マルチチャネル戦略の導入は、あらゆるビジネスにとって必要不可欠なものとなっています。「強いブランド」は、お客様がいつも時間を費やしている場所で接点を持つことに成功しています。
こうしたブランドは優れたショッピング体験を提供し、強力なブランド・アイデンティティを確立しています。自分たちの管理するネットショップで商品を販売することでカスタマーエクスペリエンス全体をプロデュースし、ビジネスのレジリエンス(回復力)を生み出しているのです。
販売チャネルごとの特性をはじめに正しく理解することで、これまでアクセスしにくかったお客様へのアプローチが可能となるだけでなく、お客様とより深いつながりを築くことができるようになります。
この記事では、さまざまな種類の販売チャネルを掘り下げ、長期的にあなたのビジネスのレジリエンスを高める方法をご紹介します。
販売チャネルとは
販売チャネルとは、マーケティングチャネルの1つで、顧客に商品を販売する場所や方法のことをさします。具体的には、実店舗やネットショップ、さらにはソーシャルメディアのマーケットプレイスなどをさします。
商品の特性やターゲットによって最適な販売チャネルが異なるため、売上を最大化するには販売チャネル戦略を入念に練ることが大切です。
販売チャネルの種類
販売チャネルには、従来型のマーケットプレイスと新時代のマーケットプレイス、小売と卸売、そして独自のネットショップなどがあります。販売チャネルごとの長所と短所は後ほど詳しく説明しますが、まずは全体象を整理しておきましょう。
従来型のマーケットプレイス
Amazon(英語)、Etsy(英語)、eBay(英語)、Walmart Marketplace、Google Shoppingなどは、従来型のマーケットプレイスの代表格です。これらのチャネルの特徴は幅広い商品を提供している点で、ほとんどの場合、お客様は購入したいブランドではなく、購入したい商品で検索します。それぞれのプラットフォームが保有している顧客ベースにアクセスできる一方、あなたはカスタマーサービスやフルフィルメントの速さに対するコントロールを諦め、マージンで競争する必要があります。
新時代のマーケットプレイス
新時代のマーケットプレイスは、ショッピングも可能なコンテンツ主導型のプラットフォームを指します。Instagram、TikTok、Facebook、Pinterestなどのソーシャルメディアがその代表格ですが、Spotifyのような音楽ストリーミングサービスも含まれます。これらのマーケットプレイスが販売チャネルとして成功している理由のひとつは、買い手となるユーザーがすでにそこにいるからです。それぞれのプラットフォームに [購入] ボタンを追加することで、ユーザーがすでに時間を費やす場所がマーケットプレイスへと変貌するのです。
小売
小売チャネルには常設の店舗だけでなく、ショッピングモールの短期レンタルスペースやイベント会場のブース、ファーマーズマーケットの出店などのポップアップストアも含まれます。これらのチャネルは、お客様と直接関係を築き、リアルタイムのフィードバックを得ることができる機会を提供します。小売は商売の原点であり、ビジネスを行う上で重要な役割を担っています。
卸売
卸売は、自社商品を他の企業に販売し、その企業が商品を小売することです。卸売を唯一の販売チャネルとする企業もあれば、オムニチャネル販売戦略の1つの手段として利用する企業もあります。卸売は一度に大量の在庫を移動させるのに最適な方法です。
マルチチャネル戦略がもたらす力
販売チャネルが1つだけでは、さまざまな媒体を介してお客様と交流するチャンスを放棄していることになります。また、お客様が他の場所で買い物をする可能性を除外してしまっています。
カリフォルニア州ロングビーチを拠点にポスター、Tシャツ、ステッカーを販売しているThe Poster Listのオーナー兼創業者アダムは、卸売、展示会での対面販売、インターネット販売の3つをビジネスの主要なチャネルとして使っています。
The Poster Listは卸売、展示会での小売販売、自身のネットショップの3つの販売チャネルに重点を置いています。The Poster List
2006年にビジネスを始めて以来、アダムはひとつのチャネルが好調でも別のチャネルが不調に陥ることに気付きました。潮の満ち引きにも似たこうした変動は、COVID-19の大流行など、外部要因に影響されるという点で予測不可能なものでした。
「当初は展示会からくる売上が大半を占めていましたが、2010年から2015年にかけては卸売が多くなりました」とアダムは言います。「2016年、2017年に取引先の小売店でアパレル販売が停滞し始めたので、また展示会での対面販売を始めました。複数の販売チャネルを構築することで、The Poster Listはマーケットで起きている変化に素早く適応することができました。自分のブランドに適したチャネルでお客様と交流することで、よりレジリエントなビジネスを構築することができるのです。」
バンダナショップAbracadanaの創業者は、Etsy上の店舗と独自のネットショップの両方を販売チャネルとして利用しています。Abracadana
複数の販売チャネルを使用することは、多くの起業家が採用している一般的な戦略です。スクリーンプリントのバンダナを販売するMaryink/Abracadanaの共同設立者兼オーナーのメアリーもそのひとりです。
「販売する場所がいくつかあるのはいいことです」と彼女は言います。「Shopifyのアップデートに取り組んでいるとEtsyに注意が向かなくなるように、どちらかに集中すると、もう片方をないがしろにしている様に感じることは正直あります。でも、それでいいんだと思います。循環させればいいんです。いくつかのチャンネルを試して、自分にとって効果的なものを見極めてください。1つのカゴにすべての卵を入れることはできませんから。」
サードパーティーの販売チャネルでビジネスを加速させる前にネットショップを始めることで、ブランドを確立し、商品開発の足場を固め、あなたのビジネスの司令塔となる拠点を設置することができるのです
最終的には、すべての販売チャネルが連携し、互いに情報を提供し、サポートし合う必要があります。たとえばビジネスの大部分をネットショップで行い、Instagram Storiesで余剰在庫を処分するためのフラッシュセールを実施するのがその一例です。あるいは、従来型のマーケットプレイスで多くの売上を上げながら、ネットショップと連携して注文の追跡と処理を一元管理するケースもあるでしょう。だからこそ、ネットショップをビジネスの「司令塔」として設定することが不可欠なのです。
ネットショップをあなたのビジネスの司令塔として利用する
販売チャネルごとに個別にビジネスを構築していては、すぐに限界がきてしまうでしょう。どの販売チャネルとも簡単に連携できる、ユニバーサルなインターフェイスをShopifyのネットショップでは提供しています。
サードパーティの販売チャネルでビジネスを加速させる前にネットショップを始めることで、ブランドを確立し、商品開発の足場を固め、あなたのビジネス司令塔となる拠点を設置することができるのです。
従来型のマーケットプレイスやソーシャルメディアなど、他の販売チャネルをすでに利用している場合でも、独自のネットショップを立ち上げることにはメリットがあります。
1. 使い勝手の良さ
Shopifyでネットショップを立ち上げて管理することは、どれかひとつの販売チャネルだけに専念するのと比較してもそこまで複雑ではありません。Shopifyはコーディングのスキルを必要としないので、素早くサイトを立ち上げてカスタマイズすることができるうえ、多くの異なる販売チャネルとの統合が可能です。また、注文やデータを一元的に管理することができるので、あなたはビジネス全体を整理することができます。
Shopifyでは、新たな販売チャネルへのエントリーポイントを簡単に設定することができます。あなたのストアのダッシュボードに移動して「販売チャネル」の隣にある [+] ボタンを押し、追加したい販売チャネルを一覧から選択するだけです。ご希望のチャネルがリストに表示されない場合は、 アプリストアにアクセスしてその他のオプションをご確認ください。
[+] ボタンを押すと下記のような画面が表示され、[販売チャネルの追加] を確定することができます。これだけであなたのビジネスを次のステージへ導くことができます。
ヒント: ShopifyはWalmart Marketplace、eBay、Googleのような従来型のマーケットプレイスとの連携をサポートしています。この統合は、商品・在庫・注文データの同期や新規顧客の発掘などを行う際に役立ちます。
まだ商品を開発している段階であれば、まずはネットショップでビジネスを構築し、事業を拡大する準備ができた時点で別の販売チャネルと連携することをおすすめします。
従来型のマーケットプレイスは正確な商品情報の提示を要求されるので、商品の開発や改良段階であればその分だけ参入障壁が高くなります。なぜなら、販売を承認されるためにはSKUやISBN番号のような製品識別子を含む、詳細な商品情報を提供する必要があるからです。
2. サイロ化されたエコシステム内で構築
どの商品を購入するか、どのプラットフォームから購入するかについて、お客様はトレンドを追いかけます。サードパーティプラットフォームはポリシーやアルゴリズムの変更、ユーザーの移り変わりなどの影響を受けやすくなっています。このような変化はあなたにはコントロールできないので、売上を上げるためにひとつのプラットフォームに過度に依存しないことが一番です。
たとえばInstagram Storiesだけで販売するビジネスを立ち上げたとします。ユーザー心理が変化し、お客様がTikTokに移った場合、サイロ化したエコシステムの中でビジネスを構築してしまった場合、根本的なビジネスリスクに直面することになるのです。
これは一例に過ぎません。お客様の行動は徐々に変化することもあれば、季節によって波があったり、もしくは一夜にして切り替わることもあります。また、大きなイベントの発生よって影響を与えることもあります。
The Poster Listは、サンノゼで展示会を主催した際にこのような変化を肌で経験しました。
「広告はゼロだったのに、金曜日から週末、月曜日にかけての注文は異常なほどでした」とショップオーナーのアダムは言います。「しかも、購入者の多くがサンノゼ近郊の人たちだったんです」。
これらのお客様は、イベント会場にいる間に購入する決心がつかなかったり、オンラインでもっと商品を見たかったり、あるいは在庫のないサイズや色を必要としていたのかもしれません。The Poster Listのネットショップは、お客様が購入する準備の整ったタイミングで商品を販売することができたのです。もしThe Poster Listがオンラインの拠点を持っていなければ、これらの売上をすべて取りこぼしていたことでしょう。
Shopifyを使用すると、販売チャネルを介してビジネスへのさまざまなエントリーポイントを設定することができますが、すべての道は司令塔であるShopifyに通じています。つまり、あなたがリーチしたいお客様がどのようなプラットフォーム、チャネル、マーケットプレイスを利用していても、そのお客様に対して商品を販売することができるのです。
The Poster Listは、展示会期間中の対面販売とその後のオンライン販売で、売上を最大限に上げることに成功しています。The Poster List
3. 売り手の制限
従来型のマーケットプレイスで商品を販売する場合、ブランディングや商品のアップロード方法だけでなく、顧客データやお客様とのコミュニケーションもそのプラットフォームがコントロールします。お客様はあなたのブランドよりも商品やマーケットプレイスを連想するため、あなたと似た、あるいは同じ商品を販売している他のショップと差別化することが難しい場合があります。
これらのマーケットプレイスは、買い手と売り手の両方を念頭に置いて構築されています。売り手であるあなたは、買い手が自然と訪れたくなるような目的地を手に入れることができますが、同時に多くの権限を放棄することになります。マーケットプレイスは、平均的な売り手に基づいて、または(売り手を犠牲にして)買い手のショッピング経験を向上させるために決定を下すかもしれません。顧客ベースへのアクセスと引き換えに、あなたは彼らの決定をすべて受け入れざるを得ないのです。
また、マーケットプレイスによって購買者層も異なります。Etsy、Walmart、Amazonがどのような買い手を惹きつけてきたかを理解すると、すべての商品がEtsyでの販売に適しているわけではないことに気付くでしょう。
総括すると、従来型のマーケットプレイスとのショップオーナーは、トレードオフの関係にあると言えます。顧客基盤を獲得できるかもしれませんが、参入する前に独自のオンラインプレゼンスを構築しなければ、ブランドとしてのアイデンティティを失う危険性があります。
Maryinkの創業者はブランドを確立するために、Etsy上のショップとは別にAbracadanaというネットショップを作りました。Abracadana
4. ブランドストーリーの構築
ソーシャルメディアや小売店で魅力的なブランドを構築することはできますが、従来型のマーケットプレイスであなたのブランドを効果的にアピールするのは至難の業です。
Maryinkの創業者であるメアリーは、新しいブランドを確立して差別化するために、Shopifyで別店舗を立ち上げました。「関連性は保ちつつも、Maryinkから脱却してバンダナに特化した新しいブランドを開発したかったのです 」とメアリーは語っています。「バンダナは魔法(※)のようなものだと思うので、ブランド名はAbracadanaとしました。バンダナはとてもシンプルですが、本当にいろいろなことができるんです。Shopifyでサイトを立ち上げたのは、私たちにとって大切なデザインの自由度があったからです。」
(※)ブランド名「Abracadana」は、魔法の呪文「Abracadabra(アブラカダブラ)」と「Bandana(バンダナ)」を組み合わせたもの
独自のネットショップは、あなたのブランドを完全に表現するための白紙のキャンバスです。マーケットプレイスでは、提供された条件の範囲内にコンテンツを収まるようにしなければなりません。そのため、ブランドの表現方法は限られており、印象に残すことも非常に困難です。
新時代のマーケットプレイスでお客様と出会う
新時代のマーケットプレイスは、コマース機能を備えたコンテンツ重視のサイトです。これらのサイトはコンテンツによってユーザーの注目を集めますが、Shopifyと連携してシームレスなシッピング体験を提供することで、その注目をビジネスにつなげることができます。気に入った商品が掲載されたコンテンツを見つけたユーザーは、商品を探したり、コンテンツ作成者に連絡を取ったりしなくても、プラットフォーム内で簡単に商品を購入することができます。このようなチャネルでは、ユーザーがエンターテイメントを求めて訪れる場所が、購入のための場所にもなるのです。
2021年のブラックフライデー・サイバーマンデー(BFCM)のデータによると、ソーシャルメディアとの連携により発生した売上は、2020年と比較して約3倍に増加しました。このデータから、お客様はソーシャルメディアのプラットフォーム内で購入することを好んでいることがわかります。これは、チェックアウトの体験が改善され、お客様がこれらのプラットフォームでの購入に慣れてきていることを意味すると思われます。
Instagramの販売チャネルと統合することで、売上に直結する投稿を作成することができます。ここではThe Poster Listが販売しているステッカーの1つを共有しています。Instagram
たとえばInstagramでは、投稿やストーリーからすぐに買い物をすることができます。ユーザーは気に入ったアイテムがあれば、その横にあるショッピングバッグのマークをタップすることができます。それにより、アイテムの他の画像や価格を確認できる別のページに移動し、リンクをタップするとShopifyのストアが表示されてチェックアウトすることができるのです。つまり、Instagramの「今日の服」の投稿や、リビングの模様替え紹介に使われた花瓶が簡単にカートに入れられるようになるわけです。
お客様は、これらのマーケットプレイスで商品を発見したとき、今までとは異なる方法で商品を体験することができます。ネットショップでよくある真っ白な背景で商品を見るのではなく、その商品が実際に日常生活に溶け込んだ様子を見ることができます。このようなリッチなショッピング体験では、欲しいと思った商品を手に入れるためにURLを覚えたりする必要がないため、あなたとあなたのお客様の双方にメリットがあります。
音楽ストリーミングサービスのSpotifyも、ECプラットフォームに変貌しつつある最新のマーケットプレイスです。現在、リスナーはミュージシャンのプロフィールの下までスクロールしてオファーを見たり、アルバムを予約したり、レコードやグッズを購入したりすることができます。
Spotify
たとえばJamestown Revivalのツアースケジュールを確認したり、最新アルバムを予約して次のライブに備えたりすることができます。
Spotify
Shopifyをビジネスの司令塔とすることで、これらのプラットフォームとネットショップを簡単に連携させることができ、あなたとあなたのお客様の両方にとって、より良いショッピング体験を作り出すことができます。
✨リソース
あなたに適した販売チャネルの見極め方
どの販売チャネルがあなたのビジネスに適しているかは、多くの要因によって決まります。まずは以下の質問に答えてみてください。
- あなたのビジネスモデルはなんですか?
- どのようなビジネスの目標をお持ちですか?
- どのような決済システムを利用していますか?
- キャッシュフローと収益サイクルはどのようなものですか?
- ターゲットとなる顧客層と、その顧客層が好んで買い物をする場所はどこですか?
- あなたのブランドと商品は市場でどのように位置づけられていますか?
- どのような種類の商品を販売していますか?
- あなたのブランドはSNSでどのような存在ですか?フォロワーはいますか?
これらの質問に対する答えをまとめたら、あなたのビジネスに最適と思われるさまざまなチャネルをテストし始めます。
レジリエントなビジネスを構築する
ネットショップをビジネスの司令塔と位置づけることで、あなたの事業を成功させるための準備が整います。独自のブランドを確立し、お客様と購買データの所有権を維持することができるからです。
その他の販売チャネルは、お客様がすでに時間を費やしている場所であなたのブランドとの出会いを演出する存在です。これらのプラットフォームでお客様にシームレスなショッピング体験を提供することで、Shopifyはあなたのビジネスをサポートいたします。また、すべてがネットショップと統合されているので、注文データへのアクセス、お客様とのつながりやブランドアイデンティティも維持されます。
お客様のニーズ、マーケットプレイスのポリシーやソーシャルメディアのトレンド、そしてコマース市場は常に変化しています。あなたの商売のすべてを一元管理できるネットショップを構築することで、長期的によりレジリエントなビジネスが可能になります。
原文:Alexa Collins イラスト:Mitch Blunt 翻訳:坂本真紀
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販売チャネルに関するFAQ
販売チャネルとは?
販売チャネルの例としては、どのようなものがありますか?
一般的な販売チャネルは何ですか?
- ネットショップ
- 従来型のオンラインマーケットプレイス
- ソーシャルメディア
- 小売(常設・ポップアップの両方)
- 卸売