって、関税や輸送などネックになる要素がいくつかありますが、保税倉庫を利用することでコスト削減や効率化が狙えるかもしれません。
税関に関わる倉庫で遵守すべきルールはありますが、実はメリットの多い保税倉庫の基本から、利用方法や費用まで解説します。
目次
保税倉庫とは?
保税倉庫とは、通関手続きが完了しておらず、関税が一時的に保留されている貨物を保管する倉庫です。正式名称は保税蔵置場で、税関長の許可で外国貨物を置くことができるようになっており、外国貨物の積卸しや運搬、蔵置(保管)が原則2年間行えます。
所轄の税関からの距離や交通網が整備されていることが条件となっているため、一般的には港の近くにありますが、インランド・デポ(内陸保税蔵置場)と呼ばれる保税倉庫と同様の機能を持つ施設もあります。
保税とは税金を支払う前の状態で、保税状態の外国貨物を入れることができるものは保税倉庫のほかに、指定保税地域・保税工場・保税展示場・総合保税地域があります。
保税倉庫のメリット
保税倉庫にはどのようなメリットがあるのか、見てみましょう。
経費を抑えることができる
保税倉庫では関税や消費税がかからないため、保管中の経費を抑えることができます。また、不良品などがあれば、承認を受ければ関税等が未納のまま減却処分もできます。
法改正などの事情で貨物の引き取りができなくなった場合も、関税等を支払わず外国貨物のまま積み戻し(返送)ができるのも万一の際の大きなメリットとなります。
輸出入の作業を効率化できる
保税倉庫では検品や仕分け、値付けなどの作業が可能なため、保管中に仕入れ先ごとに仕分けをしたり、ラベルや値札つけをしておいたりできます。通関手続きが完了したらそのまま各輸送先に送ることができ、効率的です。
また、税関長の許可を得れば簡単な加工(食料品の加熱、洗浄、選別、ワックスがけ等)が行えます。加工ができることで、通関後に別の加工場へ移動するコストや時間を削減することができます。
安全に保管できる
保税倉庫は税関長の許可を受けた施設で、法的に守られた倉庫です。外国貨物として厳重に管理されるため、安全に保管できます。
保税倉庫の利用方法
保税倉庫は、倉庫を所有する会社に直接依頼するか、通関業者に依頼して保税倉庫の利用手続きを行ってもらうことで利用できます。
輸出入時の大まかな流れは以下の通りです。
1.搬入
保税倉庫に貨物を引き取ってもらいます。輸入時は、まず外国からの貨物が陸揚げされるまでに「外国貨物仮陸揚の届出」を税関に提出します。その上で、保税倉庫が貨物を倉庫へ搬入し取卸し(荷下ろし)手続きを行います。
2.検査
保税倉庫に搬入されたら、「他法令手続きに関する検査」を行います。関税関係法令(関税法、関税定率法、関税暫定措置法)以外の法令に関する手続きで、植物検疫法や外為法などそれぞれ所管する省庁も異なり、時間を要するものもあります。
3.輸出入申告
通関手続きを行います。必要書類をそろえ、保税倉庫を管轄する税関に提出します。
輸出入で共通する書類は以下の5つです。
- 輸出入申告書(自分で手続きする場合):税関のHPからダウンロードできます
- 委任状(通関業者を利用する場合):通関業者に手続きを委託する旨を税関に示す書類です
- 仕入れ書/Invoice I/V:決まったフォーマットはありませんが、輸出入者情報、品名・数量・価格などを記載した書類で、輸出する側が作成します
- 包装明細書/Packing List P/L:商品名と数量、重量、梱包後の重量、容積などを記載して梱包内容を説明します。必要に応じて写真やカタログも添付します。
- 他法令の確認書類(特定の荷物について必要):植物や食品、医薬品などで必要になることがあります。
輸入申告の場合は以下の3つも加えます。
- 船荷証券又は海上運送状/Bill of Lading B/L(航空貨物は航空貨物運送状):船会社(航空会社)が荷物を預かったことを証明します。
- 貨物到着通知/Arrival Notice A/N:海上貨物の場合、A/Nが運賃明細書の役割をはたします。航空貨物の場合は航空貨物運送状が運賃明細書も兼ねます。
- 保険料明細書/Insurance Policy:保険金額も課税価格に入るため、保険をかけた場合は提出が必要になります。
輸出申告の場合は以下の書類を加えます。
- 船積み指示書/Shipping Instruction S/I(通関業者を利用する場合):荷送人、荷受人、船情報など)を記載します。
4.許可を得て出庫
通関が切れたら、保税倉庫から出庫します。手続きが済まないまま倉庫から出庫することは密輸にあたりますので、しっかりと手順をふんで出庫しなければいけません。
利用方法はわかったけれど、そもそも保税倉庫ってどこにあるの?と疑問を持つ人もいるでしょう。保税倉庫は税関が管理するため、基本的には税関の近く、つまり港の近くにあります。税関は全国で9か所、函館・東京・横浜・名古屋・大阪・神戸・門司・長崎・沖縄にあり、保税倉庫もその近辺にあるものがほとんどです。
中には、岐阜や群馬など内陸部に設置されたインランド・デポと呼ばれる保税倉庫もあります。
保税倉庫の保管料
保税倉庫はそれぞれ保管料が定められています。契約の種類と料金の算出方法でかわってくるため、利用したい倉庫がどのような料金体系であるのかを確認する必要があります。
契約の種類は2種類あり、スペースだけを借りる賃貸借契約か、搬出入や管理作業も委託する寄託契約のどちらかでの契約になります。
また、個数や容積、重さで保管料が算出されたり、坪数やパレット(荷物の移動や保管時に利用される台)数で算出されたりもしますので、利用したい商材に合った料金体系の倉庫を探すと良いでしょう。
例えば、成田空港近くにある成田倉庫は、50坪以上の利用であれば一坪3,500円(1か月)から利用できます。
保税倉庫の選び方と注意点
保税倉庫は、税関のホームページにある各地域の税関管轄内にある保税蔵置場一覧を参考に探すことができます。選ぶ際は以下の点に注意しましょう。
輸送コストが抑えられる立地か
せっかく関税などを削減できる保税倉庫なのに、輸送コストが余分にかかってしまってはメリットが少なくなってしまいます。保税倉庫への搬出入の輸送ルートを考えた上で、もっとも効率的な立地の保税倉庫を選びましょう。
必要な設備やサービスが整っているか
温度管理や冷蔵・冷凍設備が必要な商材であれば、そういった設備が整っているかどうかも重要です。また、管理まで委託できるのか、搬出入は含まれているのかなども確認すると良いでしょう。
貨物を保税倉庫に搬入してから届くまでの時間は、入港から許可がおりるまでの所要時間が、海上貨物で約2.6日、航空貨物で約0.5日かかることから、出庫の手続きなども含めると3日以上かかることも考えられます。輸送手続きなども一括して委託できる倉庫を選ぶことで、そういった期間も節約することができます。
まとめ
越境ECなど国際物流で重要な役割を果たす保税倉庫は、上手に使うことで通関のためだけでなく経費削減や物流効率のアップにつながります。法令を遵守しながらメリットの多い保税倉庫を利用して、ビジネス成長のチャンスをつかみましょう。
保税倉庫についてよくある質問
保税蔵置場と保税倉庫の違いは
保税蔵置場と保税倉庫に違いはありません。保税蔵置場は関税法に定められた正式名称であり、保税倉庫は一般名称です。
保税倉庫の保管料はいくらする?
契約の種類や料金の算出方法によって異なるため一概には言えませんが、例えば成田空港近くにある成田倉庫では、1か月につき一坪3,500円から(50坪以上)利用することができます。