通販システムは、単なるカート機能だけでなく、顧客管理、注文管理、配送サポートなど、多岐にわたる機能を備えており、販売プロセス全体を支援します。自社の目的に合ったシステムを選ぶことは、ビジネスの成功において不可欠です。この記事では、これからネット通販を始めたい人や、既存のサイトをより効率的に運営したい人のために、通販システムの中でも導入が簡単なシステムを10個紹介し、それぞれの特徴をまとめました。
通販システムとは
通販システム(通販カートシステム)とは、インターネットを販売チャネルとするネット通販(EC)において、商品選択、決済、在庫管理、商品登録など、オンライン販売に必要な一連の業務を管理するためのシステムです。単なる「カート機能」にとどまらず、顧客管理や注文管理、配送サポートなど、販売プロセス全体をサポートするための幅広い機能を備えています。
ECサイトの運営には、ビジネスの規模や目的に応じた通販システムを選ぶことが重要です。適切な通販システムを導入することで、少ない手間で自社サイトを構築・管理し、業務を効率化できます。
通販システムを比較する際に押さえたい9のポイント
1. 必要な機能がそろっているか
どういった商品をどのように販売するかによって、必要な機能は異なります。決済機能やカート機能だけでなく、自社の運営に必要な機能がすべて搭載されているかどうかを確認しましょう。
例えば、越境ECを視野に入れたECサイトでは、多言語対応や複数通貨への対応、多様な決済方法への対応が必要になるでしょう。商品をサブスクリプション形式で販売するような場合は、月額料金や年会費の支払いに対応しているシステムを選びましょう。
2. カスタマイズできるか
販売形態やデザインを自由にカスタマイズできれば、ブランドに相応しいECサイトを構築できます。システム単体ではカスタマイズができなくても、アプリやプラグインを使用して機能を拡張できる場合があります。自社の理想に近いECサイトを作れるかどうかを事前に確認しておくことが大切です。
3. 事業規模に応じたプランか
初期費用や月額料金、手数料が自社の予算に適したシステムを選びましょう。ビジネスが成長したときに、プランをアップグレードできる柔軟性があるシステムだと安心です。
さらにビジネスの拡大に合わせて、ECサイトの機能を拡張できるかどうかも重要なポイントです。売上や顧客の数が増えてもスムーズに対応できるシステムを選ぶことで、ビジネスに空白の期間を作ることなく、長期的に安定した運営が可能になります。
4. 頼れるサポート体制があるか
通販事業の運営をスムーズに進めるためには、トラブルがあったとき迅速なサポートを受けられるかどうかも重要な要素になります。電話やチャットでのサポートがあると、システムに問題が発生した場合に、すぐに問い合わせることができるので、ビジネスが停止するリスクを減らすことができます。サポートが日本語で提供されていないシステムもあるので、担当者の使用言語に対応しているかどうかも確認しておきましょう。
5. モバイル対応は充実しているか
2023年に総務省が実施した通信利用動向調査によると、72.9%の人がスマートフォンでインターネットを利用しています。このことから、ECサイトについても、モバイルデバイスからの利用が多いことが推測されます。スマートフォンでのスムーズな利用体験を提供できるように、レスポンシブ対応のテンプレートやモバイルフレンドリーなUIが提供されているかどうかを確認しましょう。
6. 複数の販売チャネルに対応しているか
自社ECサイトだけでなく、Amazon(アマゾン)や楽天市場などのマーケットプレイス、Instagram(インスタグラム)やFacebook(フェイスブック)といったSNSなど、複数の販売チャネルに対応できれば、入口が増えて、顧客層が広がります。マルチチャネル戦略で売上を最大化できるだけでなく、顧客にとっての利便性も向上します。
さらに、オフラインでのPOSと連携できる機能があれば、オンラインとオフラインで一貫したショッピング体験を提供するオムニチャネル化も進めることができます。システム内で別のチャネルの在庫管理や受注処理を統合できれば、業務の効率化が期待できます。
7. セキュリティや処理能力は十分か
SSL証明書の取得やPCI DSSへの準拠など、高いセキュリティ対策が施されていることも重要です。セールやキャンペーンなどで大量のアクセスが予測される場合は、アクセスが集中するタイミングで、安定した稼働を維持できるシステムを優先的に選びましょう。
8. マーケティング支援機能が充実しているか
マーケティング支援機能が充実したシステムであれば、新規顧客の獲得や、顧客維持のための施策を行いやすいです。
顧客情報の分析、クーポンやポイントシステムなどのプロモーション機能、メールマーケティング機能、離脱した顧客に対するカゴ落ちメールなどの機能の有無を確認しましょう。Google AnalyticsやSNS広告とスムーズに連携できるとさらに便利です。リマーケティング機能があれば、一度サイトを訪問したユーザーに広告を表示して、再訪を促すこともできます。
新規顧客獲得のためには、SEO対策、リマーケティング、クーポン発行など、集客に役立つ機能を備えているシステムがお勧めです。独自ドメインを取得できるなど、SEO対策に強いシステムであれば、検索エンジン経由での集客が期待できます。
9. マイページや管理機能が見やすく充実しているか
ユーザーにとっての利便性につながるため、マイページが見やすいことが重要です。購入履歴や配送状況を簡単に確認できれば、不要な問い合わせを減らすことにもつながります。
また、管理者側の管理画面が見やすいことも、運営業務をスムーズに進める上で重要です。専門知識がなくても、効率よく在庫、受注、出荷管理ができるシステムを選びましょう。
簡単につかえる通販システム9個の比較
1. Shopify
初期費用:無料
利用料:Basicプラン: 月額換算3,650円、Shopifyプラン: 月額換算10,100円、Advancedプラン: 月額換算44,000円
特徴:
Shopify(ショピファイ)の通販システムは、個人事業主から大企業、国内、海外と、さまざまな事業に幅広く対応しています。専門的な知識がなくてもかんたんに操作でき、カスタマイズも可能です。定期通販やギフトカード販売、無形商品など、多様な販売形態にも対応しています。
Shop Payで簡単に決済できるほか、SNSやAmazonなど多様なチャネルとの連携も可能です。Shopify POSを導入すれば、実店舗とも連携できます。
2. STORES
初期費用:無料
利用料:無料プランあり。ベーシックプラン: 月額2,980円、中小支援プラン: 月額3,300円
特徴:
- アプリインストールで英語対応可能(複数通貨表示は未対応)
- テンプレートは48種類
- 無料で始められる
- 独自ドメイン設定可能
- 決済方法:クレジットカード決済、銀行振込、コンビニ決済、PayPal、PayPay残高、Paidy、楽天ペイ、キャリア決済、代金引換、Amazon Pay
- Instagram、Facebook、Xと連携可能
- STORESレジで実店舗と連携可能できる
STORES(ストアーズ)は無料プランで始められる手軽さが魅力の中小規模事業者向け通販システムです。シンプルなテンプレートで、初心者でも簡単に操作できます。
3. BASE
初期費用:無料
利用料:注文ごとに、決済手数料: 3.6%+40円、サービス手数料: 3%
特徴:
BASE(ベイス)は小規模事業者に適したプランを提供している通販システムです。利用者は4名以下の個人やスモールチームの利用が9割を超えています。最短30分で販売を開始することができ、始めやすいのが特徴です。
ただし、売上金額が大きくなるほど、負担する費用が増える仕組みになっていることに注意が必要です。
4. おちゃのこネット
初期費用:無料
利用料:Startup Plan: 無料、Basic Plan: 月額換算3,960円、Advanced Plan: 月額換算13,200円(決済手数料は、Startup Plan: 6.6%、その他: 3.5%)
特徴:
おちゃのこネットは、初期費用無料でECサイトが始められる通販システムです。多様な機能が揃っていますが、サブスクリプション形式の販売や、予約販売などには対応していません。また、現時点では実店舗との連携に対応していません。
5. カラーミーショップ
初期費用:レギュラープラン: 3,300円、ラージプラン: 3,300円、プレミアムプラン: 22,000円
利用料:レギュラープラン: 月額4,950円、ラージプラン: 月額9,595円、プレミアムプラン: 39,600円
特徴:
カラーミーショップは、国内向けの通販カートシステムです。無料でWordpress(ワードプレス)と連携できるのが特徴です。サポート体制も充実しており、画面を共有してやり取りをすることもできます。
6. makeshop
初期費用:プレミアムプラン: 11,000円、エンタープライズプラン: 11,000円〜
利用料:プレミアムプラン: 月額12,100円、エンタープライズプラン: 月額55,000円〜
特徴:
makeshop(メイクショップ)は大中規模事業向けの通販システムです。基本料金が比較的高額であるため、すでに一定以上の売上があり、安定した運営を求める事業に適しています。サブスクリプション型の販売や、法人向けのBtoB機能もあり、幅広いビジネスニーズに対応しています。
7. 楽楽リピート
初期費用:ライトプラン 68,000円、スタンダードプラン 98,000円、ゴールドプラン 600,000円
利用料:ライトプラン 月額49,800円、スタンダードプラン 月額79,000円、
特徴:
楽楽リピートは、メーカーが直接消費者に商品を販売するD2C型のECに特化したカートシステムです。定期通販で売上を上げていくために必要な、CRM(顧客管理システム)、ステップメール、受注管理などの機能が備わっています。料金内にほとんどの機能が含まれています。1対1のWEB接客ツールなども導入可能ですが、サイトの個別のカスタマイズには対応していません。
8. メルカート
初期費用:立ち上げプラン: 190,000円、定期プラン: 190,000円、おすすプラン: 190,000円、DXプラン 690,000円。
利用料:立ち上げプラン: 月額49,000円、定期プラン: 月額59,000円、おすすプラン: 99,000円、DXプラン 199,000円
特徴:
メルカートは、食品販売に強い通販システムです。賞味期限管理やクール便との連携など、食品販売の運営を効率化するパッケージを提供しています。オンラインとオフラインの連携によって、店舗とネットを横断した販売が可能です。
ほかにもアパレル販売、サブスクリプションなど、業種や販売方法にあわせた機能もあります。料金が高めなので、ある程度の売上が見込める中規模以上の事業におすすめです。
9. らくうるカート
初期費用:ライトプラン: 3,300円、レギュラープラン: 5,500円、アドバンスプラン: 11,000円
登録料:ライトプラン: 月額330円、レギュラープラン: 月額3,300円、アドバンスプラン: 月額14,300円
特徴:
らくうるカートは、ヤマト運輸が提供している通販システムであり、物流との連携がスムーズに行えることが特徴です。在庫管理から配送まで一元管理できるため、配送面でのトラブル対応にも強みがあります。
農作物などの一次産品の出荷に特化したプランがあり、荷物をバンドで結束した場合の送料の計算機能や、日ごとの出荷量が確認できるカレンダー機能、リピーター向けのFAX注文書など、業務に役立つさまざまな機能が提供されています。
まとめ
通販システムは、商品選択から決済、在庫管理、顧客対応まで、EC運営に必要なすべての機能を備えたツールです。システムごとに異なる強みや特徴があるため、販売する商品や事業規模、販売形態などに応じて最適なツールを選びましょう。個人事業主や中小企業に適したプランが充実しているものから、大規模事業に対応した高度な機能があるシステムや、業界特有のニーズに対応したシステムがあります。
システムを比較する際には、機能はもちろんのこと、カスタマイズ性やサポート体制、セキュリティ、モバイル対応、マーケティング機能など、多角的な視点から検討することが重要です。自社に適した通販カートシステムを導入して、スムーズなEC事業運営を実現しましょう。
よくある質問
通販システムとECサイト構築ツールの違いとは?
通販システムが、商品選択、決済、在庫管理、配送など、ECサイト運営に必要なプロセスをサポートするツールである一方で、ECサイト構築ツールは、主にサイトのデザインや立ち上げを支援するための機能を提供しています。
通販システムは、ECサイトの構築機能を含んでいる場合がほとんどのため、一つのサービスで両方の機能を利用できる場合が多いです。
越境ECに適したシステムは?
越境ECには、多言語対応や複数通貨での決済に対応しているShopifyがおすすめです。海外展開を視野に入れたマーケティング機能も充実しています。
Shopifyはサブスクリプション型の販売に対応している?
はい。Shopifyは、サブスクリプション型の販売にも対応しています。
文:Taeko Adachi