越境ECとは、ECサイトを通じて、海外の消費者に向けて商品やサービスを販売することです。越境ECで成功を収めるには、最新のトレンドを捉えることが不可欠です。欠かせません。本記事を通じて、越境ECのトレンドや市場規模を理解し、事業を軌道に乗せましょう。
越境ECのトレンド4選
スマートフォンでの買い物
スマートフォンやタブレットを使った買い物、いわゆる「モバイルコマース」がトレンドになっています。新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの人がオンラインでの買い物を好むようになりましたが、その傾向は現在も続いています。特にスマートフォンでの買い物は、ブランドの専用アプリや5Gの普及、SNSを通じたショッピングにより、さらに便利になっています。
一例として2022年には、Shopifyを利用する店舗におけるモバイル経由の購入がオンライン売上の69%を占めていました。また、Global Industry Analysts(グローバル インダストリー アナリスト)の調査では、モバイルコマースの市場規模は2023年までに2兆4,000億米ドルになると予測されています。
このような背景を踏まえると、今後もモバイルコマースはトレンドとして注目を集めることになると考えられます。スマートフォンからでも商品を購入しやすいように、越境ECサイトを開設・改善するとよいでしょう。
マルチチャネルの利用
マルチチャネルとは、さまざまな種類のメディアやプラットフォームを所有することです。
マルチチャネルを活用することで、商品・サービスの販売や集客を効率よく行えます。たとえば、ECサイトや実店舗に加え、Instagramで集客したり、TikTokで商品を紹介したりするソーシャルコマースの活用などが考えられます。
広告媒体として、テレビ広告の形態が変化していることも押さえておきましょう。新たなチャネルとして注目されているのは「コネクテッドTV広告」です。コネクテッドTV広告は、HuluやYouTubeなどのストリーミングサービス上で展開される広告で、従来のテレビ広告と同等、もしくはそれ以上の効果があると考えられています。
運動靴を販売するHoka(ホカ)はコネクテッド広告を行ったことで、Webサイト訪問者数が大幅に増え、SNSのフォロワー数も急増しました。
複数のチャネルを組み合わせることで、幅広い顧客層に広告を届けられるため、ブランドの認知度や販売促進を図ることができます。
アジア太平洋の売上拡大
越境ECに取り組むにあたって、アジア太平洋地域のEC市場が急激に成長していることは理解しておきましょう。
Statista(スタティスタ)の調査(英語)では、2023年でEC市場における売り上げの成長率が最も高かった10か国のうち、6国がアジア太平洋地域からランクインしていました。
- 第2位:フィリピン
- 第3位:マレーシア
- 第6位:インド
- 第8位:日本
- 第9位:ベトナム
- 第10位:中国
特にインドは、2024年度の市場規模が1,129億3,000万米ドルと推定されており、2029年までに2,990億1,000万米ドルに達するとMordor Intelligence(モルドールインテリジェンス)の調査で予測されています。
アジア太平洋におけるEC市場の急成長に目を向け、多くの企業が参入しています。成長率の高い国をターゲットにするのも有効な戦略のひとつです。
ローカル言語でのコンテンツ作成
越境ECを成功させるには、消費者が親しみやすいコンテンツを提供することが不可欠です。そのためには、消費者の第一言語で越境ECサイトを利用できるようにする必要があります。FLOW(フロー)の調査(英語)では、消費者は第一言語で利用できないサイトからの購入を避ける傾向があることが明らかになっています。
消費者にとって馴染みのある言語で越境ECサイトを利用できるようにすることで、安心して購入してもらえます。複数言語の設定は大変な作業ではありますが、売り上げを伸ばすためには重要です。
Shopify Markets Proを活用すれば、サイトを複数の言語に簡単に翻訳することが可能です。世界各国の顧客があなたのECサイトを安心して利用できるようになるので、売り上げアップが期待できます。
越境ECの市場規模
越境ECの市場規模は、今後も増加すると予測されています。Facts and Factors(ファクト アンド ファクターズ)の分析(英語)によると、2021年時点での市場規模は約7,850億米ドルと推計されており、2030年には約7兆9,380億米ドルに達する見込みです。
今後9年間は、毎年約26.2%ずつ越境ECの市場規模が大きくなっていくと予測されていることがわかります。
アジア越境ECにおける注目の商品カテゴリー
経済産業省が発表した「電子商取引に関する市場調査報告書」によると、EC市場規模が最も大きいのは中国で、全体の半分以上を占めています。中国以外のアジア諸国も複数ランクインしており、日本が第4位、韓国が第5位、インドネシアが10位です。
市場規模の大きいアジア諸国で売れている日本の商品を把握し、今後越境ECサイトで販売する商品を考える際に役立ててください。
中国
中国の越境EC市場では、日本商品の人気が高まっており、特に美容コスメ、衣料品、食料品の3つのカテゴリが注目されています。美容コスメでは、スキンケア製品やメイクアップ商品が品質の高さと肌に優しい成分が高い評価を受け、敏感肌などの悩みを持つ消費者から支持を集めています。
日本のファッションブランドは、独自のデザイン性と品質から、特に若者を中心に中国で人気です。また、日本のお菓子やインスタント食品、アルコールといった食料品も、種類の豊富さや独創性で人気を博しています。
上記を踏まえると、日本独自のデザイン性を持つアイテムや高品質な商品が中国でよく売れていることがわかります。中国向けに越境ECをするなら、ジャパニーズウイスキーなどの日本らしさが強く出ている商品を販売するとよいでしょう。
韓国
韓国市場では、日本の食品・コスメ・キャラクターグッズがよく売れています。コスメ分野では、日本で人気のあるシュウウエムラのハードフォミュラやビオレUVの日焼け止めなどが支持されています。
食品分野では、特に日本のスイーツが韓国で大人気です。東京ばな奈や銀座のいちごケーキ、白い恋人やロイズのチョコレートなど、日本ならではの味わいが韓国の消費者にも愛されています。
さらに、日本のアニメ文化は韓国でも根強い人気があり、ポケモンやクレヨンしんちゃん、サンリオなどのアニメグッズが数多くのファンに購入されています。
中国と同様に、韓国でも日本ならではの商品が購入される傾向があるといえるでしょう。特にアニメグッズのなかには、韓国で販売されていないものも多くあります。韓国向けに越境ECを行う場合、アニメやキャラクターグッズの販売を視野に入れるとよいかもしれません。
インドネシア
インドネシアの越境EC市場は第10位で、中国・韓国と比較すると低いものの、著しい発展を遂げています。インターネットユーザーが8,000万人を超え、世界でもトップクラスのEC化率を誇っているのが特徴です。
インドネシアでは、日本の生活用品や雑貨、化粧品が数多く取引されています。全体的な傾向としては、電化製品やおもちゃ、アパレル、家具がよく売れています。また、インドネシアでは中間層が増えており、日本ブランドのアパレル商品の購入を検討する消費者が増加すると予想されています。
このようなインドネシア市場の動向を踏まえると、生活用品や雑貨、アパレル関連の商品にチャンスがありそうです。また、インドネシアの消費者はSNSを通じた口コミをもとに購入したい商品を選ぶ傾向があることも理解しておきましょう。
アメリカ越境ECにおける注目の商品カテゴリー3選
食料品
アメリカのEC市場では、食料品のオンライン販売が注目を集めています。デジタル化が進み、消費者が食料品店のWebサイトを主な購入経路として利用するようになったためです。さらに、新型コロナウイルスの流行やデリバリーサービスの普及も、オンライン販売を促進させる一因となりました。
事業者側も消費者のニーズに応えるためにデジタル化を進め、リアルタイムでの在庫管理や迅速な配送などを可能にする技術やプラットフォームを導入しています。
アメリカ向けの越境ECに注力する際は上記の変化を踏まえ、アメリカでは購入するのが難しい日本の食料品を販売するといった戦略を取るとよいでしょう。
健康と美容
アメリカのEC市場において、健康や美容に関する商品も消費者の間で強い関心を集めています。新型コロナウイルスの流行で在宅時間が増え、健康やフィットネスに対する意識が一層高まったことが影響していると考えられます。
このような背景から、ビタミンやサプリメント、スキンケア商品、フィットネス器具などのオンライン販売が急増しています。
健康と美容に対する高い意識を持つ消費者が増えているため、今後も健康・美容分野の商品は売れ続けることが予想されます。
中古品やビンテージ品
Z世代の若者を中心に、アメリカのEC市場では中古品やビンテージ品の売買が新たなトレンドとして注目を集めています。Z世代は環境や社会に対する意識が高く、新品を購入するよりも、リサイクルできる商品を選ぶ傾向があるためだと考えられます。
さらに、Z世代は自己表現を重要視する傾向もあり、ありふれたものではなくユニークで希少価値のある商品を求めることも、中古品やビンテージ品が人気の理由となっています。
環境や社会に配慮している商品はZ世代に限らず、幅広い世代に受け入れてもらいやすいです。中古品やビンテージ品の販売を越境ECを通じて行う際は、購入する消費者の嗜好を捉えて、環境に配慮した配送手段などを取り入れるのも効果的です。
日本からの越境ECでよく売れる商品トレンド
- レディースのアパレル・バッグ・ブランド小物
- 時計や時計のパーツ、アクセサリー
- トレーディングカード
- カメラレンズ・フィルター
- アニメアート・キャラクターグッズ
- フィルムカメラ
- 自動車パーツ
- デジタルカメラ
- メンズのアパレル・バッグ・ブランド小物
- ビデオゲーム本体
イーベイ・ジャパン株式会社は、2023年の7月から9月に日本からの越境ECで特に売れた商品として、上記のカテゴリーを発表しました。なかでも特に売り上げを伸ばしたのが、トレーディングカード・自動車パーツ・デジタルカメラです。
トレーディングカード
トレーディングカードの市場は、日本の越境ECで注目を集めています。特にポケモンカードが前年同期比で54%の成長を遂げるなど、大きな伸びを見せています。
売り上げが伸びた理由としては、ポケモンカード世界大会の開催やONE PIECE(ワンピース)の実写化の影響が考えられるでしょう。また、PSA(Professional Sports Authenticator)と呼ばれる国際的なカード鑑定会社が日本でサービスを開始したことも、市場拡大に貢献しています。
世界中で人気を博している遊戯王が2024年に25周年を迎えることもあり、トレーディングカードの需要は引き続き高い状態が続くと予想されます。海外におけるトレーディングカードの取引額が高いことや円安の影響を踏まえると、越境ECでの参入を考えてみるとよいかもしれません。
自動車パーツ
日本からの越境EC市場では、自動車パーツの販売が前年同期比で53%拡大しています。特に注目されているのは、80年代から90年代の国産スポーツカーの純正パーツや世界的に認知されているアフターマーケットパーツです。
アフターマーケットパーツとは、自動車の製造元ではなく、第三者のメーカーが製造したパーツのことを指します。交換や修理の部品、車体のカスタマイズに使用されることが多いです。アフターマーケットパーツのなかでも「GTR R33」の純正ヘッドライトは、約190万円の高価格で取引されるなど、海外からの強い需要が見受けられます。
自動車パーツに対する需要の高まりを捉え、eBayなどのプラットフォームでは消費者が自身の車に合ったパーツを簡単に見つけられるようにシステムを改良するなど、取り組みに力を入れています。自動車パーツのなかには重量のある部品もありますが、国際配送会社が充実した配送サービスを行っているので、安心して取引できます。
デジタルカメラ
デジタルカメラ分野は、前年同期比で48%の売上アップを見せました。特にコンパクトカメラは前年比で101%の伸びを記録し、約2倍の成長を遂げています。
日本にはNikon(ニコン)などの世界でも有数のカメラメーカーがあり、円安の影響を受けて世界各国で購入されやすくなったことが高い成長率につながったと考えられます。なかでもNikonの望遠レンズは日本からの輸出品として過去最高額の35,000米ドル(約507万円)で取引されるなど、高単価商品のニーズが拡大しています。
越境ECを成功させるコツ
- 適切な価格設定
- 多様な支払いオプションの準備
- カスタマーサポートの国際化
- 配送と物流
越境ECを成功させるために、上記4つの戦略を取り入れることをおすすめします。海外へ商品を販売する仕組み上、世界各国に暮らす人々にとって利用しやすいサービスを提供することが求められます。
適切な価格設定
越境ECにおける適切な価格設定は、重要な戦略のひとつです。価格の提示方法は、地域の文化や価格に対する認識によって異なります。
たとえば、西洋では価格が「9」で終わることが一般的ですが、中国では概数を好む傾向があります。日本の感覚だと、10,000円より9,998円の表記の方が桁数が少なくなり、心理的にも安く感じるでしょう。
このような細かな違いに注意を払うことが、ターゲット市場での成功につながります。
多様な支払いオプションの準備
越境ECでは、多様な支払いオプションを準備することが不可欠です。ひとつの支払いオプションしか準備していない場合、準備した支払い方法で決済ができない国では商品販売ができなくなってしまいます。デビット・クレジットカードに加えて、Apple Pay(アップルペイ)やGoogle Pay(Googleペイ)などのモバイルウォレット、後払い決済など、さまざまな方法を準備することで、より多くの消費者に購入してもらえるでしょう。
また、いくつかのECプラットフォームでは、支払いオプションを簡単に統合できる機能を提供しています。たとえば、ShopifyのShopify Paymentsを支払い方法に設定すると、自動的にApple PayやGoogle Payなどに対応することが可能です。
さまざまな市場のニーズに対応するためにも、支払い方法は複数準備するようにしましょう。
カスタマーサポートの国際化
越境ECにおいて、カスタマーサポートを複数の言語で利用できるようにすることは、各国の消費者に安心感を抱いてもらうための有効な手段です。
カスタマーサポートでは電話やメール、ライブチャットなどを活用することが一般的です。いずれかひとつでも、消費者の第一言語でサポートを提供できるようにすることで、消費者からの信頼感や安心感は大きく高まるでしょう。最近は翻訳ツールが発展しているので、メールで多言語サポートを導入することをおすすめします。
言語の壁を乗り越え、一人ひとりに寄り添ったサポートを提供することで、より多くの消費者に購入してもらえるようになるでしょう。
配送と物流
越境ECにおいて配送と物流は、顧客満足度に直結する重要な要素です。国際配送の際は、特にコストと利益のバランスを考える必要があります。たとえば、10,000円以上購入した場合は送料を無料にするといった戦略は効果的です。消費者にとっては送料の負担がなくなり、販売者にとっては平均注文額(AOV)の向上にもつながります。
また、すぐに商品を届けてもらいたいと考える消費者のために、速達などの追加オプションも準備できるとよいでしょう。販売先の国によっては、関税や税金に関する情報提供も必要です。また、アルコールやタバコなど、特定商品の購入が認められていない国もあります。配送前に、商品の販売に問題がないかどうかをしっかりと確認しましょう。
まとめ
スマートフォンによるショッピングやマルチチャネル戦略の活用、アジア太平洋地域の市場の拡大、そして現地言語でのコンテンツ提供が越境ECのトレンドです。事業者はトレンドを理解し、適応することが求められます。
日本からの越境ECでは、トレーディングカードや自動車パーツ、デジタルカメラが特に高い人気を誇っています。また、中国や韓国などのアジア市場では、美容コスメや食品、キャラクターグッズが注目されていることも押さえておきましょう。
越境EC事業を成功させるには、適切な価格設定や多様な支払い方法、カスタマーサポートの国際化、そして効率的な配送と物流の確立が不可欠です。さまざまな要素を考慮して、消費者のニーズに応えることが、グローバル市場での競争力を高めるうえでカギとなります。
越境ECを始めるなら、Shopifyをご活用ください。ECサイトの開設が容易なだけでなく、50の言語・130の通貨に対応しているので、さまざまな国で利用することが可能です。また、サイトを多言語に翻訳するアプリも準備しています。無料体験も実施していますので、ぜひお試しください。
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よくある質問
越境ECで何を売るべきですか?
- レディースのアパレル・バッグ・ブランド小物
- 時計や時計のパーツ、アクセサリー
- トレーディングカード
- カメラレンズ・フィルター
- アニメアート・キャラクターグッズ
- フィルムカメラ
- 自動車パーツ
- デジタルカメラ
- メンズのアパレル・バッグ・ブランド小物
- ビデオゲーム本体
イーベイ・ジャパン株式会社が公表したデータによると、2023年7月から9月にかけて、日本からの越境ECでよく売れた商品ランキングは上記のとおりです。どのカテゴリーの商品を売るべきなのかを考える際は、よく売れている商品から着想を得るとよいでしょう。
アメリカ越境ECのトレンドは何ですか?
- 食料品
- 健康と美容
- 中古品やビンテージ
アメリカにおける越境ECのトレンドは、上記のとおりです。上記に関連する商品は比較的売れやすいので、類似する商品やサービスを提供している場合は、アメリカへの越境ECを検討してみる価値があります。
越境ECが盛んな国はどこですか?
- 中国:50.4%
- アメリカ:18.4%
- イギリス:4.5%
- 日本:3.1%
- 韓国:2.5%
- ドイツ:2.1%
- インド:1.7%
- フランス:1.7%
- カナダ:1.5%
- インドネシア:1.4%
- その他:12.8%
eMarketerの調査によると、EC市場の規模が大きい国は上記のとおりです。国名の右隣にある数値は、EC市場のシェア率を示しています。数値が高いほど、ECが活発に利用されていることを表しています。
文:Yukihiro Kawata