「絶対にこれだと。お弁当箱は絶対に売れると思いました」
およそ10年前、Bento&co代表のトマさんはそう確信していました。
トマさんは日本の弁当箱をグローバル販売するというアイデアで大成功。Shopifyでスタートしたストアは拡大を続け、フランスでの「Bento」ブームの火付け役となりました。さらに今では京都市に弁当箱専門の実店舗まで構えています。
今回は、そんなトマさんにネットショップで成功するためのノウハウやメンタリティなどを聞きました。
母との会話がビジネスに
フランス生まれのトマさんは、子供の頃から日本の文化が大好きで、いつか日本に住むことを夢見ていました。学生時代には念願叶い京都に1年間留学し、再度戻ってくることを決意。トマさんは、卒業後にすぐに日本に帰ってきました。そこで始めたのが日本や京都について紹介するブログです。そのブログが後々、ビジネスへとつながっていきました。
「当時、京都でフランス人のブロガーは自分だけで、日本好きのフランス人の中で人気がありました。そのおかげで色々なコネクションや友達ができました。2006年頃にブログからビジネスができたらいいなと思って、日本のモノを売り始めたのです。ちょうどその時に、友達からShopifyというサイトがあるよと聞いて、ストアを作成しました」
当時はお弁当箱を販売していなかったというトマさん。では、彼がお弁当箱を売るというアイデアを思いついたのはどのようなタイミングだったのでしょうか。意外にもアイデアがひらめいたのは母との会話中だったとのことです。
「2008年に母とSkypeで話をしていたときです。母がフランスの雑誌で『お弁当のレシピを見たよ』と言ったときにひらめきました。頭の中で絶対にこれだと。お弁当箱は絶対に売れると思いました。当時はお弁当箱をちゃんと売っているところはほとんどなくて、ビジネスチャンスだと確信しました」
当時はリーマンショックが起こり、世界中が不景気の真っ只中。そのようなときには人々は外食をやめ、自分でお弁当を作って会社に持っていっていたのです。まさにタイミングは完璧でした。
最初の売上はわずか20分!?
新しいストアの準備をしている段階からブログに逐一記事を書いていたので、トマさんのネットショップは開設前から口コミで多くのフランス人に知られていたそうです。そのおかげで最初の売り上げも驚異的な早さで記録しています。
「お店をオープンする前から他のブロガーさんがシェアしたり、口コミで『こんなフランス人が日本でECサイトを立ち上げているよ』と知られていました。おかげでお店を開いてから20分後に最初の注文が来ました。最初のお客さんは私のブログをよく読んでいた人です。さらに最初の日からオーダーが10件以上来て、3ヶ月目には会社の利益も出てきていました。3年間ずっとブログを書いていたおかげですね」
その後も順調にビジネスを拡大。フランスの友人を頼って色々な雑誌などに紹介してもらったりしたそうです。「当時はリーマンショックもあり、お弁当という言葉が女性向けの雑誌や料理の雑誌の中でよく取り上げられていました。始めたときにはちょうど『Bento』という言葉はいろんな人が知り始めていましたね」
すぐに始められるShopifyの魅力
Shopifyを2006年のベータ版の頃から愛用しているというトマさん。まさに黎明期からShopifyを使っています。魅力はどこにあるのでしょうか?
「プログラマーでもデザイナーじゃなくても簡単に使えるということです。すぐにお店を始められる点が良いですね。ビジネスは好きでも、プログラミングの知識がない人は多いです。そういうときに簡単にECを始められることがShopifyの魅力だと思います。管理画面もとても使いやすく、お客さんにとってもチェックアウトがわかりやすいのも素晴らしいですね」
「他にはShopifyのモダンな視点もすごく大きいと思います。APIがどんな人でも自由に使えるので、アプリの種類がとても豊富。本当にすべてのことができるようになる。ある意味ShopifyってiPhoneみたいだと思います。アプリと連動してすべてができる。時代に合わせて新しいアプリが出てくるので、未来でも問題なく使えます」
自身のストアでもアプリを多く使用するというトマさん。おすすめのアプリについても教えてくれました。「おすすめはBack in Stockですね。昔から使っているアプリで、在庫入荷を自動で知らせてくれるのはとても便利です。あとは請求書などの印刷アプリのOrder Printer、お客様にレビューを描いていただくためにYotpo、そしてもちろんShip&coも使っています」
Ship&co
Ship&co?Bento&coと名前が似ていると思った方も多いのではないでしょうか。実はこのアプリ、トマさんが商品の発送作業を楽にするために計画、長年の越境ECの経験で培ってきたノウハウが活かされて開発されたアプリなのです。このアプリを使うと、送り状、インボイス、納品書がワンクリックで発行可能になります。
「自分のためにこれがあったらいいなと思って作りました。例えばクリスマス前に1日の注文が100件もあると、配送ラベルだけで作るのに約5時間。昔は管理画面からFedExのページに一つずつ住所をコピペしていてすごく不便でした。その手間を解消するために社内のデベロッパーのチームが開発して、誰でも使えるようにとShopify アプリとして公開しました。今ではそれが新しいビジネスにもなってすごく楽しいです」
最初は日本国内向けに開発されたアプリですが、トマさんの目は祖国のフランス、そして世界へと向いています。より多くの人にShip&coを使って、面倒な発送作業を効率化してほしいと考えています。
「将来はフランスやシンガポールなど海外の郵便とも連携する予定です。多くの国にShip&coを広めたい。そのためにまずはフランス国内の発送でも使えるようにしたいです。結局、日本でも海外でもやり方は同じなんですよね。世界中の人に使っていただけるアプリです」
メールマーケティングが一番
Bento&coの成長にはマーケティングも大きく関わっています。Facebookに力を入れて投稿を増やしていった結果、今では約8万いいねを獲得。TwitterやInstagramでもマーケティングを行なっています。「でも・・・」とトマさんは、最も効果があるマーケティングを教えてくれました。
「一番強いのはメールです。他のECの方もよく言っているんですけど、メールマーケティングがとても重要です。お客さんがメルマガに登録したということは、うちの商品が好きということ。新商品の発表やセールをするときにしっかり送ることが大事です。去年はBFCMの時期に色々送ったのですが、とても効果があり、普段の10倍も売れました」
また、Bento&coでは2009年から「国際弁当コンテスト」と銘打って、世界中の人からお弁当の写真を送ってもらうコンテストを開いています。なんと優勝者には京都に来ていただこうと関西国際空港までの往復チケットをプレゼントしているそうです。
「毎年テーマを決めてコンテストを開いています。今まではおにぎり弁当、パスタ弁当、サンドイッチ弁当などのテーマをやりました。参加者から弁当の写真を送っていただいて、社内でトップ10を決めています。最近は30ヶ国くらいから300〜400人が参加しています」
Bento&coの実店舗
最初の一歩が一番大変
世界に日本のお弁当文化を広めているトマさん。今のトマさんが存在するのは、信念と「パッション」を持って取り組んでいたからです。ストアを始めた当初は周りの人全員がアイデアを信じていたわけではなかったと振り返ります。しかし、それでも諦めずに続けたことが今の成功につながっているのです。
「パッションが大事です。弁当箱のアイデアがあったときに、周りから『それだけでは生活できないでしょ』って言われたんですけれど、自分の中では『絶対に売れる!』と思っていました。ビジネスを始める上で一番難しいのは一番最初です。最初の一歩が一番大変。自分で仕事を作ったり、仕事をやめるなど、やりたいことをやるときの最初の一歩が一番難しいと思います」
トマさん自身も最初の一歩をよく覚えていると振り返ります。
「Bento&coのための最初の一歩は今でも覚えています。私はそのときに一番プライドがありました。もし、そういうときに『やっぱり弁当箱ってそんなに売れないんじゃないか』と自分で思ったらそこでやめちゃう。でも私は『絶対に行ける』と何日も思っていた。それで始まって、乗り越えて、どんどん進んでいけました。アイデアがあってパッションがあって絶対にうまくいくというやめない力が大事です」
未来へ
「絶対に売れる!」。この言葉を胸に突き進み、ストアを成長させました。Bento&coは始めたときは個人向けのストアでしたが、今では規模を拡大して卸売りも行なうようになっています。今や弁当箱業界を引っ張る存在にまで成長しています。そんな会社を牽引するトマさんは今年の目標として、次のように話します。
「卸が増えてきているので、今年はBtoBを強くしていきたいですね。実はShopifyを使っているBtoBのBento&co Proというストアがあり、海外の展示会にも出展しています。また、近い未来にはライセンス契約をして、オリジナルのキャラクターのお弁当箱を作っていきたいです。そして、Ship&coですね。もっと様々な会社と連携して、多くの人に使っていただきたいです。あとは・・・」とトマさんは笑いながら続けます。
「越境ECに興味のあるマーケティングに詳しい人を募集中です。ぜひ連絡してきてください!」
日本文化を海外に広めるトマさんの旅は続きます。
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