TikTok(ティックトック)は、日本だけでなく世界各国で特に若年層に人気の高いSNSプラットフォームです。そのため、TikTokをSNSマーケティングに活用している個人事業主や企業も少なくありません。この記事では、TikTokをビジネスで使うために欠かせないビジネスアカウントの作り方とともに、具体的な活用方法や成功事例を解説します。TikTokビジネスアカウントを活かして収益化したい、あるいは売り上げを高めたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
TikTokをビジネスに活用する理由
TikTokは、特にZ世代にアプローチするのに最適なプラットフォームです。それは、TikTokが若者文化のなかで新しいトレンドやブランドの発信源となっているためです。若年層を対象としたビジネスにおいては特に、認知度を高めたり新しい顧客を獲得するために欠かせない存在といえるでしょう。
TikTokをビジネスに活用するメリットは、以下のとおりです。
- ユーザーから反応が返ってくる割合(エンゲージメント率)が高い
- トレンドや商品が拡散されやすく、集客につなげやすい
- 特定のターゲット層やコミュニティを対象としたアプローチができる
- 広告キャンペーンを手頃なコストで実施できる
- クリエイターやインフルエンサーとパートナーシップを結べる
- オンラインストアと連携し、スムーズに販売促進できる
TikTokビジネスアカウントの始め方:8つのステップ
1. TikTokビジネスアカウントを作成する
ビジネス用のTikTokアカウントを作成するには、まず通常のアカウントを開設してから、そのアカウントをビジネスアカウントに切り替える必要があります。通常のアカウントからTikTokビジネスアカウントに切り替える手順は、以下のとおりです。
ブラウザの場合:
- フィード画面右上隅のアイコンにカーソルを合わせて「設定」をクリックする
- 「ビジネスアカウント」のスライドスイッチをクリックする
- 「カテゴリー」を選択し、「ビジネスを始める」をクリックする
アプリの場合:
- 「マイページ」右上隅の三本線マークをタップして「設定とプライバシー」を選択
- 「アカウントの設定」>「ビジネスアカウントに切り替える」をタップ
- アカウントのカテゴリーを選択
- 必要に応じてメールアドレスやプロフィール情報を入力
アカウントを個人用に戻したい場合は、同様の手順でブラウザ版ならスライドスイッチをオフに、アプリ版なら「個人用アカウントに切り替える」をタップすることで、すぐに戻すことができます。また、TikTokでは複数のアカウントを所有することができるため、ビジネスアカウントとプライベート用の個人アカウントをそれぞれ開設することも可能です。アプリの場合は、プロフィールページ上部の真ん中にあるアカウント名をタップすればログインアカウントをすぐに変更することができます。
2. TikTokユーザーのニーズを知る
TikTokで成功するためには、ユーザーが求めるコンテンツを理解し、ニーズに応えることが不可欠です。まずはTikTokを実際に見ながら、トレンドを把握しましょう。TikTokを開いたときに表示される「おすすめ」やブラウザ版の「探索」のフィード画面には、「いいね」やシェアの数が多い人気のコンテンツが表示されています。
また、全体的なトレンドだけではなく事業に関連するハッシュタグの調査も大切です。たとえばオンラインで書店を運営している場合、「#本の紹介」や「#読書」といった関連タグをチェックすることで、読書好きのユーザーの間でどのようなコンテンツに人気があるのかを把握できます。
3. 目標を設定する
ビジネスを成功させるには、目標設定が不可欠です。TikTokアカウントを運営していく際の目標であれば、ブランド認知度を高める、コミュニティを構築する、ネットショップの集客力を高めるといったものが考えられます。目指す方向性を明確にすることで、投稿する動画の焦点を絞ることができ、より効果的なコンテンツ制作につながっていきます。また、こうして設定されたアカウントのコンセプトは、TikTokで広告を掲載する際にも重要となります。
4. TikTokの運用戦略を立てる
コンテンツをバズらせるために、投稿する時間や頻度、コンテンツの種類など、TikTokの運用戦略を立てましょう。まずは商品の発売日や祝日、ターゲットユーザーが盛り上がるイベントの開催日などをもとに、制作・投稿スケジュールに関するコンテンツカレンダーを作成します。たとえばペットフードを販売している場合は、2月22日「猫の日」や8月8日「世界猫の日」にあわせたコンテンツ制作を計画すると良いでしょう。
実例として、3COINS(スリーコインズ)公式インフルエンサーの「3coins_marin」が父の日に向けておすすめの商品を紹介する動画を投稿しています。このように、特定の日付に関連したコンテンツを計画することで、視聴者の関心を引き付けることが可能です。
また、運用戦略にはユーザーからのコメントや質問への対応方法、インフルエンサーとのコラボレーション、使用するロゴやカラー、音源なども考慮に入れる必要があります。事前にこうしたガイドラインを定めておくことで、複数のスタッフや代理店がアカウント運営に携わる場合でも、一貫したブランドイメージを保つことができます。
5. ユーザーが求めるTikTokコンテンツを制作する
TikTokでユーザーの興味関心を惹くには、コンテンツそのものに魅力があることが重要です。単なる商品紹介にはとどまらず、一般的なユーザーが投稿しているものと同様に個性的でクリエイティブなコンテンツであることが必要となります。たとえば身近な雰囲気や親しみやすさがあり、信頼できるブランドだと感じてもらうには、実在の人物が出演しているコンテンツが有効となるでしょう。
ほかにもトレンドの楽曲や音源を使用したり、ブランドに適したハッシュタグチャレンジに参加したりする手法も、ユーザーの興味を惹く際に効果的です。重要なのは、面白くて話題性があり、ユーザーの価値観や興味に合ったコンテンツを制作することです。
6. コラボやインフルエンサーマーケティングを検討する
クリエイターとのコラボやインフルエンサーマーケティングを活用し、ブランドや商品の認知度を高める戦略を視野に入れましょう。事業のブランドコンセプトやターゲット層に合っているクリエイターを見つけられたら、積極的に提携の相談をしてみるべきです。
提携することで、双方にメリットがあります。たとえば、日本のジェンダーレスコスメブランドSUORUM(スオルム)はTikTokerの「りせとルイス」とコラボレーションしました。コラボ企画で投稿した動画では、睡眠中の彼氏に彼女がメイクを施してデートに誘い、彼氏がデート中にメイクされたことに気づくというユニークな内容で、約15万を超えるいいねを獲得しました。SUORUMのブランドコンセプトとコラボ企画の動画コンテンツが見事に一致し、商品の魅力を効果的に伝えられるコンテンツとなっています。一方、コラボ動画の投稿を通じて、りせとルイスはアカウントの認知度を高めることに成功しています。
7. TikTok広告の利用を検討する
TikTokで効果的にビジネスを宣伝するため、TikTok広告の利用を検討しましょう。動画広告は急速に増加しており、事業者の91%が動画形式の広告を活用していることがwyzowlの調査(英語)で明らかになっています。TikTokでは広告費をかけない投稿でも注目を集められますが、ターゲットを絞った広告を活用することで、さらにマーケティングの成果を高めることができます。
仮にスポーツ関連のネットショップを経営しており、新しいランニングシューズの広告キャンペーンを実施するとしましょう。その際には、ユーザーの年齢や興味関心、キャンペーン目標などを細かく設定します。たとえば、ランニングに興味がある18~35歳のユーザーをターゲットに設定して「夏のマラソンにぴったりのおしゃれシューズ!」などのメッセージを含めた広告キャンペーンなどが考えられます。
8. TikTokを通じて製品やサービスの販売を行う
TikTokは、コンテンツの視聴者を顧客に変えるために、オンライン販売チャネルと連携させることが可能です。
たとえば、TikTokとShopifyの統合機能を活用すれば、TikTokで商品販売ができるようになります。さらに在庫や顧客、販売に関するデータをShopifyの管理画面から一元管理できるため、複数のプラットフォームを往来して業務効率が低下する心配もありません。
TikTokビジネスアカウントとShopifyの連携方法
- Shopifyにログインして左側のメニューから「アプリ管理」>「Shopifyアプリストア」に移動
- 「by TikTok Inc.」の記載があるTikTokアプリを追加
- 左側のメニュー「販売チャネル」>「TikTok」>「アカウントに接続する」をクリック
- 連携したいユーザー情報を確認して「接続する」をクリック
- TikTok For Businessアカウントを選択して「接続する」をクリック
- 利用規約を確認して「承諾する」をクリック
TikTokビジネスアカウントの活用事例
舞台裏を紹介する
ビジネスの舞台裏を紹介することは、TikTokで人気のあるコンテンツ形式のひとつです。舞台裏の紹介は、ユーザーの好奇心を満たすだけでなく、コンテンツに人間味を加えられるため、商品の魅力をいっそう引き立てることができます。
たとえば、石けん製造を手がける「森石鹸」では、石けん作りの過程を舞台裏として紹介しています。投稿するコンテンツには一貫して「#手作り石けん」などのハッシュタグを使用し、特定ジャンルの視聴者を効果的に引き付けている点も活用の工夫です。なかには「購入しました」というコメントが寄せられた動画があり、ユーザーが舞台裏コンテンツに魅力を感じ、実際に商品購入に至っている事例も見て取れます。
商品の使い方を説明する
商品の使い方を視覚的に説明することは、ユーザーにとって有益です。アパレルブランドの「パルクロ CHANNEL」は、従業員やインフルエンサーにブランドの衣料品を着用させ、その様子を動画で紹介しています。動画により、ユーザーは実際の着用シーンをより具体的にイメージしやすくなります。使用感や特徴が明確に伝わり、購買意欲を高める効果を期待できます。衣料品やアクセサリーなど、見た目や使い勝手が重要な商品において、動画で紹介する手法は効果的といえるでしょう。
新商品の発売発表に活用する
新製品の発売前後にコンテンツを制作して投稿することで、商品に対する期待感を高めることができます。予告を通じてユーザーの興味関心を引くことができれば、「最新情報を知りたい」といったユーザーがアカウントをフォローすることにつながります。
たとえば「ギズモード・ジャパン」は、最新のテクノロジー製品の紹介を定期的に行っています。一例として、Withings(ウィジングス)の新商品「BeamO(ビーモ)」を紹介する動画では、日本では未発売の商品に対する興味をうまく喚起しています。このような動画を通じて新商品への興味関心を高め、フォロワー数を増やしたり売り上げアップを目指したりすることが可能です。
トレンドを見つけてアイディアを拡げる
TikTokでは、音楽やステッカー、ミーム、チャレンジといったトレンドが次々と生まれています。ユーザーの興味関心を惹きつけるには、こうしたトレンドに乗ることが効果的です。流行の楽曲や音源を聴き、どのようなことに応用できるかを考えましょう。ビジネスと直接関係がない場合であっても「最近の出来事をユーモラスに再現するコンテンツに使えそうだ」といったアイディアから、発想が広がっていくかもしれません。
たとえば、2024年2月頃から流行し始めた「猫ミーム」は多くのユーザーに支持されました。美容系インフルエンサーの「全力痩せ子ちゃん」は、猫ミームを使って元恋人のエピソードを紹介しながら商品を宣伝する動画を投稿し、収益を上げることに成功しています。全力痩せ子ちゃんの動画は、多くの視聴者の共感を呼び、商品への関心を高める結果となりました。
TikTokビジネスアカウントを活用した成功事例
東京カレンダー
月刊誌「東京カレンダー」は、東京都内のグルメ情報を中心に紹介しているTikTokアカウントで、フォロワー数6万人、累計いいね数90万以上の高い人気を誇ります。東京カレンダーは、都内の美味しいレストラン情報に加えて、恋愛や生き方をテーマにした短編ドラマを定期的に発信していることが特徴です。短編ドラマはコンテンツのなかでも人気が高く、多くの動画で数万回を超える再生回数を記録しています。
成功の背景には、強烈なキャラクター設定と1分でも印象に残るシーンの多さがあります。ドラマの性質をうまく活かし、続きが気になる形でコンテンツが終了するように工夫した結果、多くのユーザーの興味を引き、フォロワー数などのエンゲージメントを高めることに成功しました。「東京カレンダー」のアプローチは、短い動画で視聴者の関心を引き続けることの重要性を示しているといえるでしょう。
けんちゃん(あるごめとりぃ)
けんちゃん(あるごめとりぃ)は、都市伝説や怖い話をテーマにしたTikTokビジネスアカウントで、フォロワー数19万人以上、累計いいね数350万以上の人気を誇る成功を収めています。けんちゃん(あるごめとりぃ)の動画は、視聴者の興味を引くために、冒頭でインパクトのある情報を伝えたり、視聴者に問いかけたりする工夫を取り入れています。
さらに、各動画に複数のハッシュタグを付けることで、より多くの人に動画が届くようにしている点も成功した要因のひとつでしょう。このような戦略により、ニッチなカテゴリーにもかかわらず、万単位の再生回数を持つ動画コンテンツを次々と生み出しています。
焼鳥どん
焼鳥どんは荻窪や駒込、西巣鴨に店舗を構える飲食店ですが、TikTokのフォロワー数は25万人を超え、いいね数は1,500万回以上を記録する成功を収めています。成功要因のひとつは、飲食店の日常を描いた「あるあるネタ」の投稿です。飲食店で働いている人の共感や、飲食店で見かける状況をネタにすることで、多くの反響を呼んでいます。実際「あるあるネタ」の動画の多くが10万回を超える再生回数を記録しており、視聴者の共感を呼んでいることがわかります。
ほかにも、ネットミームの「アキネータークイズ」を取り入れた動画や、職場の上司ネタで人気を博している「うめがき」とのコラボレーション動画など、コンテンツを伸ばすための取り組みを積極的に行っている点にも注目です。
このような戦略により、多くの視聴者を引きつけることに成功しています。プロフィールにはフランチャイズやアルバイトの応募フォームへのリンクが設定されており、動画を通じて店舗の集客だけでなく、採用活動にも良い影響を与えていることがうかがえます。
まとめ
TikTokは、若年層をターゲットとするビジネスにおいては特に、その認知度を高めたり売り上げを伸ばしたりするのに効果的なプラットフォームです。TikTokの活用戦略では、トレンドに乗り、魅力的なコンテンツを発信することが重要となります。直接的に商品をアピールすることよりも、TikTokユーザーとの間に信頼される親密なつながりを生み出すことが、ゆくゆくは顧客の獲得や売り上げアップにつながっていくでしょう。
もしネットショップを運営しているなら、TikTokとShopifyを連携することで、ネット販売を効率化も可能となります。無料体験も実施していますので、お気軽にShopifyを使ってみてください。
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よくある質問
TikTok for Businessとは?
TikTok for Business(ティックトック フォー ビシネス)は、動画投稿SNSのTikTokを軸に、認知拡大や顧客獲得といったビジネス活用をサポートするプラットフォームです。運用型のTikTok広告に加えて、アプリ向け広告プラットフォームであるPangle(パングル)も利用することができます。
TikTokビジネスアカウントの料金は?
TikTokのビジネスアカウントの開設には料金がかかりません。ただし、広告を出稿する場合は、掲載費が必要です。
TikTokビジネスアカウントと個人アカウントの違いは?
TikTokビジネスアカウントと個人アカウントは、対象ユーザーが異なります。前者はブランドやビジネスのマーケティングに特化しており、TikTok Creator Marketplace(英語)やCreator Rewards Program(英語)を利用できるほか、投稿した動画コンテンツのインサイト分析などが行えますが、商用楽曲ライブラリの音源しか使えません。一方、後者は一般のユーザーやクリエイター向けで、分析機能を利用できないものの、商用楽曲ライブラリに加えてサウンド・楽曲ライブラリも音源として利用可能です。
TikTokビジネスアカウントを使うメリット・デメリットは?
メリット:
- プロフィールに外部リンクを設置できる
- アカウントのカテゴリー設定ができる
- 広告らしさを感じさせない投稿ができる
- 投稿パフォーマンスを分析できる
デメリット:
- TikTokビジネスアカウントは、著作権の関係で一部の音源や音楽が使えないことがある
- YouTube(ユーチューブ)やInstagram(インスタグラム)と比較すると市場規模が小さい
TikTokビジネスアカウントがバズる方法は?
- トレンドの楽曲や音源、ハッシュタグを使用する
- おすすめページでの表示を狙う
- バズりやすい時間帯に投稿する
- フォロワーとの積極的な交流を図る
- YouTubeやInstagramなどの外部プラットフォームも利用する
- 短時間で興味を惹けるコンテンツを制作する
文:Yukihiro Kawata