ファンは何にも替えられない大切な存在です。1人の熱狂的なファンは何千ものフォロワーと同じ価値があります。
ファンは皆さまをサポートするために立ち上がり、友人たちに勧めてくれて、あなたのオーディエンスを盛り上げてくれます。
たとえ小規模であってもこうしたファンに恵まれているクリエイター、企業、インフルエンサー、著名人などは、一度はオリジナルグッズの制作や販売を考えたことがあるでしょう。
Tシャツ、帽子、スマホケース、バックパックなど、商品の販売機会は豊富で、あなたのブランドは人々の生活の一部となり、新しい収益源が誕生し、ファンは皆さまのアンバサダーになります。
では、実際にオリジナルグッズを制作して投資するにあたって、何からスタートしたらいいのでしょうか?本日は自分のファンに届けたいものがある皆さまに、オリジナルグッズの作り方から販売方法までを解説します。
収益を超えて:ブランド、ユーチューバー、クリエイターにとって商品の本当の価値とは
Zack Honarvarは、人気急上昇中のユーチューバーYes TheoryやD2C企業のOlipopなど、さまざまなクリエイターやブランドのマーチャンダイズ戦略を開発しているFan of a Fanの共同創設者です。
Zachにとってマーチャンダイズは新たな収益源の創造にとどまりません。以下のような機会を生み出すからです。
- 本当のファンを特定し、物理的なプロダクトによって彼らとの間に意味のある関係性を築ける
- フリーギフトなどでオーディエンスを楽しませ(成長させ)る
- ほかのクリエイターやブランドと協力して商品を誕生させる
- 商品の写真や動画をフォロワーにシェアできるので、ファンにコンテンツ作成を促す
- ファンが商品について第三者と話すことで無料のクチコミが発生する
そして何より、うまくやれば、商品はファンがブランドの体現するものやコミュニティの仲間とのつながりを感じることに役立ちます。
Yes Theoryのファンは、クリエイターによるSeek Discomfortの商品を、新しい仕事の初日に(スーツの下に)着たり、最初の子どもの誕生のときに着たりしたストーリーをシェアしています。これはオプティミズムや個人的な成長をブランドが象徴していることが理由です。
「ファンの一人が、フライトがキャンセルになって次のフライトまで何時間もあるときのことを書いてくれました」とZachは言います。「ゲートでSeek Discomfortのフーディーを着ている人を見つけ、空港で足止めされている数時間のうちに良い友人になったそうです。同じチャンネルのファンという事実だけで」
熱心なファンはロゴ入りTシャツを喜んで買ってくれるでしょう。しかしZachによれば、本当に意味のある商品はファンベースを超えて新しいオーディエンスが共鳴するポテンシャルをもっているのです。
適切なマーチャンダイズ戦略を考える
マーチャンダイズは展開次第で多様な側面を見せます。継続的な収益源、他のブランドとのコラボのきっかけ、ロイヤルカスタマーのための無料ギフトなどなど。
商品戦略の重要な決断の一つが、既存ブランドにおいて販売するか、サブブランドを立ち上げるかの判断です。
サブブランドとしての商品販売
Yes TheoryによるSeek Discomfortの例が示すように、いくつかのケースにおいてはスピンオフブランドを立ち上げるのが自然です。
「このアプローチのメリットは、既存のコンテンツや商品を超えたオーディエンスを得られることです」とZackは言います。「始めのうち売上は伸びないかもしれませんが、サブブランドを立ち上げることでロングテールな成功が見込めます。というのも、商品とクリエイターのブランドとの間に明確な線が引けるからです」
このアプローチによってSeek Discomfortは、Bose、Lululemon、Timbuk2などのブランドとのコラボを進めました。これは、「Yes Theoryの商品」として販売していたらZackが得られなかったかもしれない機会なのです。
既存ブランド下での商品販売
Zackの別のクライアントであるAtticus the poetの場合、彼がライターとして得た名声をECサイトで戦略的に利用することが理にかなっていました。サイトではファンが彼の本やTシャツ、テンポラリータトゥー、オリジナルブランドのワインまで見つけることができます。
「Atticusにはどちらかというとグッズベースのコレクションがあります」とZackは言います。「ただ、同時に彼は実店舗とオンラインでPoet Wineと呼ばれる商品も販売しています。これはAtticusブランドの外側で展開しているものです。何をどうやるか、選択は自由です。サブブランドとして別にスタートするものもあれば、ファンベースやオーディエンスに対してダイレクトに販売すべきものもあるでしょう」
Shopifyでは、オンラインストアだけではなくFacebookとInstagramで販売することもできます。
Atticusの商品は、Instagramでシェアされるコンテンツにも統合されています。そこには多くのフォロワーがいて、買えるコンテンツとして商品タグが付いています。
どのようなアプローチをとるにせよ、素晴らしい商品は最終的に一つのところに落ち着きます。
オリジナルグッズの作り方
ロゴをTシャツや帽子にデザインするだけのシンプルな商品でも成立はします。しかし、既存ファンや新しいオーディエンスにまで響く新鮮な商品コンセプトをプロデュースするためには、プロセスが重要です。
わたしたちのブランド、Shopifyを例にとって、アイデアからプロトタイプまでの道筋を見てみましょう。
Shopifyは数百万の起業家たちのビジネスを支援しているプラットフォームで、個人でもブランドを立ち上げて成長させるまでに必要なツールのすべてを提供しています。
Shopifyブランドが表現するのは、独立性、強さ、クリエイティビティ、そしてもちろん、ビジネス成長です。これらを出発点として商品制作プロセスをたどっていきます。
1. 商品アイデアのブレストと検証
皆さまのブランドは今までフォロワーやオーディエンスとの間で関係性を築き、商品アイデアになりそうなシンボル、フィーリング、コピーなどをすでにゲットしています。
さらに効果を上げるために、実際にオーディエンスに対してどんな商品を買いたいかを聞いてみませんか?
「いつも勧めているのは、クリエイターやブランドがオーディエンスの求めているものを聞くこと、場合によってはオプションから選んでもらうことです。IGストーリーズやメール、コミュニティにおいて聞くことができます。『帽子、ボードゲーム、Tシャツ、フーディー、どれがいいですか?』というように」。
さらにZackは、ブランドが閉じた世界の中にいることに気づいていないことがあると言います。「ロサンゼルスに住んでいるなら、ほかの都市や地方では寒い冬があるということがわかっていない場合があります。彼らは柔らかいスウェットパンツを販売することなど考えたこともないのです。」
オーディエンスにフィードバックを依頼することには付加価値があります。彼らにとってみれば、自分が商品制作プロセスの一端を担っているという感覚を得られるからです。
そこで、Twitterを使ってわたしたちのフォロワーに、どんなShopify商品が欲しいかを聞いてみました。
受け取ったフィードバックを元に、Shopifyスタッフ数人で商品アイデアのプロトタイプを考えました。
- ShopifyバッグのロゴTシャツ/クルーネック/パーカー。Shopifyバッグはわたしたちのアイコンというべきロゴマークであり、ファンにとって当然なデザイン要素ですね。
- ビジネス系ジョークの帽子。起業家たちが自分のビジネスに没頭している際のスローガンを帽子に入れると良さそうです。
- チャリーンフーディー。「チャリーン」はShopifyで売上があったときの効果音です。これをフーディーにデザインしてみるのはどうでしょう?
- インディペンデントクルーネック。インディペンデンス(独立)はShopifyを使ってビジネスをしている人々を定義するのにぴったりです。このパワフルなワードはブランドに直結します。
- ”Shop Small, Thing Big”トートバッグ。地域コミュニティの独立系店舗でショッピングするときのお供に最適です。
- “仕事について何でも聞いてください”Tシャツ。ビジネスオーナーとしてのアイデンティティをほかの人たちとシェアするためのシンプルな方法です。
- Shoppyフーディー。Shoppyは非公式のShopifyマスコットであり、数年前の会社のHack Daysイベントの中で生まれました。
SNSにShoppyが登場するとファンの間で人気になりました。
2. 商品のデザインとモックアップ
ほとんどの商品開発の会社はデザインサービスも提供していますが、Zackは可能であればデザインも自分でやることを推奨しています。
「デザイン要素については自分で考えるのが最善でしょう。というのも、つい最近あなたのブランドについて知ったばかりでデザインを考える人よりも、あなたのほうがより深く自分のブランドを理解しているからです。」
商品デザイナーは、フリーランスのサイトや自身のネットワークから見つけることができますが、以下の点には注意してください。
- 文脈を提供する。どんなプロダクトのためのデザインなのか、オーディエンスはだれか、場合によってはブランドのガイドラインなどを伝える。
- 望んでいることを明確に説明する。要求を何度も伝え、少なくも1〜2度は発生する修正の機会にもデザインの改良に必要な具体的なフィードバックを忘れない。
- ムードボードを作成する。デザイナーの手がかりとなるような発想ネタ、事例、参照物などをまとめておく。
多くのオンデマンド印刷会社はモックアップジェネレーターを提供しているので、商品制作に活用できます。Placeitではデザインのライフスタイルモックアップが可能なため、フィードバックをもらうためにオーディエンスにも共有できます。
商品アイデアを聞いたのと同じ方法で、デザインに関するフィードバックももらいましょう。オーディエンスを巻き込むためだけでなく、正しい方向に進んでいるかを確認するためでもあります。
いくつかのShopify商品のコンセプト。デザインを手伝ってくれたRonnie Frank、Syd Selch、Jack Bowmanに感謝です。
3. プリントオンデマンドのパートナーまたは製造業者の選択
商品モックアップに対するフィードバックが得られたら、実際にどう商品化するかを考えます。
一般的なオプションは2つです。
- オンデマンド印刷。製造から配送までをパートナーに任せて自動化できます。コストもリスクも低く、設定や管理も簡単です。ただし、選択するサービスによっては商品やカスタマイズのオプションが制限されます。
- ゼロからの製造。作成したい特定プロダクトのために製造業者を見つけ、生産し、自分で在庫管理をして販売できます(または配送は外部サービスに依頼)。おのずと、目的商品の制作オプションと柔軟性が増しますが、投資的には大きな額になります。
それぞれのアプローチを細かく見てみましょう。
オンデマンド印刷サービスを使う
このルートで行くなら、さまざまな人気オンデマンド印刷サービスと統合できるShopifyが便利です。
多くのサービスは無料で使い始めることができ(商品の注文があったときだけ支払いが生じます)、個々に商品カタログをもっていて、Tシャツ、パーカー、スマホケースなどのオリジナルグッズを簡単に作成・販売できます。
わたしたちのプロダクトのために、Printfulを使ってサンプルを試しで注文してみました。長期的にはオンデマンド印刷を利用しない場合でも、商品のプロトタイビングと商品ストアのテスト、またはフリーギフト制作のためなどにも活用できる方法です。
商品を販売開始する前に、必ず品質確認のためにサンプルをオーダーしてください。モニター画面で見た色味と実際の商品の色味は異なる場合があります。不明な点はオンデマンド印刷サービスのカスタマーサポートに問い合わせてみましょう。
また、実際の事例を確認したい方は、日本のデザイナーのCHA2のストーリーを読んでみましょう!
ロゴの余白部分が一致していないこの刺繍のように、デザインからプリントまでの過程で何が起こるかわかりません。
提携できる製造業者を見つける
商品制作のために提携できる製造業者を見つけるという方法もあります。
オンデマンド印刷と比較すると、商品デザインについて型にとらわれずに考えられる余地があります。ユニークにデザインされたフーディーや独自のボードゲームなども可能です。
クリエイターやブランドのために商品開発をしているFan of a Fanのような会社が多くあるので、パートナーを選ぶ前にいろいろ見て確認しておくといいでしょう。
相手と契約をする前に考慮すべきことがいくつかあります。
- 知的財産の所有権について。パートナーシップの結果として新たに発生する衣類のデザインなどのブランド知的財産はだれに所属するのか? パートナー契約解消などの場合に備えて、そのあたりの権利の保持を確実にしておいたほうがいいです。
- 報酬の仕組み。固定費、または利益ベースの変動制? マーチャンダイズの会社の場合、利益ベースのシェアモデルが一般的です。収益の15%〜50%という場合が多いです。
- コミットメント。Zackは1つのパートナーと長期で契約しないことを推奨しています。トライアル期間(例:3ヶ月、1商品の開発など)を設けて、パートナーが期限を守れるか、商品の品質は確かか、メールに迅速に対応しているか、全体的に信頼できそうかなどを判断しましょう。トライアルのあと、提携を継続するかどうかを決めます。
- 見えないコスト。商品ローンチの始まりから終わりまで、見えないコストが隠れていないか精査します。倉庫料金、ピッキングと梱包料金、配送料、デザイン料、ウェブサイト管理費、カスタマーサービス費用など。収益シェアモデルで契約したあとに見えなかったコストが浮上してくると、大変です。
商品を販売していく方法
通常商品と比べてファン向け商品のマーケティングが異なるのは、既存ファンに優先して販売し、消費者への販売はその次になるという点です。別の言い方をすると、潜在顧客に関して保証されたオーディエンスがいるということです。
商品販売にあたって検討すべきマーケティング機会が以下になります。
1. クチコミ
優れた商品はそれ自体がマーケティングです。ファンが買って頻繁に着れば、人々がそれについて尋ねる機会が増えます。
ただし、高品質の商品でなければなりません。「販売する商品はあなたが持っている物理的な資産であり、ファンはあなたのブランドを歩き回って宣伝してくれます」とZackは言います。「しかし、質の低いものを作ってしまうと、彼らは1〜2回着るだけで終わるでしょう」
だれかがあなたの商品を着るたびに、そして第三者に向けてあなたの商品を褒めるたびに、商品露出は高まります。クチコミを増やすには、見せびらかしたくなるような商品を作ることが大切です。
世界的なトップテニスプレイヤーのStefanos TsitsipasがSeek Discomfortの商品を着用しているInstagram投稿。
2. コンテンツに商品を統合する
コンテンツ内で商品を紹介するのは自然なことです。動画内で商品を着る、SNSの投稿で直接宣伝する、コンテストなどをクリエイティブな形でコンテンツ化する、などの方法が考えられます。
Shopifyで商品ストアを構築した場合、ストアをオーディエンスのいる場所に合わせて統合できるので、コンテンツ内で商品を販売することがさらに簡単になります。アプローチできるチャネルの種類はこちらです。
- Instagram:商品を投稿やストーリーでタグ付けし、プロフィールでInstagram Shopをキュレートします。
- YouTube:動画説明欄やカードで商品のリンクをシェアし、動画の最後にもCTAを入れます。(ユーチューバーがグッズを作って販売する方法)
- TikTok:ほかのTikTokクリエイターと提携し、あなたの商品のコンテンツを作ってもらいます。
- 購入ボタン:商品ストアとは別のウェブサイトやブログがある場合、商品やコレクションをそこに埋め込むことができます。
コンテンツと商品をどのようにつなげるか、やり方はあなた次第です。あなたが一番オーディエンスのことが良くわかっています。Seek Discomfortの場合、バックヤードでファッションショーを開催しました。
3. 既存オーディエンスへのリマーケティング
商品をプロモーションするために広告にお金を使ってみるのはどうでしょう? 違う状況であれば新しいオーディエンスに商品を購入してもらうためのプロスペクティング広告をうつところかもしれませんが、今回はリターゲティングが有効です。
リターゲティングにより、特定の範囲(Instagramフォロワー、購入実績者など)に絞った既存オーディエンスに向けて宣伝できます。ファンに向けてリターゲティングをおこなうために、広告ピクセルがあなたのウェブサイトや顧客メールに埋め込まれていれば、Google、Facebook、YouTube、TikTok、Snapchatなど多くのプラットフォームでリターゲティング広告は可能です。
「ここでは実に高いエンゲージメントとROIが得られます」とZackは言っています。「プロスペクティング広告の場合、今まで聞いたこともない相手からは商品を買わないケースがほとんどです。なので、有料メディアにかける情熱はリターゲティングに注ぐべきでしょう。」
言うまでもないですが、もし蓄積してきたメールリストがあるなら、商品を販促すべきチャネルとして有効活用できます。
4. プレセールの実施
新商品のプレセールキャンペーンほど盛り上がりの勢いを得られるものはありません。プレセールは、オーディエンスに対して一般発売に先駆けた販売をおこなう機会なので、彼らは真っ先にグッズを入手できます。
アドバンテージは何でしょうか? 在庫を積む前に需要を計測することができ、また希少性や緊急性を打ち出すことによってファンの早期購入を促進できます。
「Yes Theoryはこれをよくやっていて、とくにスタート時はそうでした」とZackは言います。「服飾のアイテムをいくつかサンプルとして作りました。アイテムの写真撮影をして、在庫はまだ持ちませんでした。それからサイトを72時間立ち上げて、72時間販売し、サイトを閉めました。そこから、オーディエンスとメールでコミュニケーションしたので、彼らはわたしたちの制作プロセスがどの程度進んでいるかを理解していました」
Seek DiscomfortとLululemonのコラボ においては、20以上の共同ブランド商品を、72時間だけ限定販売しました。
Shopifyアプリストアには、さまざまな事前オーダーアプリがあり、プレセールの実施をサポートします。またはKickstarterなどのクラウドファンディングサイトを使ってプレセールをおこなうことも可能です。
ファンが熱狂する商品を作ろう
商品化をする理由は多彩で、新たな収益源の立ち上げというだけにとどまりません。商品はあなたのブランドとファンをつなぎ、あなたへの献身を見せる機会を彼らに与え、大きなものの一部であるという感覚をもたらします。
ファンが集まるコンテンツや商品を超えるような新鮮なクリエイティビティをビジネスアイデアに持ち込んでみましょう。