会社・法人設立には節税効果や、社会的信用度を得られるなどのメリットが多数あります。
この記事を読むことで、会社設立の全体像を把握し、具体的な手順や必要な書類、会社設立に必要な期間や費用、会社設立時に活用できる補助金・助成金を把握することができます。
これらの情報を事前に知ることで、これから会社設立をするときに最短でスムーズに手続きを進めることができます。
目次
- 会社・法人設立の方法
- 会社設立の流れと全体像
- 会社・法人設立の手順
- 会社設立後の手続き
- 会社設立するまでにかかる期間の目安
- 会社設立に必要な費用
- 会社設立時に使える補助金・助成金について
- まとめ
- よくある質問
会社・法人設立の方法
会社を設立したい場合、一体どのような方法があるのでしょうか?
会社を設立するには、基本的に司法書士を雇うか自分で行う2パターンをおすすめします。
司法書士を雇う
会社設立のために司法書士に法人登記申請に必要な書類の作成や、法務局での窓口の申請代行依頼をすることができます。
定款の作成・認証、法人登記申請書類の作成を税理士や行政書士に依頼することもできますが、「法務局の窓口での申請手続きの代行」は「司法書士のみ」ができる独占業務となっておりますので注意しましょう。
司法書士に会社設立の手続き代行を依頼する場合の相場は、一般的に約5万円から15万円となっており、会社設立の申請手続きが手間だと感じる場合は司法書士に依頼するのがベストでしょう。
自分で会社設立の申請書類を準備し申請
会社設立の手続きは自分で行うことも可能で、その場合は費用を節約することができます。
従来の書面のみでの申請もできますし、オンラインでの申請もできます。
令和3年2月15日から、「ファスト・トラック・オプション」と呼ばれる電子定款認証の設立登記の申請をオンラインで同時に行うことが可能になり、一定の条件を満たせば申請から24時間以内に登記完了できる制度が始まりました。
オンラインで行える「法人設立ワンストップサービス」を使えば、これまでに必要だった複数の各種手続きを行政機関毎にそれぞれ個別に提出する必要もなくなり、これらの手続きを一括で終わらせることができます。
会社設立の流れと全体像
それでは、会社設立の流れと全体像を把握しましょう。
以下が会社設立と設立後に必要な手続きまでの全体の流れです。
- 会社の基本事項を決める
- 印鑑3種類(実印、銀行印、角印)を用意
- 定款を作成し公証人から認証を受ける(公証役場で認証を受ける)
- 発起人個人の口座へ資本金の振込をし、払込証明書を作成
- 法務局へ法人登記申請(法務局へ直接行く、郵送、オンライン申請)
- 法務局から書類を受け取る(登記事項証明書、印鑑証明書、印鑑カード)
- 会社の法人口座の開設
- 年金事務所、税務署、都道府県、市区町村役場へ書類提出
会社・法人設立には多くの必要書類や手続きが必要となりますが、事前準備をしっかり行えば会社設立はスムーズに進みます。
会社・法人設立の手順
会社・法人設立の全体像を把握したところで、次は具体的な手順や必要書類を確認していきましょう。
1. 会社の基本事項を決める
会社を設立するために、まずは会社のおおまかな主旨や基礎情報を決めましょう。
会社設立に必要な会社の基礎情報は以下です。
- 商号(会社の名前)
- 事業内容(将来的に考えていることも含める)
- 本店の所在地(会社の住所)
- 会社の形態(株式会社、合同会社、合資会社、合名会社)
- 事業年度
- 発起人(出資者)
- 資本金の額
- 発行可能株式総数
- 公告方法
- 株式譲渡制限の有無
- 役員報酬の金額
注意点として、株式会社でも合同会社でも資本金は1円からでも設立可能ですが、資本金額は信用度にも関わるため、一般的には初期費用+3ヶ月分の事業運転資金を資本金として確保することをおすすめします。
2. 印鑑3種類を用意(実印、銀行印、角印)
会社設立時に必要な印鑑は「実印」、「銀行印」、「角印」の3種類です。
実印とは
「実印」とは代表者印であり、会社の意思決定を示すための重要な印鑑となります。
印鑑の大きさは10.0mm以上、30.0mm以内の正方形におさまるものと規定されています。
銀行印とは
「銀行印」とは会社の法人口座の開設時に必要となる印鑑です。銀行印のサイズに規定はありませんが、一般的に実印より一回り小さく作られます。
角印とは
「角印」とは「会社印」や「社判(しゃばん)」とも呼ばれており、請求書、領収書、納品書などに押印され、書類がその会社によって発行されたと証明する役割を持つ印鑑となっています。
角印のサイズにも規定はありませんが、一般的に21.0mm~24.0mmで作られています。
実印と角印の違いと使い分け
実印も角印も法的効力は同じで角印の方が日常的に使う場面が多いですが、官公庁への書類提出の際や重要な契約書には「実印」を押す必要があります。
実印を偽造されるリスクを減らすために「実印」と「角印」の併用はなるべく避けましょう。
3. 定款の作成・認証を行う
次に手順「1」で決めた会社の基本事項をもとに、これらの情報をまとめた会社の概要となる定款の作成を行います。
定款の作成・認証には以下の7つを用意する必要があります。
定款作成・認証のために用意するもの |
1. 定款を3部 |
2. 発起人全員の実印 |
3. 発起人全員の3ヶ月以内に発行された印鑑登録証明書を各1通 |
4. 代理人による定款認証の場合には、「委任状」と「代理人の印鑑証明書又は自動車運転免許証等」 |
5. 4万円の収入印紙(電子定款の場合は不要) |
6. 現金3万円以上の定款認証手数料* |
7. 現金250円×定款の枚数分の謄本代 |
定款作成後、株式会社の場合は、公証人役場で定款の認証を受ける必要があります。そのため、本店所在地がある公証役場に連絡を取り、公証人と訪問の日時を決める必要があります。
一方で、合同会社の場合は、この公証人による定款認証は不要です。
定款のテンプレートは法務局の「株式会社設立登記申請書」の7ページにあるので参考にしてみてください。
(*)2022年1月から定款認証の手数料が以下のように変わりました。
定款認証手数料の改定 (2022年1月から) |
資本金100万円未満:30,000円 |
資本金100万円以上300万円未満:40,000円 |
資本金300万円以上:50,000円 |
4. 資本金の振込後に払込証明書を作成
定款の認証が確定した後、発起人の個人銀行口座に資本金を振り込み、払込証明書を作成する必要があります。
以下の4ステップで払込証明書を作成しましょう。
1. 発起人個人の銀行口座に資本金を振り込む
・発起人が複数いる場合は、発起人総代(代表取締役)の口座に振り込んでください。
・通帳に出資者の名前が表示される必要があるため、預け入れではなく「振込」であることに注意しましょう。
2. 銀行口座の通帳の明細ページをコピーする
・以下の3点をコピーします。
①「通帳の表紙」
②「表紙裏(氏名、支店番号、銀行印等)」
③「振込の内容が記載されているページ」
・インターネットバンキングを利用していて通帳がない場合は、以下の項目が分かる画面をプリントアウトして下さい。
①「銀行名」
②「預金の種類」
③「口座番号」
④「口座名義人」
⑤「振込金額」
3. 払込証明書を作成する
・払込証明書のテンプレート等を用いて、以下の項目を記載した払込証明書を作成しましょう。
①「代表取締役の氏名」
②「商号(会社名)」
③「本店所在地」
④「日付」
⑤「払込をした金額の総額」
⑥「設立時発行株式数」
⑦「1株の価額」
・代表取締役個人の実印ではなく、必ず会社の実印を押印して下さい。
4. 払込証明書と通帳コピーをホッチキスで綴じる
・以下の順番で、払込証明書が上になるように左端2箇所をホッチキスで止めます。
① 払込証明書→②通帳の表紙のコピー③→通帳の表紙裏のコピー→④振り込み の内容が記載されているページ
・各見開きのページに会社の実印である代表者印を押印して下さい。
払込証明書のサンプルは法務局のホームページの下部に記載されているPDF、あるいはWordから確認できます。
5. 法人登記申請を行う
法務局へ以下の必要書類を提出して、会社を登記することによって会社を設立することができます。
法務局で登記申請の際に必要な書類 |
登記申請書 |
定款 |
印鑑届書 |
設立時代表取締役の印鑑証明書 |
発起人の決定書 |
就任承諾書 |
設立時代表取締役の就任承諾書 |
本人確認証明書 |
出資金の払込みを証する証明書 |
資本金の額の計上に関する証明書 |
登録免許税納付用台紙 |
「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R |
これらの書類を提出した日が会社の設立日となります。
「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R」の詳細については法務局のホームページの「商業・法人登記申請における登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について」で詳しく説明されています。
会社設立後の手続き
法務局から書類を受け取る
会社の登記完了後に、できるだけ早めに法務局へ出向いて以下の書類を集めに行きます。
- 登記事項証明書
- 印鑑証明書
- 印鑑カード
登記事項証明書は、会社設立後の手続きで必要な場面が多いので、複数枚取っておくことをおすすめします。
年金事務所への書類提出(会社設立5日以内)
法務局で必要書類を受け取った後は、年金事務所へ行き以下の必要書類を提出しましょう。会社設立から5日以内に書類を提出する必要があるので、スケジュールをしっかり確認しましょう。
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届
健康保険被扶養者(異動)届は従業員に扶養家族がいる場合、提出が必要な書類です。
健康保険・厚生年金保険新規適用届は登記事項証明書が添付書類として必要となるので、法務局に最初に行かないと年金事務所への書類提出はできません。
「健康保険・厚生年金保険新規適用届」と「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の書類や記入例はこちらの日本年金機構のホームページから確認できます。
健康保険被扶養者(異動)届はこちらの日本年金機構のホームページから確認して下さい。
また、日本年金機構のホームページから年金事務所の場所も検索できます。
税務署へ書類提出(会社設立2ヶ月以内)
次に法人税の手続きを行うために税務署へ必要書類を提出します。
必須書類
- 法人設立届
- 定款の写し
- 設立時の賃借対照表
- 株主名簿の写し(株式会社の場合)
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 青色申告の承認申請書
必要に応じての追加書類
- 源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書
- 棚卸資産の評価方法の届出書
- 減価償却資産の評価方法の届出書
- 消費税課税事業者選択届書
これらの書類はそれぞれ提出期限が違うので、国税庁のホームページにある「税務手続に関する主な書類の提出時期の一覧」から確認して自分の会社に必要な書類や提出期限を確認しましょう。
管轄の税務署の所在地はこちらの国税庁のホームページから調べることができます。
都道府県税事務所と市区町村役場へ書類提出(地域によって提出期限が異なる)
法人住民税・法人事業税に関する手続きは各都道府県税事務所と市区町村役場で行います。
提出する書類は以下です。
- 法人設立届書
- 定款の写し
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
提出先は、会社の本店がある都道府県税事務所となります。
そして、提出期限は各都道府県によるので提出先の都道府県税事務所の公式サイトなどで確認を取りましょう。
市区町村役場への提出の場合は、地域によっては義務ではないところもあるので提出する前に確認をとっておきましょう。
ハローワークへ書類提出(従業員を雇用した10日以内)
従業員を雇う場合は労働保険(労災保険・雇用保険)に加入する必要があります。
そのためハローワークと労働基準監督署への書類提出が必要となります。
従業員を雇用しない場合は提出義務がありませんが、1人でも雇う場合は以下の書類提出が必要となっています。
ハローワークには以下の書類を提出する必要があります。
- 雇用保険適用事業所設置届
- 登記事項証明書
- 雇用保険被保険者資格取得届
管轄のハローワークの場所はこちらの厚生労働省のホームページから検索できます。
労働基準監督署へ書類提出(従業員を雇用した翌日から10~50日以内)
労働基準監督署へは以下の書類を提出する必要があります。
- 労働保険 保険関係成立届
- 登記簿謄本
- 労働保険 概算保険料申告書
- 就業規則(変更)届
- 適用事業報告
- 時間外労働・休日労働に関する協定届
管轄の労働基準監督署を探すにはこちらの厚生労働省のホームページからお探し下さい。
会社の法人口座の開設
上記で紹介した必要書類を提出するのと並行して、会社の法人口座も開設しておきましょう。
会社の法人口座とは会社の法人名義の口座であり、取引先とのお金のやり取りや会社名義のクレジットカードを作成するときなど、必要となる場面が多いです。
法人口座があることによって、社会的信用度が上がり、会社の財務状況も把握しやすくなるので法人口座を開設することをおすすめします。
法人名義の口座開設の際に必要となる書類は以下です。
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
- 定款の写し
- 会社の印鑑証明書
- 会社の実印
- 銀行印として使用する印鑑
- 代表者の身分証明書
会社設立するまでにかかる期間の目安
ここまでで確認してきた書類や手続きは膨大な量となりますが、会社設立までにおおよそどれくらいかかるのでしょうか?
会社設立には一般的に約2週間から1ヶ月かかります。登記完了までには1週間ほどの時間が必要です。
もし、定款認証と設立登記をオンライン同時申請した場合は24時間以内に設立登記が終わります。
最短で進めるためには、上記で確認した会社設立前の書類集めや設立後に必要な書類の提出期限と書類を把握しておく必要があります。
法人設立ワンストップサービスでオンライン申請すれば以下の手続きをオンラインで24時間365日いつでも行えます。
パソコンの作業に慣れていて、最短で会社設立の手続きを終えたい人はこのオンラインサービスを使うことも検討しましょう。
以下が法人設立ワンストップサービスで行える手続きです。
- 国税・地方税に関する設立届
- 雇用に関する届出(年金事務所・ハローワーク)
- 定款認証・設立登記
- GビズIDの発行
参考:国税庁 「法人設立ワンストップサービスの対象が全ての手続に拡大されました」
会社設立に必要な費用
会社設立に必要な費用は会社形態と専門家に依頼する場合で異なります。
株式会社設立の費用
株式会社の設立を自分で行う場合は、合計約24万円2千円程です。
費用の内訳は以下です。
- 登録免許税 最低15万円
- 収入印紙代 4万円 (電子の場合不要)
- 公証人役場での定款認証代 約3万円〜*
*2022年1月から定款認証の手数料が以下のように変わりました。
定款認証手数料の改定 (2022年1月から) |
資本金100万円未満:30,000円 |
資本金100万円以上300万円未満:40,000円 |
資本金300万円以上:50,000円 |
合同会社設立の費用
合同会社の設立を自分で行う場合は、約10万円程です。
費用の内訳は以下です。
- 登録免許税 最低6万円
- 収入印紙代 4万円(電子の場合不要)
会社設立を専門家に依頼する場合の費用
一方で株式会社の設立を司法書士などの専門家に依頼する場合は、これらの費用に加えて司法書士への報酬として10万円から30万円が相場となっています。
司法書士に会社設立の代行を依頼すると、具体的に以下の業務を代行してもらえます。
- 会社の定款作成
- 会社の定款認証手続き
- 会社の登記申請の書類作成
- 会社の登記手続き
依頼する場合は、紙ではなく電子定款にすることで4万円の収入印紙代を節約することができます。
また、冒頭でも紹介したように、会社設立の代行を依頼するときは、「法務局の窓口での申請手続きの代行」は「司法書士のみ」ができる独占業務となっています。
会社設立の手続きを全て代行したい場合、行政書士や税理士ではなく、時間を節約するためにも司法書士に依頼することをおすすめします。
会社設立時に使える補助金・助成金について
どちらも返済不要な補助金と助成金を活用することで、会社の事業運用に役立ちます。
会社設立時に多くの費用がかかるので、利用できそうな補助金や助成金があれば積極的に活用しましょう。
補助金と助成金の違い
助成金は一定の条件を満たせば給付されますが、補助金の方がハードルが高く「使用用途」や「事業内容」などの審査に通った場合のみ給付されます。
代表的な補助金
代表的な補助金は以下の4つです。
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- ものづくり補助金
- 創業支援等事業者補助金
この他にも経済産業省のホームページで様々な補助金と活用例も紹介されているので参考にしてみて下さい。
代表的な助成金
代表的な助成金は以下の5つです。
- キャリアアップ助成金
- 両立支援等助成金
- 地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ型)
- 特定求職者雇用開発助成金
- 中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)
これらの他にも補助金ポータルのホームページから補助金および助成金を検索することができます。
まとめ
会社を設立するメリットは多くありますが、会社・法人設立では個人事業主と違って多くの書類や手続きが必要となってきます。
会社の登記を終えても、会社設立後の手続きとして提出期限に気を付けながら年金事務所、税務署、市区町村、ハローワーク、労働基準監督署へ必要書類を提出しなければなりません。
この記事で紹介した会社設立の流れと全体像、そして必要書類を知っておくことで会社設立をする際にスムーズに、そして最短で会社設立の手続きを始められるはずです。
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よくある質問
会社を設立するには何をする必要がある?
① 会社の基礎情報を決める
② 定款の作成後、認証を公証役場で受ける
③ 資本金を振込み、払込証明書を作成する
④ 法務局へ法人登記申請する