Shopifyには、実店舗やポップアップストアで利用できるShopify POSの機能が標準で備わっています。一般的なPOS機能に加え、オンラインショップと店舗のお客様情報や在庫が一元管理でき、マーチャントのシームレスなビジネスをシンプルに実現します。
今回のShopify事例は、Shopify POSを導入しているハンカチーフ専門ブランドCLASSICS the Small Luxury(クラシクス·ザ·スモールラグジュアリ、以下CSL)をご紹介します。CSLを運営するブルーミング中西株式会社の黒田さんと、同社を支援するShopify Expertsの株式会社アパレルウェブ・東さんに、Shopify POSの具体的な導入プロセスと活用事例をうかがいました。
コマースの全体最適化を目指し、Shopifyを採用
CSLは、ハンカチーフやテーブルクロス、ホテルリネンなどの布製品を扱うブルーミング中西のオリジナルブランドです。2003年に六本木ヒルズ本店をオープンし、現在は都内と九州で5店舗を営業しています。2011年には、オンラインショップもスタートしました。
CSLで扱うハンカチーフは、品質とデザイン性の高さが特徴です。店舗には、季節ごとに登場するテーマ性のあるデザインやアーティストとのコラボなど、数百種類のハンカチーフが並びます。ギフトニーズはもちろんのこと、セミオーダー式の刺繍ができることから「自分用に特別なハンカチーフが欲しい」というリピーターのお客様が多いそうです。お客様の希望や用途を丁寧にうかがいながら、時間をかけてぴったりの1枚を選んでいく接客スタイルです。
刺繍はオンラインショップからの購入時もオーダーが可能
一方で、お客様情報は店舗とオンラインショップでそれぞれ管理され、明確なお客様層を把握できていない課題がありました。
そこでCSLでは、注力したいと考えていた越境ECへの参入や在庫管理の効率化、POSシステムのランニングコストの軽減もかねて、ECカートのリプレイスを検討します。そして、お客様の満足度とロイヤリティの向上を踏まえたコマースの全体最適化を目指し、ShopifyとShopify POSの導入を決めました。
現在CSLでは、次のような体制でShopify POSを実用しています。
契約プラン:Shopify プレミアムプラン |
お客様情報の一元管理は、Shopifyの会員登録機能を活用します。
会員登録は、オンラインショップやブランド公式アプリから可能です。
会員のお客様には、店舗で商品を購入するときに、CSLのモバイルサイトかアプリで、会員画面のQRコードを提示いただきます。Shopify POS側でQRコードを読み取ると、POS(タブレット)上で過去の購入履歴や利用可能なクーポン情報が確認できます。
ウェブサイトや店頭で会員登録を訴求。公式アプリもリリースした。
トライアル期間を設け、現場の実務を確認しながらShopify POSを導入
ここからは、Shopify POSの導入プロセスを詳しく見ていきましょう。
Shopify POSに限らず、新しいシステムの導入は、業務を覚え直したり、使い勝手が変わったりと、現場に大きな負担がかかりがちです。CSLでは、一気にShopify POSへリプレイスするのではなく、日本橋人形町店で半年間のトライアル導入を行いました。
トライアル期間では、これまで使っていたPOSシステムとShopify POSを平行して稼働させ、出てきた課題をShopifyアプリや業務フローの仕組み化などで対応していきました。
黒田さん 「トライアル期間は、まずスタッフにShopify POSの基本の使い方を覚えてもらい、何か困るケースがあった場合は相談してほしい、という方法で導入を進めました。あわせて、Shopifyからどのようにデータを抽出すると、基幹システムとの連動ができるのか?などの細かい点も確認しました。」 |
会員登録済みであれば、氏名やメールアドレスからもお客様検索が可能
しかし、現場からは戸惑いの声もありました。とくに、領収書の発行やクレジットカード決済をPOSではなくShopifyアプリを使うShopify独自のやり方に、不安があったそうです。
このような状況を受け、CSLでは、現場スタッフの皆さんにShopify POS導入後のさまざまなメリットを伝えました。「Shopify POSに合わせて業務フローを変えることが効率的になる」と説明し、現場と丁寧にコミュニケーションを重ねたのです。
トライアルをはじめて1ヶ月が経つころになると、現場もShopify POSに慣れていきました。そしてトライアル導入から半年後には、すべての店舗でShopify POSのリプレイスが完了しました。
CSLの事例のように、実際の業務フローとShopify POSの機能をすり合わせながら導入していく方法は、現場の負荷が軽減されるだけでなく、Shopify POS側の設定と業務の最適化にも効果的です。
サマリーレシートはカスタムレポート機能、免税対応はShopifyアプリで対応
Shopify POSは、シンプルなPOS機能をベースに、Shopifyアプリでカスタマイズしながら、マーチャントのビジネスに必要な機能を拡充していくPOSシステムです。
CSLでも、店舗からのフィードバックを受けながらShopify POSを構築していきましたが、中にはShopify POSの基本機能のみでは難しい業務も出てきます。そのようなときは、アパレルウェブの東さんと一緒に「どのようにすると実現できるか?」を考えました。
とくに検討を重ねたのは、サマリーレシートの発行と免税対応です。
サマリーレシートとは、テナントが入っている駅ビルやショッピングセンターへ売上情報などを報告するレシートです。駅ビルや商業施設内にも店舗を持つCSLでは、Shopifyのカスタムレポート機能を使って、サマリーレシートを発行しています。そして免税対応は、東さんが推薦した海外のサードベンダー製のShopifyアプリを採用しました。
東さんいわく、サマリーレシートと免税対応はマーチャントがShopify POSを導入するときに、悩みやすい点なのだそうです。
東さん |
さらにShopify POSの導入では、「はじめからやりたいことの100%を目指さないことが大切」と話します。
東さん |
Shopify POSの導入で、丁寧な接客とお客様の利便性が向上
では、Shopify POSの導入後、CSLにはどのような変化が出ているのでしょうか。
まずは、お客様情報のデジタル化と一元管理が実現し、店舗接客時にはお客様情報をもとにした接客ができるようになりました。たとえば購入履歴をもとに、「いつもありがとうございます」や「以前購入されたハンカチはいかがでしたか?」のような会話のきっかけが生まれています。
Shopify POSの画面(テストアカウントを撮影しています)
また、どの店舗からでもお客様情報が確認できるため、「違う店舗でオーダーした刺繍と同じ内容にしたい」という依頼もスムーズに受けられます。お客様情報のメモ欄には「要領収証」などの情報も記入でき、お客様を理解した接客にもつながっています。
Shopify POSの導入をきっかけに、商品登録の方法も見直しました。たとえばイニシャル刺繍は、金額別に商品登録をしていたため、紙のオーダーシートがなければ「どの刺繍をオーダーしたか?」がわかりませんでした。今は、刺繍の種類やフォント別に商品を登録し、POSから購入履歴と刺繍のオーダー内容がすぐに見つけられるようになっています。
さらに、在庫を一元管理したことで、Shopify POSから他店舗やオンラインショップの在庫を確認できるようになりました。店頭にない商品でも、他店舗に在庫があれば取り寄せとして対応しています。オンラインショップで購入した商品の受け取り(BOPIS)も、一部の店舗で行っています。
オンラインショップ含め、各店舗の在庫が一覧で確認できる
そして、メールマガジンやポイントプログラムなどもスタートしました。お客様への適切な情報発信や利用促進のコミュニケーションツールとしての活用に、期待が高まります。
マーチャントとShopify Expertパートナーの協業がビジネス成長を促進
終わりに、黒田さんと東さんに今後の展望をうかがいました。
黒田さん |
東さん |
CSLのShopifyとShopify POSの導入にあたっては、東さんとアパレルウェブの親身なサポートがありました。とくに、さまざまな用途と種類のあるShopifyアプリの選定については、「東さんの協力なしでは選べなかった」と、黒田さんは当時を振り返ります。
Shopify POSは、基本機能と拡張性の高いアプリケーションを活用し、お客様のビジネスやビジネス環境の変化に柔軟に対応することを想定したPOSシステムです。導入にあたっては、業務フローの見直しや「やらないこと」を考える必要もあります。そして、ブランドが実現したいことを可能にするShopifyアプリ選びが重要です。このようなとき、マーチャントにとって相談できるShopify パートナーは、とても心強い存在です。
またShopify自体も、つねに商品開発や機能追加・改善に注力し、より使いやすいプラットフォームへと改良を重ねています。日本の開発ベンダーのShopifyアプリの開発支援も強化し、マーチャントが理想とするECビジネスの実現をサポートしていきます。
*Shopify ExpertsとShopify Plus Partnersとは、Shopifyが認定したEC制作・支援企業です。
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