「起業」とは、特にサラリーマンの経験しかない人にとっては、島もイカダも見えない状況の中で、果てしない大海に飛び込むようなものかもしれません。
素晴らしい事業案につながるひらめきの瞬間さえ、単なる最初の一歩にしか過ぎないのが現実。あるアイデアから事業を立ち上げ、業績が好調となり、週末に休みが取れるようになるまでの道のりは不確実性に満ちています。では、事業が正しい方向に向かっているかどうかを、どうやって知ることができるのでしょうか。
次の港がどれだけ離れていても、どこにあるかさえわかっていれば、それが安心材料になるものです。ここからは、起業初年度に多くの事業主の方々が経験するであろう「マイルストーン」の数々をご紹介します。
ここでのマイルストーンとは、起業用のチェックリスト(英語)ではなく、「一連の活動の成果」を意味しています。これらのマイルストーンを達成できれば、皆さんの起業の旅路は正しい方向に進んでいると言えるでしょう。
1ヶ月目
有料マーケティング戦術でROIが初めてプラスになる
おめでとうございます!今ごろにはショップの立ち上げが完了していることでしょう。では、ここからは何をしなければいけないのでしょうか?この時期には、繰り返し活用できる、収益性のあるマーケティングアプローチを見出すことを最大目標としてください。
ブランドが全く認知されていない企業にとって、反響の見込める最も手っ取り早い手段は有料広告を活用すること。多くの有料広告媒体はクリック課金で支払いができ、場合によっては100ドルほどの低予算から始められるものもあります。
ここで重要なのは、広告が何度か上手くいかなかったからと言ってあきらめないこと。ターゲットオーディエンスを引き付けるための適切なビジュアルや宣伝文句が見つかるまでは、繰り返し広告を発信し続けることが大切です。ターゲットオーディエンスは必ずいるので心配は無用です。なお、収益性の高い有料広告キャンペーンは、通常多くの事前作業を必要とします。しかし一度広告を打ち出せば、その後は自立的に機能してくれるのでご安心を。
ターゲットオーディエンスにあなたの商品やブランドを手早く知ってもらうためのもう1つの手段は、既存のフォロワーを持つ誰かに有料で宣伝をしてもらうことです。昨今では、インスタグラマー、ユーチューバー、ブロガーなどを起用したインフルエンサーマーケティング(英語)が、オンライン広告の手段として人気を博しています。
インフルエンサーマーケティングで成果をあげるには、商品の宣伝にふさわしいインフルエンサーを見つけることが鍵となります。ここでの課題は、あなたの商品に興味を持ってくれる活発でエンゲージメントの高いフォロワーのいる人や、ブランドの評判を高めるコンテンツを作成できるクリエイティブな才能の持ち主を特定することです。
インフルエンサーマーケティングは、特に流行りの商品(ファッション、食品、テクノロジー商品など)や、ちょっとした実演から反響が得られるような商品に適しています。
💡有料マーケティングに関する詳細ガイド
- 有料広告初心者の方は、Facebook広告やGoogle広告の発信に役立つ、Shopifyによる実用ガイドをご覧ください。サポートが必要な場合には、Shopify Experts(英語)のマーケットプレイスで、経験豊富な専門家を探すことをおすすめします。
- インフルエンサーマーケティングに興味がある方は、ShopifyによるInstagram向けインフルエンサーマーケティング初心者ガイド(英語)をご覧ください。
縁もゆかりもない人へ初めて売り上げる
家族の一員でない人への初めての売上は、非常に意義深いマイルストーンです。このような正真正銘の売上は、購入体験やマーケティング戦術に関する貴重なフィードバックを与えてくれるため、そこから学べることはたくさんあるでしょう。
初めての売上達成には、クリエイティビティや運よりも実務を要します。まずは Shopifyストアの設定(英語)を行い、実際に販売を開始する準備をしなければなりません。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、起業したばかりの人の多くは、ショップを公開していないうちから、ストアフロントを完璧にすることばかりに気を取られてしまう傾向にあります。まだ販売活動も始めていないのに、多くのカラーパレットを揃えたり、価格を先読みしすぎたりと、詳細を気にしすぎて行き詰まらないようにすることが大切です。
おすすめは、些細なことに労力を費やす代わりに、できるだけ早くマーケティング戦術を試してみること。上記で説明したように、有料広告はターゲットオーディエンスにブランドを認知してもらうための手っ取り早い手段です。さらにインフルエンサーとタッグを組めば、彼らのオーディエンスにブランドを知ってもらうことも可能になります。
最初の売上を、真の顧客との絆を構築するチャンスとして活用してください。彼らに個人的な感謝のメッセージを送り、フィードバックを求めてみてもいいでしょう。肯定的な返答が返ってきたら、ネットショップや他の検索エンジンでブランドレビューをしてもらうよう頼んでみてもいいかもしれません。
💡有料広告でオーディエンスをターゲティングする方法を学んで、30日以内で初めての売上をあげてみませんか。
3ヶ月目
カスタマーサポートで初めての失態を経験する
満足のいかない結果は誰もが経験することです。しかし自ら丹精込めて作り上げて販売した商品のせいで、誰かを失望させてしまうほど不快なことはないかもしれません。とはいえ、問題は必ず発生するもの。優れたカスタマーサポートとは、いつも完璧を目指すよりも、常に問題を解決しようとする真摯な姿勢が大切なのかもしれません。不満を抱いている顧客がいたら、最上級のサービスを提供してください。そしてそのような事例を、彼らとより強い関係を築くチャンスだと捉えてみるのです。
「サービス回復のパラドックス」によると、プラスのサポート体験で問題を修復できれば、顧客との信頼を築き、彼らの忠誠心をさらに高められることが明らかになっています。
従来のカスタマーサポートの本では、顧客に共感して謝罪することが推奨されています。しかし最近は、謝られただけでは発展性がないように感じることもあります。代わりにおすすめしたいのが、「顧客を代弁する立場からスタート(英語)」すること。これには、問題全体を理解し、顧客と一緒に解決策を模索し、状況を修正するための提案に時間を費やす必要性が生じます。
とはいえ、憤る顧客をなだめる最善の方法は、セルフサービス要素を取り入れて問題を可能な限り未然に防ぐことです。例えば、顧客がチェックできる荷物の追跡情報ページを表示したり、自動配送通知を送信したり、また「よくある質問」ページを追加したりするといいでしょう。
なお、顧客には連絡先情報を必ず提供してください。問い合わせフォームでもいいのですが、ライブチャットの方がはるかに親しみのある印象を与えることは覚えておきたいところです。
👀 ヒント 「優れたカスタマーサービスとは?(英語)」読んで、現代のカスタマーサポートに関するShopifyの考え方やガイドをチェックしてみませんか。また、苦情を未然に防ぐために、先を見越したカスタマーサポートを実践してみましょう。
初めての顧客レビューを獲得する
実際の顧客から得た正直で肯定的なレビューほど、効果的な広告はないと言っても過言ではありません。しかもコストはゼロ。
販売する商品の種類にかかわらず、最近の買い物客は、これまで以上にマーケティングの宣伝文句に懐疑的になっています。そのため、率直な内容の口コミや商品レビューは、今やマーケティング戦略に不可欠なものとなりました。特に、マットレスなどの高額商品や、デオドラントなどの返品や交換が難しい商品には影響力が高いようです。
オランダのデオドラントメーカーであるNuud(英語)は、商品に満足している顧客の肯定的なレビューの数々を、ホームページのカルーセル表示や動画のモンタージュを通じて紹介しています。このようなレビューを見ることで、ウェブサイトを訪れる多くのビジターは、安心して「購入」ボタンを押すことができるようになります。
💡 顧客からのレビュー収集を自動化!お客様の声を紐解く(英語)ためのShopifyガイドをチェックし、Eメールによるレビュー依頼の自動化をはじめ、ソーシャルメディアへのはたらきかけや、アンケート実施に関するヒントの数々をご覧ください。
Shopifyユーザーの方であれば、次のようなアプリを使って顧客レビューを収集し、ウェブサイト上に簡単にインポートすることが可能です:
- ShopifyのProduct Reviews(英語):顧客体験を紹介できる最もシンプルなアプリ。無料。
- Yotpo(英語):商品レビュー、画像レビュー、サイトレビュー、そしてランキングを収集するアプリ。
- Loox(英語):画像付き商品レビューを追加するアプリ。の無料トライアルあり。
オーガニックマーケティングチャネルからのROIが初めてプラスになる
ソーシャルメディア、SEO、コンテンツマーケティングなど、オーガニックなマーケティング活動(英語)の成果が出るまでには時間がかかります。しかし持続可能な費用対効果を望むのであれば、オーガニックマーケティングにマーケティング費用の大半を費やす必要があるでしょう。
Common Thread Collectiveの創設者であるテイラー・ホリデー氏が記している(英語)ように、「オーガニック需要を考えずにマーケティング支出を増やすことは避けましょう。さもないと利益が消滅してしまいます」ということに注意してください。
オーガニック需要を考えずにマーケティング支出を増やすことは避けましょう。さもないと利益が消滅してしまいます
オーガニックな顧客獲得活動は、起業1ヵ月目から開始されます。そしてその活動は終わることはありません。ただし質の高いトラフィックをウェブサイトに誘引する方法は無限にあり、その戦術は1人目の顧客を探している場合でも10万人目でも同じです。戦術にはSNSプラットフォームでのコンテストの実施をはじめ、お友達紹介ボーナスの提供や、インフルエンサーとの提携などが含まれます。
💡 1人目でも10万人目でも顧客を誘引する際に役立つ、アイデア満載の顧客獲得ガイド(英語)をご覧ください。
専門外の業務を外注する
事業の開始から成長に至るまで、すべての側面を完璧にこなせる人はほぼ皆無だと言っていいでしょう。起業後の1か月以内には、自分の得意、不得意にも気づくはずです(私はロゴ作成が難しいものだとわかりました)。
この時期にはプロダクトマーケットフィット(商品と市場の適合性)の探求に重点を置く必要があります。毎日コンピュータ画面の前で多くの時間を費やすばかりで、顧客と話したり新しいマーケティングチャネルを見つけたりするのが後回しになっているならば、経験値の高い専門家に相談して手助けしてもらうことをおすすめします。ウェブ開発から販売戦略まで、幅広い分野の専門家はたくさんいます。そのため、自身の予算に見合った人を必ず見つけることができるでしょう。
💡どこから手をつけていいかわからない方は、ウェブ開発、マーケティング、ブランディングなどを専門とした、Shopifyが厳選したShopifyエキスパートが勢ぞろいのマーケットプレイス(英語)をチェックしてみてください。
6ヵ月目
受注頻度が毎日になる
「毎日注文が入るようになる」というマイルストーンは、すべてのマイルストーンの中で、取り扱う商品によって最も変化しやすいものと言えるでしょう。ここでの目指すべき成果は、プロダクトマーケットフィット(製品と市場の適合性)の探求です。
では、プロダクトマーケットフィットを達成したことは、どのようにわかるのでしょうか?商品の最終的な到達度を知るための明確なやり方や原理はありません。ただし基本的には市場で商品のニーズが高まったのを感じたら、プロダクトマーケットフィットを到達したと理解していいでしょう。
市場で商品のニーズが高まったのを感じたら、プロダクトマーケットフィットを到達したと理解していいでしょう
例えば、人々があなたのブランドを話題にしたり(英語)、他者に勧めたりするのが耳に入ってくるようになります。ここまでくると、顧客獲得活動よりも、注文のフルフィルメントや、カスタマーサポートに来た質問への回答により多くの労力を費やすようになるはずです。
注文が安定して入ってくるようになれば、たとえそれが1日1回(低価格商品の場合)、または週1回(高額商品の場合)であったとしても、それはプロダクトマーケットフィットが達成できたという証です。
さらには、Shopifyレポート上で、次のような主要測定基準にプラスの変化が見えてきます:
リピート購入率: 1回以上の購入があった顧客数を、ユニーク顧客総数で割ったもの。この数値が大きいほど、より多くの顧客維持を達成していることになる。
プロからのヒント:この数値が高い場合には、サブスクリプションモデルを導入するのがおすすめです。
顧客獲得費用:有料広告、デザイン、ブランディングなどに費やしたマーケティング支出を、ユニーク顧客総数で割ったもの。この数値はより低い方が理想的。
生涯価値(LTV):平均的な顧客から、彼らが顧客である期間中に得る総利益額。LTVは収益性に直接関わっているため知っておくことが重要。全体のLTVが高い企業は、顧客獲得により多くの費用を費やすことができるため、利益率が高くなる。
1年目
売上が初めて急増する
売上が急増すると、アドレナリンが出てワクワクします(心の準備ができていない場合は別かもしれませんが)。フラッシュセール、ブラックフライデーサイバーマンデー、季節的なトレンドなど、売上増加の理由は何であれ、事前にできるだけ綿密な計画を立てることで、その結果には大きな違いが生じます。
事前に追加の配送用品を準備しておくこと(英語)から、一時的なスタッフを雇用(英語)して季節ごとの予測(英語)を作成するに至るまで、売上急増が見込まれる時期にスムーズな買い物体験を保証するためには、一般的に数か月前から計画を立てる必要があります。この時期にはカスタマーサポートにも問い合わせが殺到する可能性があるため、予想される問い合わせを可能な限り自発的に予測(英語)して、それらを回避するための措置を講じておきましょう。
「常時」必要な業務を外注する
長きにわたって事業を営むことは、バランス良く仕事をこなすことにすべてがかかっています。もちろん、予期しない週末のシフトや深夜にまでおよぶ業務などが発生することはありますが、この時点で目標とすべきはそれらが起こる頻度を徐々に少なくすることです。そこでおすすめしたいのが、「業務の外注」です。
出荷やフルフィルメントなどの業務処理のために従業員を雇うつもりであれば、もはや迷うことはありません。まだ従業員を雇用する余裕はないものの、経理業務やソーシャルメディア管理などの日々のタスクに翻弄されている場合には、現在人気上昇中のバーチャルアシスタント(英語) を試してみてもいいでしょう。
一定の業務を手放して、商品開発やメディアとのエンゲージメント、そして海外への出店など、事業により大きなインパクトを与える業務に集中してみてはいかがでしょうか。あるいは、単に家族とより多くの時間を過ごし、自分を労ってもいいかもしれません。それがこの投稿で提案する、最後のマイルストーンへとつながるのです…
💡 どこから始めるべき? Shopifyによる「従業員の雇用方法に関する1〜20のヒント(英語)」や、「週60時間労働から1日4時間制に変えた、ある起業家のストーリー(英語)」を読んで、インスピレーションを得てみませんか。
休暇を取得 🏖️
何ヶ月もの期間をかけて死にものぐるいで努力した後は、ようやく待ちに待った休憩を取ることができるようになるでしょう。その時は、果てしない大海の真ん中とは言わずに、優雅にビーチでバカンス(英語)なんて素敵だと思いませんか?
原文:Sara Yin イラスト:グレーシア・ラム 翻訳:クリンカース恵子